初めての海外で感じたもの

大学4年の秋、色々なことが落ち着き始めた頃、大阪での仕事を退職し、カナダに留学した姉が母と私を呼んでくれることに。

「現地で運転もするから、国際免許も取ってきて。」と言われ、なんだかよく分からないまま警察署で発行。祖父には、お母さんを元気づけてくるねと言って納得してもらい、準備も万端。
そんな中で、9.11のアメリカ同時多発テロが起きました。
たまたま、母とテレビを観ていた私は、強い衝撃を受け、固まりました。CGにしか見えなかった。こんな非常事態に出国したら駄目だと判断し、姉にメールを送ると国際電話がかかってきて、「アメリカではなくカナダ行きだから大丈夫だよ。」と、意外にも楽観的な返事。

世界が大変なことになっていると思いつつも、せっかくの母との機会だからと思い、5日後に成田空港へ。カナダ行きとはいえ、カナダを経由してアメリカに入る人もいるという理由からなのか、機内の不審物の確認などで、フライトは2時間程遅れることに。
本当に大丈夫なのか、不安でいっぱいの中、ようやく機内に入れた時には、乗客の皆さんがすでに疲れているように見えました。
長時間のフライトの末、ようやくバンクーバー空港に到着。人生初海外は、緊張と喜びでいっぱいでした。

慣れていない上に、海外で飛行機の乗り換え。大した語学力が無かった私は母と戸惑いながらも、友好的なカナダ人の空港職員に助けられました。厳戒態勢の中で、「不安にさせてごめんね。君達はテロリストには見えないんだけど、様々なチェックが必要なんだよ。」そんなニュアンスのことを言われて、笑顔を交わしほっとさせてくれて。
バンクーバー空港は、国内線に乗り換える人と、アメリカに向かう人でごった返し、アメリカ行きの人達の顔がとても険しく、胸がつぶれそうでした。スーツを着たアメリカ人の方を何人も見た気がします。日本で働くアメリカ人の方が、危険を回避しカナダを経由したのだろうと。
沢山の思いを抱きながら、母と無言のまま国内線へ。
出国が遅延した影響で、乗り換えはぎりぎりでした。それから搭乗し、姉のいるカルガリーへ。

空港で、姉とホストファミリーのママが迎えに来てくれていて、久しぶりの再会にお互い半泣きしながらのハグ。
「天然のSが、こんな状況の中で、お母さんを連れてよく来たね~。」
「お姉ちゃんが来いって言ったんでしょ!!」と笑い合い、ようやく緊張の糸が解れました。

姉が今までで一番、優しい顔をしていた。きっと、カナダという国で沢山の自然や優しさに触れて、いくつもの鎧が外れたんだろうね。

翌日から、現地の交通ルールもよく分からない中、交代で運転させられ、湖の旅に女三人で出発。最初で最後の三人での海外旅行。
バンフという街の、湖のあまりの美しさ、あの時見た感動を忘れることはありません。

9.11同時多発テロで、犠牲となられた方々のご冥福をお祈りいたします。