優しい音の世界

夫の仕事が忙しく、職場の近くに一週間ほど滞在することに。
最初から私だけが幼稚園の音楽祭に行くことを、息子には前もって説明し、納得もしてくれていたのですが、全然会えていないこともあり、どこか寂しそうでした。

当日の朝、夫に頼んでおいたメールを読むと、急に目が潤みだした息子。
『パパも行きたかったけど、仕事で行けなくてごめんね』という一文に、ずっと耐えてきた気持ちが溢れ出て、それでも私の前で泣いたらいけないと思ったのか、ぐっと堪えていました。
今泣いたら、ママが心配する。優しさだけでなく、いつの間にか強さも身に付けていた姿を見て、私も堪えながらハグをして伝えました。
「パパの代わりに、お友達のくまちゃんを連れていこう!」そう言うと、にっこり笑ってくれて、「ホワイトタイガーちゃんも一緒に連れて行きたい!」ちょっと待った~!!どんどんメンバーが増えるパターンか?!
マブダチくまちゃんを一人ぼっちにするのではなく、仲良しのホワイトタイガーちゃんも一緒。
以前、「みんな家族だから寂しくないよ。」と話したことを大切にしてくれていたようです。

音楽祭が行われるホールに着くと、担任の先生や補助の先生がいつもと同じ笑顔で待っていてくれて、一週間パパ不在という非日常的な中にいた息子は、そこにあった日常にほっとして皆の輪の中に入っていきました。
観客席に着くと、一つ空けて隣になった違うクラスの仲良しの友達に「夫が仕事で来られないから友達を連れてきた!」と小さなぬいぐるみ二匹を出すと大爆笑。予め決まっていた夫の指定席にちょこんと座らせました。
その友達の旦那さんがスーツ姿で後からやってきて、なんなんだこのぬいぐるみは?!という顔をされ、軽い罰ゲームのような気分に。息子の為だ!約束は守ろう。

いつもは夫にビデオをお願いしていたので、うまく撮れる自信もなく、デジカメだけを持参したのですが、夫と息子を繋げられるのは私しかいないと思い、必死でデジカメから動画を撮りました。撮影の出来映えよりも、頑張って働く夫と頑張って練習した息子を、記録という形で繋げたかった。夫が仕事で弱り切った時、息子が大きくなってもっと沢山の壁にぶつかった時、そこにはいなくても心はいたのだと感じられたら、大きな励みになってくれるような気がしました。妻って、母親って、きっとこういう役割。そして、そんな姿を先生達は見てくれているのだと思います。
だから、私も幼稚園が好き。頑張っている姿をそっと見て、一体何度助けられたことか。

大好きな先生とクラス皆の楽しい演奏の後、舞台の上からちらっと席を見て、私を探してくれました。
大丈夫、ちゃんと見ていたよ。メロディオン、上手に弾けていたね。
その後、ロビーで引き渡されてから、友達と話し、まだまだ元気そうだったので、一番最後のプログラム、せんせいバンドを見ていくことに。
それは誰もが知っている『小さな世界』という温かい曲でした。

親元を初めて離れて、新しく飛び込んだ幼稚園は、子供にとって優しく可愛らしい世界。
そんな“小さな世界”を見て、子供は家族以外にも愛される素晴らしさを学ぶ。
そうした先生達に、親の私は、魅せられる。