紐解いていく

姉に昔からよく言われていたのは、『感覚で生きている』ということ。その当時はいまいちよく分かっていなかったのですが、最近になってようやく理解ができるようになりました。「おせんべいを食べると、その破片が胃に刺さりそうだなと思ってしまうんだよ。」「そんな訳ないでしょ!」「そうだよね。肉の塊を食べるとずっと胃の中に残っていそうだなとか。」「・・・頭で考え過ぎ。大体、Sの不調って天候とすごい連動してしまっている気がするんだよ。色んなことをキャッチするからなんだろうな。」分析が大好きな姉は、妹のことが良く見えていたよう。そして、ある時伝えてくれました。「R君は、小さい時のあんたによく似ている。人の顔色を見て大人しくしているのではなく、ポテトチップスの袋をパンッて開けて、中身が飛び散ったとゲラゲラ笑うような子に育ててあげてね。」親の顔色を見て、わがままを言わなくなった幼い頃の私を知ってくれているからこそ。おっとっとをお皿の上でわざと粉々にして、ざらざらっと食べて笑い転げている8歳児を発見。“きちんと”ではなく“おおらかに”育てる、姉が届けてくれたメッセージを大切にしていくよ。

定期的に行っている主治医の病院。あまり心配をかけてもいけないと思い、さりげなく伝えました。「先生、この間婦人科で超音波検査をしてもらったんです。やっぱり癒着が起きていました。」「そうか。大きかったからな。」こちらが聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな呟き、その中に含まれていた先生の気持ちが感じられて泣きそうに。卵巣摘出だけでも女性として辛かったこと、その場所に痛みが残るというのはもっと辛いよね、痛みがなくなるまでとことん付き合うから。先生は、そういう人。表面に上がってくる言葉の真意が読み取れるぐらい、主治医の人間性を幾度となく感じさせてもらい、ここまで助けられてきたのだと痛感しました。無理をしてでも笑いたくなる相手、大きな支えになってくれています。

今日も来てしまったお気に入りのスタバ。そして、幼稚園時代から一緒の顔馴染みのスタッフさんが、爽やかな笑顔で伝えてくれました。「いつもありがとうございます。朝の時間帯によくお会いしますね!」「そうですね!いつもお疲れ様です。本当に大変ですよ。」二人で“いつも”を付ける、その1 wordに込められた想いをお互いが受け取るんだ。そんなことを思って席に着くと、またおしぼりにはHave a nice dayの文字が。にこにこ太陽さんマーク付き。その文字を見ていたら、中学2年生の時にお世話になった女の担任の先生を思い出しました。日記を書いても良し、自主勉強にしても良しという通称なんでもノート。そこに、英語の熟語をいくつか書き、一番最後の行にHave a nice day!と書くと、先生が赤ペンで“ありがとう!”と書いてくれていて笑ってしまいました。その言葉は、教科書の練習そのものだった訳で、勘違いをした先生が自分に向けられた言葉だと思ってくれたよう。そんな先生が、なんでもない胸の内を書いた日記を丁寧に読み、返してくれるたった一行をとても楽しみにしていました。“S、がんばれ!!”これだけの言葉が、どうしようもなく励みになっていたんだな。そして、3年生へ進級。担任の先生が変わり、二人目の出産の為産休に入るという挨拶を、全校生徒の前でしてくれました。一人目の出産時のことをとても事細かに話してくれた先生。男子が少し引いてもおかしくはないような内容も、毅然と話し、命の重みをそこにいた全ての人に伝えてくれました。この世に生まれた意味、沢山の奇跡、お母さんと赤ちゃんの深い繋がり、そして、出産の痛みがどれだけの喜びに変わるかということ。ラストメッセージは、紛れもない愛だったのだろうと思いました。どこまでも先生らしいな、そっと微笑みながら全校集会は終了。

その後、先生の所へ改めて挨拶に行くと伝えてくれました。「S、大丈夫?大丈夫って聞いても大丈夫しか言わないのは分かっているのだけど。あなたは、文字にすると正直になれるところがある。苦しくなった時、書いてみるといい。内に秘めたものが沢山あって、みんなの前では明るく振舞おうと頑張ってしまうんだけど、周りが抱いたイメージに自分をあてはめることはないの。学級委員をしていても、たまに間抜けなことをやってしまうあなたが好きよ。」どれが本当の自分なのか、分からなくなってしまいそうな時がある、そんな本音を初めて伝えられたのも、先生だったような気がしています。

まだ土曜日に学校があった中学2年生。教科を選択できる、緩い国語の授業があり、選択国語メンバーでイベントを企画。その担任の先生に制服を着てもらい、トリオの漫才に参加してもらえないかという内容に、まさかの快諾でした。大きなハリセンを作り、ネタを考え、明るいキャラの二人を選び、私は司会に。二人の生徒と、制服を着て舞台に立った先生に、全校生徒はびっくり。そして、真ん中に立ちボケ担当の先生に、二人が両サイドからハリセンでバシッとした瞬間、みんなが大爆笑。先生もうすぐさようなら、その後ろ姿を見てたくさんの思いがこみ上げました。生徒達と本気のリハーサルに笑い、本当に着るの?と言いながら制服を着てくれて、私がボケ?と言いながら叩かれてくれました。どこまでも私が大好きな先生でいてくれた。さらけ出すことを、本気で教えてくれた人。恩師に出会っていなかったら、今頃どうなっていただろう。