ラグビーの聖地へ

シェアオフィスのラガーマンTさんから、大学ラグビーの日程を聞き、とても気持ちのいい天気の中で、ビジネスパートナーのプログラマーMさんと表参道の駅で待ち合わせをしました。駅を降り、街の中を歩きながらカフェで早めのランチ。そこでなぜかプロ野球の話で盛り上がってしまい、これからラグビー場へ向かうのに、レギュラーの話は欠かせないらしい。話を振ったのはどちらの方だ?!そして、本題に入り、Mさんが伝えてくれました。「公式戦を一緒に観に行くのは野球だと思っていたよ。しかもトップリーグではなく、大学の試合というのがなんだかSちゃんらしいなって思った。」しみじみとそう言われ、じーんとしてしまいました。大学に対して、並々ならぬ気持ちを抱いていることを、いつも身近で感じてくれていた彼。やり直したいことがある、取り戻したいことがある、そんな想いを乗せて誘ったことを分かってくれているさりげない言葉に、その日の感動が始まりました。もう、ミーティングどころじゃないよ。

そして、ヤクルトファンの息子の為に、ヤクルトのグッズショップへ。おみやげを買い、これからラグビーを観に行く、中日ファンの私と阪神ファンのMさんがお店から出て、根本的に何かが間違っているなと笑えてきてしまいました。スポーツを愛する者としては、選手皆を応援しているのだから、これもご愛嬌。
それから、目の前には秩父宮ラグビー場が。なんだか、甲子園に初めて行った時のような高ぶりがそこにはあり、ようやく来られたのだと堪らない気持ちになりました。Tさんがコーチを務める大学は2試合目。1試合目も観られるチケットだったので、前半の試合を観ながら席に着くと、メインスタンドから全体を見渡せる席で、予め購入してくれていたMさんにこれからどうやってこの気持ちを返していこうと思いました。選手の保護者の方達らしき方もいらしていて、大学ならではの雰囲気に胸がいっぱいでした。

Tさんに、防寒して来てくださいとしきりにアドバイスをもらっていたので、ひざ掛けもストールも手袋も持って完全防備をしたのですが、それでも寒い!ダウンジャケットにマフラーぐるぐる巻きでラグビー観戦が定番なんです~と言われていた意味、ようやく分かりましたよ。オレンジの炭酸を飲んでいる場合ではなかった。そんなことを思っていると1試合目が終わり、応援している大学の選手達の練習風景が見られ、Tさんを探しました。「その日によって、チームのジャケットを着て監督のあたりに座っているかもしれないし、グラウンドに出ているかもしれません。もしかしたら選手に水を運んでいるかもです。」どこを探してもいない。残念だなと思っていると、キックオフ。歓声よりも拍手で応援というスタイルで、温かく選手達を見守ろうとする観客全体の雰囲気で、温かい気持ちになりました。1プレー1プレーに拍手。そして、タックルが決まる時や、パスが繋がり一人の選手が長い距離を走りトライを決めた時には大きな歓声が。Tさんがシェアオフィスでいつも話してくれていた言葉が蘇ってきました。「練習がコロナの影響で全然できていないんです。自宅で自主トレを続けてくれています。ようやく練習が再開されても、少人数でのトレーニングで、試合形式はなかなかできないんです。公式戦もいつあるのか。あったとしても、ぶっつけ本番に近いかもしれないですね。」と。コーチとして選手達を思い、コーチの苦悩をカウンター越しで聞いていただけに、全力でぶつかり駆け抜ける選手達を見て、泣きそうになりました。今、観客に包まれて、思いっきりプレーができている選手達の喜びを、感謝を、そのまま見せてもらっているようで、何かを届けてくれているようで、言葉ではなく、けがを恐れず立ち向かっていくその姿を見せてくれたことで、ラグビーの精神を、肌で感じさせてもらったような感動に包まれました。

そして、大学在学中、キャンパス内を歩いている中で、上位に行った大学野球を応援しに行こうというチャーターバスが出ていて、それを横目にアルバイトに行った自分が思い起こされて。応援に行きたいけど、アルバイトに行かないと。ちゃんと稼がないと、教員免許を諦めなきゃいけないかもしれないんだよ、大学を中退しなければいけないかもしれないんだよ、そんなことを卑屈になりながら心の中で思い、バスを後にした日。そんな自分が、20年経ち、大学ラグビーを応援し、ようやくあの頃を取り戻せたような気がしました。いや違うよ、おつりが出た、てんこ盛り。説明がつかない量の、きっと無くなってしまうことのない気持ちの財産。そんなことを思っていると、相手選手が負傷。担架で運ばれる時には大きな拍手が。全力だから負傷もする。応援しているつもりが、こちらの方が勇気づけられる、何もかもに胸が熱くなった堪らない80分間でした。結果は圧勝。そして、ノーサイドの笛が。お互いを称え合う選手達が格好いい。観客の皆さんの前で横一列に並び、挨拶をしてくれた時、観客全員が立ち拍手を送るそのあまりにも優しい時間に、スポーツの美しさを改めて教えてもらったようでした。

その後、どうしてもTさんに一声かけたくて、グラウンドが見える最前列へ。クールダウンをしている選手達の近くにいるコーチ達を何人か発見しました。でも帽子やマスクをしていて分からない。悔しい気持ちを抱いていると、こちらを見てくれた男性が一人。「Tさん!!」感激のあまり大きな声を出して手を振ると、グラウンドスタッフの格好をした彼が近づいてきてくれました。「とってもいい試合でした!お疲れさまでした!」「来てくれてありがとうございます!寒くなかったですか?」「めちゃくちゃ寒かったです~。ナイスゲームでした!」もうテンション上がりまくりで、周りの事お構いなしで黄色い声を出したのはいつ以来だろう。そんな私に半笑いをした彼が伝えてくれました。「来週も試合はあるので、ぜひいらしてください!」また来ます~そう言って笑顔でお別れ。Tさん、シェアオフィスの受付よりもグラウンドが似合うよ。満面の笑みで選手達を労う姿に沁みてしまって、そんな一面を見られて沢山のエネルギーをもらったようでした。意外な人が持っていた青春の切符、ちゃんと使ったからね。挫けそうな時、力を分けてほしい時、もう一度自分を取り戻したい時に、行くから。

ラグビーの聖地、心が本気で震えた時間。ぶつかっても、ぶつかってもボールを離さないで前に進む選手達の姿に勇気づけられた場所。仲間の為に、そんなラグビーに魅せられた一日。