この間は、息子の帰宅時間に合わせ、学校の防犯パトロールに出かけました。腕章をし、自転車のかごにはプレートを付け、保護者だとすぐに分かるよう準備は万端。一応息子には帰りに歩道橋の下あたりにいるよと伝えたものの、お友達と仲良く帰り、あっさりスルーされるだろうなと思いながら自転車で向かいました。のんびり帰る子達に挨拶をしながら、パトロール場所を行ったり来たり。すると、歩道橋の向こう側で、「ママ~。」と叫んでいる8歳児を発見。満面の笑みで、猛ダッシュでこちらに向かい走ってきてくれたので、思いがけないリアクションに嬉しくなってしまいました。「あれ?一人?」「今日は掃除当番だったから、先に帰ってもらったの。だから、ボクだけ。」「そうなんだ。じゃあ、一緒に帰ろう。」そう言うと、にっこり笑って付いてきてくれました。なんでもない時間、それなのにちょっと沁みるのはなぜだろう。少しずつ離れていくのは自然なこと、それでもふとした瞬間に、懐かしいひとときがあって、嬉しい気持ちをくれる。あなたが忘れても、お母さんが忘れないでいるよ。だから、安心して前に進めばいい。
そんなことを思っていると、広報委員長になってくれたお母さんのエピソードが蘇り、思わずふふっと笑ってしまいました。「以前、防犯パトロールをしようとしたら、たまたまプレートが回ってこなくて、仕方がないから腕章も付けずに帰宅する子供達に、『気を付けてね~』って言いながら自転車で移動していたんです。何あのおばさんって思われているのは分かっていたんだけど、それでもないものは仕方がないから開き直って回ってました!」高学年になればなるほど、エピソードって増えるんだなと聞いていて微笑ましくなって。小さな経験、それをこんな風に笑い合える仲間を大切にしたいと思う。これが、私のプチハピのひとつ。
父がまだ実家にいた頃、両親が冷戦状態の真っ只中の時、こっそり私に伝えてきました。「お父さんは、隣町にアパートを借りた。Sがいつでも来られるように、2LDKにしたから。自宅で辛いことがあったらいつでも来い。大家さんに鍵をもらったらひとつ渡すから。」最後は私ともまともに口を利いてもらえない状態だったので、その言葉がどれだけ嬉しかったことか。母にも祖父にも辛く当たられた時、父が居場所を作ってくれたのだと救われた気持ちでいました。そして、実際に住み始めた後、父に連絡を取り鍵の話を聞くと、言葉を濁されてしまい、それが何を意味するのかすぐに分かりました。約束って、時に残酷だなとも。そもそも、娘の学費を払わずに、女の人にブランドのバッグを買うような人のことを信じたらいけなかった、きっとその鍵は彼女の元へ行ったのだろうと思うと、情けなくて悔しくて。父の優先順位は明確なのだと、だったらなんであの時そんな言葉を私にかけたのだろうと、泣き疲れるまで、自分をどこかで強引に納得させるまで泣いたような気がしています。
こういう話をね、大泣きしている真最中に、マブダチK君に電話しないんだ。自分の中である程度落とし込み、整理し、投げた球で相手がずしっと重くならないように、ちょっと軽くしてから話す。それはもしかしたら、重すぎる母の球を受け止め続けたからなのかもしれないなとも思いました。そして、彼に伝えると、案の定ひとしきり絶句しながら説教を受けた訳で。「人の気持ち、なんだと思ってんだよ。居場所作るって言って、いきなり遮断されたんだよ。意味わかんねーよ。自分都合で動くから、お前がどうしても深く傷つけられるんだよ。俺、親になったことがないからよく分からないけど、子供を守るのが親の役目だろ。守ったふりして知らん顔するなんて、最低だよ。お前に怒りの感情がどこかで欠落しているから俺がその分怒る。でも、Sの悲しみの深さは底なしだと思ってるからな。いいから、吐き出せ。感情を出さないとずっと辛いままだぞ。なんだよ、くそ~。」とずっと同じようなことを言うものだから、思わず笑ってしまいました。「期待した自分がいけなかったの。」「そんなだから安心されるんだよ!いいか、お前が納得しても俺は納得しない。Sの心誰が守るんだよ。」もうね、十分K君に守ってもらっているよ。
そんな数年後、彼女と別れた後、姉と私が父宅へ用事で向かうことになった日。姉がトイレから出ると、父がいない場所で私にひそひそ。「トイレにディズニーキャラクターの小さな置物があったんだよ。明らかに元カノの趣味だよね。トイレに流してこようかと思ったんだけど、さすがに物には罪がないと思って止めた。Sもこれぐらいの気持ちでいないと。」って半笑いで言うものだから一緒に笑ってしまい、まだいたずらができないかと物色するものだから、その姿を見て少しだけ自分の中で吹っ切れたようでした。ありがとう、これが姉のあたたかさ。
「超趣味が悪かったね、カーテンの色とか。お父さんも、どうせならもっといい女と付き合えばいいのに。あんたさ、大したことない彼女の存在で傷つくのもばかばかしいよ。なんか、気持ち悪かった。」と帰りの車の中で、散々毒を吐くものだから、お腹を抱えて笑って帰宅。
心の中に何が詰まってる?色んな形で色とりどりの優しさが、悲しい記憶をそっと埋めてくれていたらいい。