知らないことを知る

息子が休校中、シェアオフィスのラガーマンTさんもテレワークになり、ほとんど会えていなかったのですが、ようやくお互いがリズムを取り戻した頃、ソーシャルディスタンスを意識しながら受付で談笑させてもらいました。お互いマスクをしているし、ビニールカーテンを一枚隔て、そこからさらに1m程離れて会話。「ようやく最近ずっと録画していた『ノーサイドゲーム』(TBS)を映像で観ることができたんです~。」「それでは今、かなりホットですね!」「そうなんです。来年こそは絶対秩父宮へと思っています。」と高揚感とやや残念な気持ちが入り混じった表情で伝えると教えてくれました。選手達も、密にならないような練習を続けています、少人数でトレーニングをし、本格的な試合形式にならないような内容で今取り組んでいますと。なんだか、今さらながらに皆がそれぞれの大変さの中で、それでも最善を選ぼうと自分を奮い立たせているのだと感じました。私は、まだまだ。

そして、学校から帰ってきた息子が何やら辛そうに話してくれました。「ボク、帰り道の途中からお腹が痛くなってきたの。トイレに行きたい痛さじゃないんだ。」「大丈夫?ズキズキ痛い?ちょっと手を洗ったらソファで横になろう。」そう言って寝かせると、なんとなくいつもと様子が違い、心配になりました。色々と思考を巡らせていると思い当たったのは、私が岐阜の小学校へ通い始めた頃のこと。遠距離通学ということだけでなく、慣れない環境の中で我慢していた部分がお腹に出てしまったのか、チクチク痛んだことがありました。歩けないこともない、だから余計に頑張ってしまった部分もあって。そのことを思い出し、今日は息子のわがままに付き合おうと思っていると、アイスが食べたい、テレビが観たい、夕飯はおかずだけ食べるとオンパレード。それでも、痛みが緩和されなかったので子供用の整腸剤を飲ませてみると、あっさり回復。私に甘え、薬で痛みが取れた安心感から、その日の宿題はびっくりする程スムーズにやってくれました。お腹の痛みは、心のサインかもしれない、それをキャッチできたことで息子との信頼が深まったよう。大きな気づき、見逃さないで良かった。ボケボケした息子も、漢字の練習を頑張り、せっかくなので宿題にはない、習った漢字で文章を作ってみよう!という提案に乗ってくれました。『魚の本を読む。』息子作。『広い海の光はきれい。』母作。毎日学校になり、暑い中で帰宅し、その日に宿題をやらなければいけないプレッシャーもあるかなと思っていたら、拍子抜け。「ボク、文章を作るの好き。」あらあら、遺伝かしら?

分散登校中、先生から面白い宿題を出されたことがありました。今学校で育てているトマトの品種について調べてくること。本や図鑑、事典などになかったらインターネットからの検索でもよいというもの。血が騒ぐなと勝手に士気を高めながら図書館へ向かうと、その日は久しぶりの開館で、椅子もテーブルも使えず閲覧と貸出のみだったので、禁帯出である事典関連のものは調べ学習のできる状態ではなく、断念。ざっと閲覧しても載っていないことがわかり、結局インターネットで調べて終わることにしました。それでも、自分の手で探す喜びを覚えた息子は、どうしても食べ物図鑑が欲しかったらしく、あっさり飽きてしまわないか心配になりつつも、いいきっかけになってくれたらと思い購入すると、本気で喜んでくれました。「ママ、目次と索引の違いって何?」!!なかなか高度なことを聞いてくるじゃないか!「目次は、どのようなことが書いてあるのか分かりやすくまとめられたもので、索引は、あいうえお順になっているから、ピンポイントで何かを調べたい時は索引の方が便利なんだよ。例えばピーマンについて調べたければ、“ひ”の所を探すとページ番号が載っているでしょ。そうやって調べやすいようになっているの。」こんな説明で大丈夫なのか?と久しぶりにちびっこレファレンスサービスをしたような気持ちになり、様子を見てみると、「あった~!ピーマン。ボク嫌いだけど。」ははっ。せっかく調べたなら食べましょうよ、と思いながら大盛り上がり。良かった、いい買い物だったね、あなたにも私にも。そして、今まで開いていることが当たり前だった図書館が長期の閉館になり、そこにあってくれることがどれだけ大きなことだったのか改めて気づかされました。誰が読んだのか分からない本には、時に落書きや消しゴムのカス、ポテトチップスの欠片、赤線などが引かれている。一冊の本で、全然知らない誰かと繋がったような不思議な感覚。自分の物じゃないから、より大切に使おうね、この言葉を何度息子に伝えただろう。そんなことをぼんやり思っていると、ぽつりと言ってくれました。「ママ、買ってくれてありがとう。」その気持ちをありがとう。

「Tさん、スタンドオフのポジションで、試合を作るってどういうことですか?」「今のラグビーってとにかく頭を皆で使わないと戦えないんです。どうやったらボールの支配率を上げられるのか、どうやったら相手の陣地に長くいられるのか、そういったゲームプランを試合中常に考えて動いています。」なるほど~と言いながら、山のようにあった質問を投げかけようとするとまた受付の電話が。片手を上げて笑顔で会釈。続きはまた今度。ラグビーでも社員としてもいい仕事をしてください。知らないことを知ることができた、そうしたらさらに沢山の疑問が湧いてきた、それをまた知りたくなった、奥を探りたくなった、そして、自分で感じたくなった。そんなことの繰り返し。
たった一人のファンの為に、幾度となくお礼を言ってくれるTさん。だから人は魅了される。