入ってくる光景

たまに回ってくる旗振り当番。朝イチなので、いつもより少し息子と早く家を出て学校へ向かいました。毎朝別れる場所でバイバイし、自転車を走らせ校門前の信号機へ。旗を持って、先にいてくださった交通指導員さんに挨拶し、子供達を迎えました。すると、別の区の当番さんと組むことになっていたものの、なかなかいらっしゃらないので、朝何かあったのだろうとちょっと心配に。季節が変わり、いろんな病気が流行り、私もマスクをしていこうか迷いました。それでも、外だし、何より学校へ行く子供達をにっこり笑って見届けたくて、付けて行くのをやめることに。その判断が正しかったのか、いつもよりみんなが表情豊かに挨拶してくれたようで、ぐっときました。長かったね、ここまで来るの。また寒い冬がやってくる、でもこんな風に笑える今を大切にしようね、そんな気持ちでお見送り。息子も手を振って通過し、その後いつも一緒に帰っているT君が一瞬転びそうになり、横断歩道に駆け寄ろうとすると、「新しい靴、慣れないんだよお。」と私のことを知っているので、小さく呟きながらも笑って行ってくれました。それから数分後、サングラスをかけ、マスクをし、旗を持った若いお父さんが登場。ん?初めての方だよね?!と思いながらもご挨拶。明らかにこのシチュエーションに戸惑ってらっしゃることが分かり、やはり急遽行くことになったのだろうと思いながらも、頑張って旗振りをしてくれるので、なんだかその光景にほっこりしました。すると、サングラスにマスクのお父さんに、小学生のみんなはえっ?と若干驚くのが分かり、ちょっとツボにはまってしまって。それでも、無事にミッションは終わり、横断歩道の反対にいたので、会釈をしてその場を離れると、まだお父さんがぽつんとそこにいて、もう一度大きくお辞儀をしました。終了です!!とか一声かければよかったなと思いつつ、何か言葉にしたら吹き出しそうだったんだよな、表情が読み取れなかったけど、控えめないいお父さんだったなとあれこれ思いながら、停めてあった自転車を引っ張り、再度横断歩道へ。すると、反対側にいた交通指導員さんが何やら指して言っている様子。何かやらかしたか?と一瞬慌てると、その信号は押しボタン式だったことを思い出し、照れながらボタンをポチ。あなたずっとそこにいたでしょと言わんばかりの表情で見送られ、どんくさい人認定がその場でされました。ほっとしたんだよ、みんなの表情が明るかったことも、お父さんが無事に終えてくれたことも、事故が何も起きなかったことも。空を見上げると快晴、そして遠くの方に富士山が見えました。息子よ、みんなと過ごす学校の空気はどう?卒業アルバムには載らない一瞬を沢山しまっておいで。

そんな毎日の中で、宿題プリントを見てみると、質問を投げかけた担任の先生からの返事が書いてありました。運動会の100m走の選曲が、プリンセスプリンセスだったので、これは先生のチョイスではないかと思っていたらやっぱりビンゴでした。車の中でも聴いているのだそう。青春時代を思い出し、どこを切り取っても先生も“その時”を大事にしているのではないかと嬉しくなって。そして、また別の日、何も書かなかったプリントに息子宛てのメッセージがありました。同じクラスの男の子が、宿題プリントのコメント欄でR君のことをほめていたよと。その筆跡から先生の声も優しさも届き、こんな風に肯定感って育まれていくのかもしれないなと思いました。まだ20代前半の頃、地元で自転車に乗っていると、一時停止無視の車が突っ込んできて、車道に飛ばされました。その時、咄嗟に受け身を取り、左肩から落ちたのはなんとなく自覚があったものの、動かない方がいいとその場で倒れていると、通りがかった人が何人か携帯を持ち、救急車を呼んでくれて。運転手だった若い女性は動揺をされていたので、その通行人の方の対応が本当に有難く、そう言えばきちんとお礼が言えていなかったなと改めて思いました。届くか分からないけど、助けてくれてありがとう。そのご厚意、忘れません。それから、救急車に運ばれ、いろんな検査が待っていました。レントゲン写真を見た男の先生が、打撲は酷いものの、骨などに異常がないことに驚いていて。左利きなので、左腕で受け身を取った話をすると、「右利きだったら分からなかったな。」と伝えてくれて、この日の為の左利きだったのかもしれないなと思いました。そして、柔道を体育の授業で取り入れてくれた中学の体育の先生にも感謝しないとなと。それから、電話を入れた姉が職場から駆けつけてくれて、ベッドの近くで話していると、警察官の方が二人。ネネちゃんがびっくりして後ろに下がり、色々と事情を聞かれた後、警察官の一人が姉に向かってひと言。「まあ、あなたも気を付けないと。」「あの~、私の姉なんです。」「えっ?!そうか。てっきり運転手かと。」そう言って笑うので、そこにいる4人で笑ってしまいました。ああ私、こんな風に笑えて無事だったんだな。その後、警察官の二人が退席された後、またネネちゃんと二人になり、めちゃくちゃ心配してくれたことが分かり、泣きそうになりました。そして伝えてくれて。「本当に連絡があった時は妹にもしものことがあったらどうしようって気が気じゃなかったの。でも、病院に着いたら、Sは驚く程冷静で、うちの両親に腹が立った。命に関わるような恐怖を味わったんだよ、本当に打ちどころが悪かったらどうなっていたか分からないんだよ。そんな状況の時ってもっと泣いたりしていいんだよ。でもSはしない。こういう時に爆発させないでどうするのよって思う時にSちんはしない、それってお父さんやお母さんがそうさせたんだって思うとなんか悔しくて。」そう言って泣いてくれました。なんて、あたたかい涙なのだろうと。姉は、私の分まで泣いてくれているんだ、そう思いました。ネネちゃん、負の感情を出すのは下手なのかもしれないけど、あなたがそんな私も肯定してくれたから、今がある。あの時の事、嬉しかったよとっても。

その一件以来、一時的に自転車も車の運転も怖くなってしまったものの、あっさり克服。息子とのサイクリングから見える景色はいつも鮮やかな色がついていて。助けられた二度の命、交通事故と卵巣の手術、その重さを絶対に忘れない。ぜったいに!!