おもしろさを最優先

息子と過ごす夏休み、思っていたよりもお友達と遊びに行かないので、一緒に買い物へ出かけることにしました。途中、せっかくなのでローソンに寄りイートインコーナーでプチ休憩。からあげクンとスイカバーをゲットし、いい感じでゆっくりできたのでまた自転車置き場へ向かうことに。すると息子がぽつり。「これだけ暑いと自転車ってパンクしやすいんだって。」「そうだよね。自転車も参ってしまうよね~。」と笑いながら到着すると、私の後輪だけ本当にパンクしていて、息子と思わず笑ってしまって。「え~!!このタイミングでパンクってマンガみたいだよ。」と言われ、確かにそうだと思いながらも感心している場合ではない。それなりのピンチだ、さあどうする?!とぐるぐるしながらとりあえず乗ってみることに。やっぱりだめだと自転車を降り、引っ張りながら歩いていると急に一人暮らしの時のことが思い出されました。仕事から帰り、最寄り駅に停めてあった自転車がパンクしていたので、押しながら帰宅。次の日は週末だったので、検索した自転車屋さんまで歩いて向かいました。すると、昭和感の漂う個人店のおじさんが、近隣のおじさんと談笑していたので、恐る恐る話しかけてみるとあっさり状況を理解してくれて。「あの~、これから食材を買いに行きたいんですけど、直してもらっている間、代車をお借りすることってできますか?」とだめ元で聞いてみると、「いいよっ!ママチャリだけど!」と言って貸してくれたので本気で有難くて。その会話と、少し先に大きな自転車屋さんがあったことを思い出し、息子と向かうことにしました。ピンチの時に一人でいるか、子供といるかって焦り方が全然違うのだけど、神様ありがとう~。その後、無事に自転車屋さんへ着くと、案の定修理で混んでいるとのこと。それは想定内で、代車を聞いてみると借りられることが分かり、ほっ。安心して買い物へ行き、翌日元気になった自転車を取りに行ってきました。さらに5日後、息子とショッピングモールへ行こうとすると、敷地内に停めていた自転車の前輪がパンク。「後輪のタイヤを丸ごと変えてもらって安心していたら、前輪も寿命だった~。」と惨事を一緒に笑ってくれて。仕方がないので、近くの自転車屋さんへ行き歩いて帰ってきました。いつもそばにいてくれた愛車、もう一度元気になって戻ってきて。沢山の場所へこれからも行くんだ。

そんな慌ただしい時間の中で、なぜか随分前の母との会話が再生されました。それはまだ私が実家にいて、塾の講師をしていた時のこと。仕事に行く前、母が今日の夕飯はハンバーグだと教えてくれていたので、なんとなく楽しみに深夜に帰宅。すると、ダイニングテーブルにも冷蔵庫にもなくて、あれ?と思いました。電子レンジに入れっぱなしでおかずを一品忘れていたという珍プレーも、母のあるあるだったので、とりあえずレンジも開けてみることに。・・・ない。と困惑していると、たまたま母が通ったので聞いてみました。「あなたの分、ちゃんと作ってテーブルに置いておいたわよ。」と。謎過ぎやしないか?!消えたハンバーグ??と訳の分からないことを思いながら、もう一度冷蔵庫を開けてみると、ひとつの場所に目が留まって。まさかと思いながら、姉が自分で用意したお弁当箱を開けてみると、そこにはハンバーグが!それを見て、思いっきり笑ってしまいました。自分の分は食べて、妹の夕飯をお弁当に入れる姉ってどうよ?と思いながらも、やっぱり彼女らしくて笑ってしまって。それを見た母が、呆れながら私に伝えてきました。「こういう時腹が立つはずなのに、どうしてSは怒らないの?」と。「だって、おもしろいでしょ。妹の栄養とかすっ飛ばして自分のものにしているんだもん。私はパンとか食べるからいいよ。お姉ちゃんには何も言わないでいて。」そう伝えると、母の中でいろんな気持ちが動いたよう。「Sはやられてもやり返さない。すごいなって思う時があるよ。」すごいんじゃなくて、きっと理解が先に進むから。それが自分の苦しさに繋がる時もあるのだけど、分かり始めると怒りが引っ込んでいくんだろうな。この場合も、ネネちゃんの真意が読み取れて。大阪からカナダに留学し、本当はまた実家になんて戻ってきたくはなかった。カナダ人の恋人とも別れ、キャリアを重ねることで姉は自分を保とうとしていました。そんな時、祖父や母にどれだけ強い口調で言われても、ぐっと堪える妹を見ていることさえ、姉には辛いことだったのだろうと。本当だったら、妹と二人でこの家を出たいのに。留学で貯金を使ってしまった、妹は司書の資格を取る為にもう一度大学へ行こうとしている、一体自分がいない間にどれだけのことがあったんだ。ネネちゃんの中でいろんな気持ちがいつも渦巻き、どこかで反発しない私にも腹が立っていて、だからこそのお弁当事件だったのではないかと、もう知らん!という気持ちの表れのようがして、そんなこと全てが彼女らしいと微笑ましくなりました。その姉が、たった一度だけやってしまった会社での大きなミス。本気で凹んでいるところを慰め、義兄にこっそり連絡。お姉ちゃん、いつもツンツンしているけど、そうさせてしまったのはうちの家族が原因でもあって、本当は弱い所もあって、支えだった会社でミスしちゃって、こういう時こそそばにいてあげてほしいの。Mちゃん、今チャンスだよ!とかなんとかかんとか煽ると、こちらの気持ちを優しく受け取ってくれた彼は、ネネちゃんにプロポーズしてくれました。姉が嬉しそうに話してくれて、一人で大泣きした夜。

随分と時が経ち、子供を授かり丸くなったネネちゃんが遊びに来てくれた日、もう時効かなと思い、プロポーズ大作戦の裏側を話すと、姉の頬にはあたたかい涙が溢れ出しました。「Mちゃん(義兄)、Sちんに頭が上がらないな。やってくれたな。Sちんはやっぱり我が家の要なんだよ。みんながSのそういう気持ちに助けられてきた。」いやあ、そのプロポーズ大作戦、お弁当事件から実は繋がっていたんだよ~と後から付け加えたら、さらに笑ってくれるだろうか。丸いハンバーグは半分に切られ、二つが仲良く隣でお弁当箱に収まっていた、今思えば二人の象徴みたいだったと。いつまでも結婚おめでとう。