一年という濃さ

年末に、年内最後の三者面談が待っていました。息子は、何を言われるんだろうとあまり乗り気ではなくて。それでも、学校で会おうねといつものように送り出しました。パソコンを開き、やれることは終わらせ、少し早めに家を出ることに。すると、とてもあたたかい日で、秋の余韻を楽しみながら自転車を走らせ中学校へ到着。あっという間に1年生の3分の2が過ぎ、一体あと何回学校に来るのだろうと思いながら、ゆっくり階段を上がりました。教室の前まで行き、写生大会の息子の絵を見つけると、はっとなって。あんなに淡い色が好きだったのに、ダークな色を随分使うようになっていて、気持ちが沈んでいなければいいなと。深読みし過ぎか、これが大人になりつつあることでもあるのかなとぐるぐる。そんなことを思っていると、前の方が終わり会釈をし、先生が声をかけてくれました。「少し早く終わったので、R君はまだみたいですね。科学室で待っているんです。絵をご覧になりましたか?写生大会、楽しそうに描いていましたよ。」その言葉を聞き、ほっ。「見つけました。それは良かったです。」そう言って微笑むと、教室へ促されました。ゆっくりと私の中にあるテープレコーダーは、再生と巻き戻しと録音が始まって。こんな時間が希望と言うのだろうか。

息子が来る前に、せっかくの機会なので、思い切って聞いてみることにしました。「先生、もし可能ならなんですけど、面談が終わった後、外から図書室を見せて頂くことはできますか?」「いいですよ~。もしかして司書さん?」なかなか鋭いな、本の匂いでも染みついているのかなとちょっと驚いて。「はい。司書だったんです。」過去形で伝えたものの、そのイメージが随分しっくり来たのかまさかの質問攻めが待っていました。「そうだったんですね!どこの図書館で勤務されていたんですか?」「某大学図書館です。先生が、国語の先生で個人的に嬉しかったです。」そう言った途端、30代の女の先生はぐっと親近感を抱いたのか、とても喜んでくれました。「大学図書館だといろんな大変さがありますよね。」「はい。これ何語の本?とかいろんな言語のものがあって、大変だったけど勉強になりました。」そう話すと、他にも聞かれ二人で大盛り上がり。そして伝えてくれました。「私、司書教諭の資格を持っているんですけど、1年目から図書室運営があって、最初は分からないことだらけでした。でも、その後司書さんが来てくれるようになり、本当に助かったんです。」と思わぬところで先生の苦悩が感じられ、そして司書への敬意もそこにはあり胸がいっぱいでした。先生がぶつかった壁は、まさに私が司書教諭の勉強をしていた内容と見事に重なって。息子がまだ1歳の時、深夜に書いたレポート、試験の結果に一喜一憂していた自分を思い出しました。まさか中一の担任の先生と、図書室のことを語り合えるこんな未来が待っていたなんてね。その後、息子が廊下にやってきて先生が呼んでくれました。「お母さんとすっかり盛り上がっちゃってた!」と笑ってくれて、3人での面談が始まって。「R君、寡黙なんですけど、癒し系です。」先生の言葉のチョイスが笑えるな。「卓球部の仲間もみんな穏やかな子が多く、R君はいつもそういった子達に囲まれています。人間関係は何も心配はいりません。そして、成績のことですが、1学期は本気で心配していたんです。でも、2学期になって勉強の仕方が分かってきた?」と息子に振ってくれて。コクンと隣で頷いたのが分かり、続けてくれました。「明らかにテストの答え方が変わってきたんです。何かスイッチが入ったなと。」先生、プロフェッショナルだなと改めて思い、伝えることに。「1学期は中学校に慣れることで精一杯で、あまりうるさいことを言ってもなと思い、見守っていたんです。夏休みになって、ひと呼吸置けたのでさすがにこれはまずいと思い、二人でも勉強を一緒に始めました。テスト勉強はどうしたらいいのか少しずつですが、分かってきたようです。」「そうだったんですね。安心しました。あっという間に2年生ですぐ受験になるので、高校に向けて頑張ろうね。でも、それが全てじゃないけどね。」そう息子に伝えてくれた時、最後の一行にじーんときて。志望校を目指すのは大事なこと、でも学歴だけが全てじゃない、その途中でいろんなものを拾って自分のものにしていけたらいいね。人の価値ってそういう所に出るんじゃない?行間を読み取らせてもらうと、先生が伝えたいことはそういうことだったような気がして、胸が熱くなりました。いい先生に出会えてよかったね。言葉の力を知っている方だ。
その後、二人でご挨拶をし、その場を後にして、息子に図書室まで案内をしてもらいました。すると、開いているのが分かり、先生の許可も頂いていたので中に入ると、ふわっと柔らかい空気が流れ込んできて。司書の方はたまたま不在、でもその人が作り上げたあたたかさは確実にそこにありました。造花の小さな花がいくつもテーブルに置かれ、新着本が綺麗に並び、選書もセンスの良さを感じて。「『下町ロケット』(池井戸潤著、小学館)はね、お母さんが入院中にベッドの上で読んでいた本なの。4冊とも面白かったからおすすめだよ。」「そうなんだ。入院中、暇だもんね。」そんな話でわいわい。そして、見学を終え廊下を歩きだすと、息子が足音に気づいて振り向き、「司書の先生が入っていった。」と教えてくれたものの、全く姿は見えなくて、それでもぬくもりを感じた不思議な帰り道でした。「お母さん、すごい勉強になった。案内してくれてありがとう。」息子との本の冒険はこれからも続いていく。

たまたまネット上で、AIがこのサイトのひとつの記事について内容をまとめたものを見かけたことがありました。プログラマーのMさんにも知らせ、二人でちょっと違うんだよなと笑ってしまって。でも、読者さんおひとりおひとりは、ご自身の中で大切に受け止め、こちらが思うよりも深く感じてくれているのではないかと。その優しさに支えられ、この記事が年内最後として、今年も途切れることなくここまで来られました。図書室で私が感じたように、ぬくもりをここに残したい、そう願い来年も言葉を紡いでいけたらと思っています。それでは、今年もいきますよ。2025年、心の底からお疲れ様でした!ひとりで泣いた夜も、いつか力に変わるから。そう祈って、ビールとシャンパンとファジーネーブルと新潟の日本酒と鹿児島の芋焼酎とオーストラリア産ワインと絶妙に美味しい紅茶とカフェモカとメロンクリームソーダとその他諸々持って、乾杯!!本気でお疲れ様でした!!!今年もこうしていられる今を幸せに思います。想いは伝播する、そんな場所でありたい。来年も変わらず、ここでお待ちしています。良いお年をお迎えください。年明けは元旦から~。