晴れた空の中

なぜだか急に閃いたネット検索。この情報化社会の中で、名古屋の日本料理店でお世話になった先輩が経営する小料理屋の情報が出てくるのではないかと思い、スマホから調べてみました。あった!!そして、営業中となっていた表記に溢れそうでした。乗り切ってくれていたのね。どうやってコンタクトを取ろうかゆっくり考えようと思います。ふらっと立ち寄れたらいいのに。私のボトル、まだキープされているのかな。
ショートメールを送っても、返信の仕方が分からず電話をかけてくれていた先輩。かなりITオンチなことは分かっていたので、調べたところで出てこないだろうと思い込んでいました。検索で上がってきてくれたのは、利用してくださったお客様の投稿など。「初めて入ったのに、アウェイな感じがしなかった」という表現に嬉しくなりました。そうなんだよ、彼女は孤独にさせない。さりげなく話しかけ、さりげなくその場を去り、そしてお客様との何とも言えない空気を作っていく人。常連の方のお誕生日には、必ずメッセージカードを贈る話を聞いて、さらに感激しました。メカに弱い先輩は、全部手書きであることを知っていたから。私の誕生日に時間があったらお店に来てと言われ、金曜日の夜に行くと、お客さんと一緒に祝ってくれました。恋人もいない、実家では癒されることもない、まだ20代前半なのに一人か。そんな気持ちを丸ごと吹き飛ばしてくれた先輩からの気持ちに、本気で泣きたくなったことがネットのお店の写真を見て思い出されました。このカウンターで、どれだけの話を聞いてもらっただろう。「Sちゃん、もうそろそろ自分の幸せ考えなきゃ。お母さんは、なんとかしていくから。」誰もいなくなった店内で、看板のライトを落とし、たった二人だけで後片付けをした日。お店が終わったのに、ママの居心地の良さは何も変わらなくて。ありがとうを直接言いに行きたい。日帰り名古屋もありかもしれない。

そして翌日、シェアオフィスに来ると、話せる側のスペースで、若い女性のスタッフさんと不動産関係のお仕事をされている試験勉強中の彼Hさんが談笑していて、少し混ぜてもらいました。なぜか本の話題になり、壁にある本棚を見ると落ち着くと二人に伝えると、Hさんがひと言。「僕、司書さんだったと以前に聞いてなんか分かる~ってしっくりきて。」「そうだったんですね!私、○○さんが図書館カウンターにいてくれたらテンション上がっちゃいます!」とスタッフさんも言ってくれて、大盛り上がり。5割増しのお世辞も、宣言解除後に聞くと晴れやかな笑い声に包まれ、素直に嬉しくて。3か月、こんな風に誰かと笑い合っていなかった気がして、新しいスタイルで距離はあっても、温度がそのままだったことにほっとしました。前に医学部の学生さんとお気に入りの場所を競い合っていたと話してくれたHさん。本当に色々な目標を持ち、その場所を通過していく人がいるのだと、私もそんな一人でありたいと強く思いました。机取りゲーム、参加します!!

そんな沸き上がる高揚感に包まれてパソコンを立ち上げると、オンライン教材の中で、担任の先生に相談をさせてもらった内容の返信が来ていました。その中で何気なく聞いた、なぜ小学校の先生になったのかという質問。『きっかけは、父です。父も小学校の教員だったのですが、毎日楽しそうに仕事の話をするので、憧れたのです。』その文面を読み、なんだか羨ましくなりました。いいお父さんだったんだろうなとも思ったし、自分の仕事を子供が感じそれを目指してくれるっていいなと。
そして、ふと頭を過ったのが小学校で働いていた時に出会ったスクールカウンセラーの先生。たまたま帰り道に一緒になり、守秘義務がある中で、信頼して伝えてくれました。「今日、一人の子がドアをノックしてくれたの。相談室までくるのに勇気がいったと思うのに、よく来てくれたと思う。それでも、椅子に座ったまま、何一つ話さなくてね。せっかくそこまで来てくれたのに、聞きだすことができなくて、カウンセラーとして失格だと思った。情けない。」年齢がそこまで変わらない女性の先生。その苦悩が感じられ、どんな言葉をかけたらいいのか分からなくなりました。それでも、何か伝えなくては。「また来てくれると信じて待ちましょうよ。先生と同じ空間にいて、少しでも和んでくれていたらいいなと思います。自分の中に留めず、話そうと思った、だから相談室にまで来た。その勇気を褒めてあげたいなと、その子にとって大きな一歩だったんじゃないかなと思っています。」これが、正解の言葉だったのかは分からない、それでも、ゆっくりかみ砕いた先生は、ふうっと一つ息を吐き、そうだねとそっと顔を上げてくれました。

どこに答があるのだろう、誰が見つけるのだろう、どこまで段階を踏めばいいのだろう、そんな模索を繰り返しながらも進んでいく。その先に、青空が広がっていることを期待しながら。雨でもいいじゃない。それを一緒に分かちあってくれる人が周りにいてくれたら。孤独にさせない人達に沢山出会ってきたよ。だから、濡れても笑うことにする。