スタンスを変えない

父の遠距離通勤が心配で何気なく母に様子を伺った日。すると思いがけない話を聞きだすことができ大爆笑。「お父さんね、8時半前には家を出るんだけど、5時起きでポケモンGOをやる習慣が抜けきれなくて、毎朝散歩に行っているの。」「え~!!それでは睡眠不足じゃない?」「電車の中で寝るからいいんだって。」昔から、自分のスタンスを変えない人だったけど、ここまでくると逆に拍手を送りたい。「この間なんてね、ハムエッグを用意したら急にいなくなって、すっかり冷めちゃったわよ。」あらあら。とりあえず、人の気持ちは受け取りましょうよ。

そんな父が、息子にすっかりやり方を教えた影響で、ポケモンのキャラが詳しくなってしまいました。学校の自由帳にポケモンパンを食べて集めたシールを交換するということが流行っているらしく、まだまだクラスに消極的だった息子も、全然知らない子と交換をしたと嬉しそうに話してくれて。「これはね、○○君と交換したの。でね、ポッチャマはママが好きだから残しておいたよ!」いやいや、せっかくのお友達との機会なんだから、そんなところでお母さんに気を使わなくていいよ~と一緒に笑ってしまったのですが、こんな時になんでもないことで気持ちが返ってくるんだなと思いました。「ありがとうね、ポッチャマ、丸いしペンギンみたいでかわいい。」そうだね、でも進化するんだよ~とまた父から教わった雑学の開始。「シール交換していること、先生は知ってるの?」休み時間に見ていた気がするよと安心させてくれたのですが、怒られる時は皆一緒。それはそれで悪くないのかなとも思いました。

小学校の図書室で勤務をしていた頃、国語の時間にとってもよく利用をしてくれた2年生のクラス。時に紙芝居を読み、大型本を読み聞かせ、それぞれの子達が読む本をそっと覗いていました。「先生、この図鑑に面白いことが書いてあった。一緒に見よう。」「宇宙って広いね。」「あっ、この絵本、幼稚園の時に読んだよ。」そんな子供達の心のホールを垣間見せてくれる時間がとても好きでした。そんなある時、学級委員もやり、皆が慕っている一人の男の子の様子が気になりました。その子が読んでいる本を、僕も読みたいという子がいれば途中でも渡す、その繰り返し。「いいよ。」と言葉では言うものの表情は曇っていました。そして、帰りの会の後、ランドセルを背負ったままふらっとやってきてくれて。「先生、図書室で宿題やってもいい?」ルール上、やってはいけないことは知っていました。それでも、どこかでガス抜きをしてほしかった気持ちの方が勝ち、「いいよ。本当はいけないんだけど今日は特別。内緒ね。」そう言うと、にっこりしてくれて。これで、共犯確定。そして、出されたプリントをせわしなくやっていると、一人の女の先生が図書室に現れ、「宿題は家でやるものでしょ!」とその子に怒り、すみませんと私も一緒に謝り、その先生が行った後、そっと目を合わせて笑いました。うん、いい表情。今までで一番いい顔をしていたよ。そんなに優等生でいなくてもいい、たまにはほんの少しだけ羽目を外そうよ。そんなメッセージが届いたのか、図書室を出る時、「先生ありがとう。」と伝えてくれました。一緒に怒られてくれてありがとう、間違いなくそんな気持ちが含まれていました。

後日、担任の先生にやんわり状況を報告。すると微笑みながら伝えてくれました。「いつも本当にいい子なんです。沢山我慢していたのは私も感じていました。担任の私よりもきっと図書の先生の方が甘えやすかったんだと思います。頑張らなくていいんだ、きっとね、先生がそのことを彼に教えてくれたんだと思います。ありがとう。」そして、もう一度改めて子供達からもらったファイリングされたお手紙を見てみました。なんだか、児童達の事ばかりに気を取られ、きちんと読めていなかったその先生からのメッセージが最後に添えられていました。『図書室が居場所の1つである子ども達にとって、先生のお優しい笑顔は何よりの支えであり、励ましだったと思います。「読書」の時間を子ども達はとっても楽しみにしていました。本当にありがとうございました。』涙が溢れ出す。よく見てみると、一枚目には『スイミー』の絵を黒板に貼り、バックに写ってくれた皆の笑顔が。記録物っていいな、何年経っても色褪せない。司書だった自分が根っこにある、そのことを改めて思い出させてくれた大切な時間でした。

「ママ、最近野球の練習なかったから、ポジション忘れちゃった!電気のような名前あったでしょ。あれなんだっけ?」ん?と思考を巡らせ思い当った一つの名前。「ライトでしょ!!」電気のようなっていうか電気だし。でもスペルが違うんだよ、話すと長くなる。
これもまた大切な、息子との根っこの部分。