持ちつ持たれつ

母と少し前に会った時、面白い話をしてくれました。「Rがうちに遊びに来た時にね、お手紙を書いてくれたの。『おばあちゃん、いつもあそんでくれて、おもちゃをかってくれてありがとう。これからもよろしくおねがいします。』って。嬉しかったんだけど、なんだかまた請求されちゃったのかしら?って笑えてきて。あなた、最後のひと言教えたの?」「そんな大人っぽいこと教えていないよ。“今後ともよろしくお願いします”だったらもっと面白かったね。」と二人で大笑い。甘え上手というか、ちゃっかりしているというか、なかなか押さえるポイントはしっかり押さえているなと感心してしまいました。そんなひと言で母が喜んでくれるのなら、息子よ、書き続けた方がいい。何だったら、おばあちゃんが嬉しいポイントを教えるから。

小学校の図書室で勤務をしていた時、演劇で使いたいテーマを調べてほしいと、5年生の男の先生が相談に来てくれたことがありました。とても律儀な20代後半の男の先生は、児童達の入り口から入り、絨毯だったので上履きをご丁寧に並べ、会釈をしながら毎回やってきてくれて。「先生、私が出入りしているこちらからのドアからで大丈夫ですよ。」と伝えても、「いや、いいんです。こちらから失礼します。」と言ってくださる爽やかな方でした。図書室の資料では限界があったので、インターネットでも調べ、そこまで大したリサーチはできなかったものの、とても喜んでくださり、夏休み前にはお勧めの本を聞いてくれました。Wordでまとめたプリントを先生のデスクに置いておくと、データが欲しいと言われ、USBメモリに落としお渡し。その内容を学級便りに載せてくださり、感激してしまいました。そして、ある日、「うちのクラスの子達をグループに分けて、図書室のお手伝いに行かせたいんですけどいいですか?」と。喜んでお願いし、休み時間に来てくれた児童達にざっくりとした分類の説明と、詰め詰めに本棚に押し込んでしまうと、本が傷んでしまうということを伝え、実際に配架のお手伝いをしてもらいました。すると、カメラを持ってきた担任の先生。その光景が嬉しかったようで、何枚も撮るので、笑えてきてしまい、我が子のように可愛がっている先生のそんな姿に胸が熱くなりました。そして、私の出勤最終日。照れながらやってきてくれた先生が伝えてくれて。「色々な協力をして頂き、本当にありがとうございました。大したお礼はできないんですけど、最新版の学級便り、良かったら受け取ってもらいたくて。クラスのみんなが本当にお世話になりました。」深々と頭を下げる先生のそんな姿に、涙が溢れそうになりました。この先生の為に今の私が伝えられること。「そんなに力にはなれなかったですが、頼って頂き嬉しかったです。クラスのみんな、悪ふざけしながらも楽しそうにお手伝いをしてくれて、普段の様子が見られて、いい時間でした。仲のいいクラスなんだなって、嬉しくなりました。こちらこそありがとうございました。」そう言うと、何とも言えない笑顔を見せてくれた先生。まだまだ続く教員生活、頑張ってください、そんな想いが届いただろうか。人との別れは、ポンと相手の背中を押すこともあっていいような気がして。だから、最後は弾けた笑顔で会釈。

今年度は、始業式と翌日は登校したものの、4月5月が丸々休校、6月の2週間も分散登校、気が付くともう2年生の半分が終わっていました。行事も削られ、子供達も、先生達も、そして保護者も、それぞれの思いを抱え、日々を過ごしているのだと感じる時があって。それでも、改めて思うのは、マスクをしていても笑い合える仲間に囲まれている幸せ。息子の小さな心の中にはそんなポケットがちゃんと用意されていて、そこに沢山入れている数々の出来事に、去年とはまた違った熱い思いがこみ上げます。

幼稚園時代に出会った、カブトムシを飼っていた気さくな男の子ママ。二人の男の子のお母さんで、お兄ちゃんが幼稚園から帰った後、どうだった?と聞いたそう。「何にもしてねえよ!」と返ってきた言葉に、「そんな訳ないでしょ!」って怒ってしまってねと笑って話してくれました。男の子は段々話してくれなくなるから、覚悟した方がいいかもなんて慰め合っていた頃が懐かしい。そんな彼女が働く飲食店の人間関係で、悩んでいることをぽつりと打ち明けてくれました。いつもは明るいのに、人知れず抑え込んで頑張っている姿に胸が痛くなって。「同じような職種で、オープニングスタッフを募集しているところを知っているよ、後で内容を送るから。そんな思いをしてまで頑張らなくてもいいような気がするよ。」それは彼女が決めること、それでも道は一つじゃないことを知ってほしくて、何かできることはないかと思い精一杯伝えると、半泣きしてくれました。ずっと一人で抱えていたんだね。分かるよ、その気持ち。その後、情報を送ると既に募集は締め切られてしまっていたようなのですが、嬉しいメッセージが。『Sさんが応援してくれたから、仕事辞めちゃった!でもね、またいい仕事が見つかったの。きっかけが欲しかったんだと思う。だからありがとう。』あっけらかんと伝えてくれる彼女らしい内容に笑ってしまいました。そうでなくっちゃ。
「本当に助けられたよ。」どちらからともなく伝えた卒園式の園庭。もらったから返せる、どちらが先かなんて覚えていない。何でもない時間を、何でもないやりとりの中で助け合ってきた。人との繋がりってこんなことの繰り返し。だから、簡単には途切れないんだ。