息子の13歳の誕生日、おめでとう!を伝えた後、いつものように送り出し、パソコンを開いてから家を出ました。明日はテスト、咳が残っているし外でお祝いをする訳にはいかないと思い、最近彼がはまっているケンタッキーのテイクアウトへ。予定通りのものを買って、ほっとして自宅に戻ると、エントランスに母がちょこんと座っているのが分かりました。「お母さん!」声をかけると、かなり驚かれて。「あなたが出て行くのは見えたのよ。駐輪場の方からは見えないはずなのによく気づいてくれたね。Rが誕生日だからひと言だけお祝いを伝えたくて。」そう言われたので、とりあえず自宅に入ってもらいました。「私も移った可能性が高いからマスクをしているけど、1週間は経っているし、でも気を付けてね。」と伝え、距離を空けて話すことに。「少し痩せちゃったね。」と心配され、ケーキを渡してくれたのでお礼を伝えると、息子が好きなフルーツケーキと私が好きなモンブランでした。自分の分はなく、本当に渡すだけのつもりで来てくれたことが分かり、母の気持ちが伝わってきました。もっと話を聞いてあげたくても、こちらの声が掠れているので、さすがに気を使ってくれて。すると、息子が帰宅し、制服姿に感激した母は、スマホで撮ってほしいと伝えてきたのでカシャリ。そこには10cmもの身長差がある祖母と孫の一枚が写っていて、なんだかぐっときました。またひとつ、アルバムに綴じられていく。さあ、どんな誕生日になるだろうか。
息子は、学校で疲れ、まさかおばあちゃんがいると思っていなかったのでテンション低めでスマホを触り出しました。とりあえず、母にこの間の珍行動を聞くことに。「Rにイチゴを届けるわねと連絡が来て、熊手がかけてあったんだけど。」「え~。何かメッセージを勘違いして読んじゃったのよ。今日イチゴを持って来たわ。」そう言われ、みんなで笑って。きっと母がだらだらと長文メッセージを送るので、何が結論やねん!と面倒くさくなった息子が勘違いしたのだろうと。なんとなく想像はつくと思うと余計に笑えてきて。そして、少し母の様子が気になったので聞いてみました。「お父さんは出かけているの?」と。すると彼女の表情が一瞬曇ったのが分かって。こちらのセンサーが反応してしまうのだから仕方がない。私は私、あなたはあなた、それぞれに課題がある、それをごちゃ混ぜにしないようにひとつ息を吐き、少し話を聞くことにしました。「なんだか、お父さんの愚痴ばかりになってしまいそうで、それも嫌なんだけど。」そう前置きしてくれた母の頑張りが伝わってきました。本当は一人で解決したいのよとそんな声も聞こえ、そっと先を促すことに。「昨日もね、喧嘩しちゃったの。節分だったから恵方巻やいわしなどを買ってきて、節分らしくしたら、お父さんそういった食事が気に入らなくて、不機嫌になっちゃったからもういいわよってなって、今日のお昼も別々で食べたの。」「そんなことがあったんだね。でもさ、去年の節分も同じようなメニューだったんだよね?」「そうなの。去年はまだお父さんもお勤めをしていて、仕事から帰ってきたら食べてくれたのよ。」「ということは、別にそのメニューが嫌いな訳じゃないよね。」「なんだかもうよく分からないの。最近、お金にうるさいし、プライムビデオを見ていても有料のを観るなよっていちいちケチ付けてくるから見る気も無くなっちゃって。」そう言ってしょげている母がいたので、自分がその場で伝えられることを話すことに。「せっかく用意して不機嫌にされたら悲しくなっちゃうよね。お父さんさ、パチンコで負けることが多くて、お母さんに八つ当たりしているんじゃない?」「そんな~。八つ当たりされても・・・。」そう言いながらもちょっと吹き出して笑うので、良かったと密かに安堵して。原因が自分にある訳じゃない、全然違う所にあって八つ当たりされるのはたまったもんじゃないけど、少しでも理由が分かって良かったわ。母の表情はそう言っていました。「とりあえず、明日はRのテストがあるから、お母さん今日はごめんね。色々買ってきてくれてありがとう。私の体調が良くなったらまた一度顔を出すよ。温泉の割引券、良かったら使って。」そう話すと、こちらの気持ちが伝わり理解してくれたのが分かりました。どどっと乗っかって来なくなったね。その姿、Rも見ているよ。玄関まで二人で見送り、改めておめでとうと伝えてくれてお礼を言ってお別れしました。すると、息子がぽつり。「おじいちゃんとおばあちゃんっていつから喧嘩してるの?」コイツしっかり聞いていたなと笑えてきて。「昨日からみたい。また落ち着いたら様子を見てくるよ。Rは明日のテスト勉強頑張ろう!ケンタ買ってきたよ!」そう言ってわいわい。こちらはまったく食欲がなかったので母のイチゴとプロテインの夕飯でした。そして湯船に浸かると、思考が巡り出して。父がそういった態度を取ることに、一つだけ思い当たっていました。ただ、外れている可能性があることを伝えるのもちょっと違うと思ったので、一人で考えたくて。父は、50歳で銀行の関連会社に出向してから65歳で定年するまでの間が、一番波が穏やかだったのではないか。65歳で関東に来て母と住み始めてから、親戚のベンチャー企業で経理として働いていたのだけど、会社都合で急に退職になった。その時のショックは、こちらが思っていたよりも相当深かったのではないか、そう思いました。父は、プライドが高い、荒波を乗り越えてきたという自負もきっとある。だから、引退をする時は自分のタイミングでありたかった、財政的にも心の面でも。そのやり場のない気持ちが連日のパチンコとなり、母への八つ当たりにもなっているような気がしました。お父さん、まだ働きたかったんだね、でも転職するには病気を抱え過ぎている、葛藤が見えてきた。「Sちんって自分なりの答えを持っているんだよ。」ふいにネネちゃんに言われた言葉が聞こえてきて。「でも、Sちんは本当に今だと思ったタイミングでしか相手に伝えない。急がせたりしないの、その気持ちに助けられてきた。」ネネちゃん、お父さんのタスクとお母さんのタスクがぼんやり見えてきた気がするよ。でも、自分がパワーを身につけてから、そして息子との生活が何より最優先。心を砕かず、彼らを少しでも楽にできたなら。
お風呂から上がり、テスト勉強を一緒にやった後、ケーキを食べて寝る時間がやってきました。「あ~あ、お誕生日終わっちゃった!」そんなセリフを言う息子が微笑ましくて。「また一年後にあるよ。二人とももっと元気になったらまたブッフェでお祝いしよう!」そんな約束で盛り上がり、ようやく長い一日が終わりました。この世に生を受けた奇跡、生まれてきてくれてありがとう、毎年特別な日。来世への宿題はもうなくなった、今この時を大事に噛み締めよう。