試合の余韻はそのままに

ラグビーワールドカップ、日本対南アフリカ戦。その余韻と高揚感がずっと残り、何をどう書いたらいいのか沢山の気持ちがそこにはありました。実は、『スクール・ウォーズ』(1984年10月~1985年4月、TBS系)のドラマを観て育った子供時代。姉と一緒にテレビの前にかじりつき、毎回見逃さないように欠かさず観ていました。好きだったのは、高校生で選手役だった俳優の松村雄基さん。不良だった彼が、一人の教師に出会い、ラグビーというスポーツを通してひたむきに仲間を大切にし、花園を目指していくその姿は感動的でした。

そのラグビーワールドカップが日本開催ということに。元々が野球好きだったのでピンとくることが無かった中、息子が楽しそうに学校から帰って伝えてくれました。「ラグビーの外国の選手が、この街で合宿をするから、その記念に給食でその国の料理が出たの。」あ~、そうだった。そんなことをぼんやり思っていたら、きょとんとしながらさらに疑問文。「ママ、ワールドカップってなに?」「世界大会だよ。世界中の強い国の選手が集まって戦う、すごい大会なの。ラグビーボールは野球ボールみたいに丸くないから、落ちるとどこに飛ぶか分からないんだよ。」「ふ~ん、そうなんだ。」その時は何事もない日常の中での会話。そんな中で私のお尻に火が付いたのは、10月13日のスコットランド戦でした。日本の猛攻を見た時、自分の中で何か燃え滾るものがあって。それは多分プレーだけでなく、観客の皆さんと『one team』になっていたことが、肌で感じられたからだと思いました。ずっと攻め続けた日本は決勝トーナメントへ。
その南アフリカ戦の前に、記者会見の記事が目に飛び込んできました。南アフリカ出身のピーター・ラブスカフニ選手(クボタ)は、「南アフリカ国民のことは愛しています。でも日本のこと、ここにいるみなさんのことを愛している。新しい故郷。みなさんに誇りに思ってほしい。」と爽やかな表情で答えたそう。その文面を読み、試合が始まる前から胸が熱くなりました。日本の選手としてそこにいてくれること、そのような気持ちを向けてくれてありがとうと。そして、私もプレーを観て誇りに思います。

いよいよ南アフリカ戦の舞台へ。ベスト8に入るのは日本で史上初。それがどれだけ凄いことなのかは、国家斉唱の前に一人の選手が教えてくれました。それは、流大選手(サントリー)。曲が流れると、堪えきれなくなった数々の想いが涙と共に溢れだし、そこにいることが選手にとっても、日本にとってもどれだけのことなのか、その姿が教えてくれたような気がしました。試合が始まる前に、こんなに感極まることもそんなにあるものではありません。ただ、試合結果だけでなく、多くの報道を見て、日本チームとファンが一つになっていったその過程を見せてもらっていただけに、余計に溢れるものがありました。

結果は、敗退。それなのに、悲しいのではなく、胸がいっぱいになるのはなぜだろう。ありがとうと伝えたくなるのはどうしてだろう。結果よりも、スポーツマンシップというものを、日本選手を中心に、他の海外の選手にも、そしてファンの方にも見せてもらったからなのかもしれません。
途中に起きたとても大きな災害。試合が中止になったカナダの選手やナミビアの選手が復旧を手伝い、各試合前にはスタジアム全員で黙とう。試合が終われば、お互いを称え合うノーサイド。大きな体の選手達が、流れ出る汗をそのままに、ハグをし合うその姿にスポーツそのものの精神を教えてもらったような気がしました。
そんな日本代表選手の皆さんへ、桜は散ったのではなく、国民の心に舞い降りたのだと伝えたい。