学校帰りの息子をお迎えに行く途中、ある男性が歩道の植え込みに顔を入れているのが見えた時のこと。何か落とし物でもされたのかなと思っていると、近くを通りがかった30代の女性が、その男性を支えようと持ち上げる姿が分かり、近くに杖が転がっていたので、状況が理解でき、慌てて自転車を降りて駆け寄り声をかけました。「大丈夫ですか?」すると、女性がこちらを振り向き、どうやら転倒されてしまったみたいですと教えてくれました。スマホを握りしめ、頭を打ち付けたのであれば救急車を呼んだ方がいいのではと思い、様子を伺うと女性が話を続けてくれて。「顔は打ってしまったようですが、目の前がご自宅なので、大丈夫ということみたいです。」そのやりとりを聞き、ご年配の男性も杖をつきお礼と共にご自宅に入って行かれたので、その姿を見届けると、女性の方が私に向かって「すみません。」とひと言なぜか伝えてくれました。「ありがとうございました。」と彼女のサポートに謝意を伝えると、もう一人全く知らない女性も何か力になれないかと近くで見守ってくれていました。日本っていい国だな、そのぬくもりに自分が少し助けられたようで、ふと祖父のことを思い出して。交通事故に遭い、脳梗塞で手術を繰り返したおじいちゃん。久しぶりの退院で、じっとしていられない祖父は散歩に出たものの、自宅前で転倒しそうになり、たまたまうちに来てくれた配達員の方が腕を取り支えてくれました。本当に有難くて。外の世界の何気ない優しさに救われた、大事な出来事でした。それは夕方の時間帯、日が暮れそうな黄金色の風景を今でも大切にしまってあります。
そのお迎えの日は、婦人科へ行ってきました。ホルモン注射で、吐き気やメンタル不調が強く出てしまった話を正直にすると驚かれて。「ホルモン補充すると、楽になったという人が多数なんだけどな。」やっぱり私は少数派なのかと小さく凹んでみる。「で、どんな辛さがある?」「乱高下するような・・・。」と言ってみたものの、いや違うな、上がってもいないんだよなと頭を過ったのは、薄氷の上にひとり佇む自分の姿でした。気を付けていないと冷水にズボッと落ちてしまいそうな緊張感の中にいるんだろうなと。「どちらかと言うと、どうしても気持ちが沈んでしまう感じがします。」ホルモン治療が合っていないことが十分わかったので、自力でなんとかします~と言いに来たつもりが、目の前で先生が過去のカルテを見ながら悩み始めてくれたので、これ以上何も言えなくなってしまい、次の言葉を待つことに。「前に漢方を出したことがあったけど、合わなかったんだっけ?」「そうなんです。胃腸に副作用が出てしまいました。」・・・しょぼん。「それなら、胃腸の負担が少ないもうひとつの漢方を試してみよう!」実は漢方内科に長く通っていて、そこで漢方が出されているんですと伝えようとしたものの、なんだかそれを言ったら先生のご厚意を台無しにしてしまいそうで、とりあえず処方してもらうことにしました。すると、その副作用を心配した先生が2週間後に来てと言ってくれて。しかもその日は産科。先生の気持ちは嬉しいのだけど、それはそれでちょっとブルーなんだよなと思いながら薬を受け取り帰ってきました。よく見ると、随分前に漢方内科の主治医が出してくれた漢方でした。結局むくみの副作用が出て、他に変えてもらった薬、でもダメ元でまた差し替えて飲んでみようと思い、トライしてみると小さく効いてくれて驚きました。ホルモン治療を繰り返し、体質がちょっと変わったか?!無理だと思っていたものが効いてくれて、副作用が後から出ないことを祈りつつ、二人のスーパードクターに拝みたくなりました。そして、退室する前に婦人科の先生が伝えてくれた言葉を思い出して。「○○さんは細いから、ホルモン注射の量がもしかしたら多くて逆に効き過ぎてその辛さが来てしまったのかもしれないね。」と。先生、あっさり解を持っていたなと笑ってしまいお別れ。
せっかくその辛さによって開いたのだから、何事もなかったかのように閉じてしまうのではなく、その実態がなくなるまで考えようと決めました。私の中にある負の感情は、怒りや悲しみよりも怖さが支配しているのだと。数年前の家族会議で、父の目の前で、母のことで姉とやり合った時に、ネネちゃんは思いっきり私に刀を振ってきました。こちらが痛いと思う言葉をわざわざ選んでいるのも分かり、それがとても悲しく怖くて。その後、途方に暮れてしまい、姉と音信不通に。そんな中、彼女はカウンセリングに通い、お父さんに向けるべき怒りの感情をSちんに八つ当たりしてしまったことごめんなさいとメッセージを送ってくれました。姉の痛みは相当なもので、それは家族会議の時に十分わかって、それでも気持ちの整理はつかずそのままに。その後、卵巣腫瘍の手術当日の朝、母から連絡を受けたネネちゃんはもう一度メッセージを送ってくれました。Sちんは、おじいちゃんとおばあちゃんが守ってくれているから大丈夫だと。その内容に涙がこぼれ、乗り切った手術。そして、その半年後4年半ぶりの再会が待っていました。溢れる涙が止まらないネネちゃんは、どれだけの傷を負わせてしまったか謝ってくれて。その姿を見て、もう気にしていないよと言う私を怒ってくれました。簡単に人を許してはいけない、そうやってSちんの中に辛さが溜まっちゃうから、怒りをぶつけてほしいよ。そうじゃないとSはずっと苦しいままだからだと。あの時姉は、私の中にあった実態を誰よりも具体的に気づいていたのだと改めて思いました。開けて見て分かった怖さの塊、その中には姉に振られた刀も混ざっていて、その根元は母にあなたがいないと生きていけないと言われた時のことで、そんなことネネちゃんに言えるかー!!ということで、のらりくらりと姉妹カフェを延期している次第です。あはっ。鋭い姉は、何かしら勘付いていて、どうやってしらばっくれようかずっと考え中。焦るとろくなことがなく、絡まった状態で彼女に会って、余計に絡まっては凧糸状態になるので、一人でスケートリンク上にいようと決めました。でもね、そこは遊園地の中にあるから、寂しくないよ。リンクを降りたら、春が来るかも。