長い夏休みなので、息子にダラダラとテレビを見せてもいけないと思い、1時間見たら消す習慣を付けようよと話すとあっさり理解し、自分から表を作ってくれました。『あさのトイレ3分、あさごはん10分』etc…「トイレの時間まではいいよ~。なんで夜のトイレは7分なの?」「だってゆっくり入りたいから。」そんな話で大盛り上がり。時間を大切に使うって大事なことよね。
実家にいた学生時代の夏休みは、祖父と二人で過ごすことも多く、まだ運転をしていた時はふらっと色々な物を買ってきてくれたこともありました。私がいないと思って自分の分だけだった時は、いつも孫に譲ってくれて。「おじいちゃんのものだからいいよ。」「いいから、いいから。」「だったら半分こしよ。」そう言うと、いつも小さめの方を持っていってくれた祖父。気が短くて、母とやり合うなんてしょっちゅうで、間に入れば神経を使い、それでもこんなひとときもちゃんとあって、思い出すとどうしようもなく恋しくなる時があります。今やっている薬の治療により、強引に蓋をしてきた記憶までもが勝手に開くので苦しくなることもある毎日、それでもそんな記憶の断片には小さな宝も埋まっていて、いろんな思いがこみ上げて。これは何かの修行なのか?!悟空とクリリンが背負っていた亀の甲羅を思い出して、頑張るとするか。
女子ソフトボールの上野由岐子投手、オリンピック開会式の前から始まった試合の投球を観た時、心が震えました。13年前の北京オリンピックの金メダルに感動し、そして、ソフトボールがオリンピック競技から外れ、東京五輪が一年延期となり、長い時を経て上野投手の1球から始まったことに胸がいっぱいでした。何を思って投げているのだろう、誰を思って投げているのだろう、赤いユニフォームの後姿から沢山のことを感じずにはいられなくて。宇津木監督から託されたもの、日の丸を背負うってとんでもなく大きな使命なんだろうな。金メダルの瞬間、堪らなかった。
そんな痺れるような投球を見ていたら、中学時代にソフトボール部のエースだった友達を思い出しました。1年生の時から見事な投球で、部員からは期待されていて。3年生が引退し、2年生からレギュラーになった彼女は、練習試合で調子が悪い時も相手チームの監督から投げてほしいと頼まれ、ベストな状態でなくても投げたと後から話してくれました。「え?体大丈夫だった?」「うん。監督に1イニングでもいいから投げてくれって言われてね。」「で、どこまで投げたの?」「結局最後まで。」すごいピッチャーがいる、それは他校にも知られ、彼女なりに学校を背負っているのだと思いました。そんな気持ちを少しでも解したくてひと言。「なんかさ、ユニフォーム着ている姿とか、ちょっと惚れちゃいそう。」そんなあほなことを言うと笑ってくれて。Sちゃんありがとね、いつもそうやってどこかで支え合ってきた。テニス部の私とソフトボール部の彼女の終わる時間はまちまち、だからどちらかが待ち、よく合流して帰っていました。私は徒歩通学、友達は自転車なのに別れる地点まで自転車を押して一緒に歩いてくれて。「今日は帰る準備早かったね。」と私。「ちょっと見て。」と歩きながら自分のスカートをめくるものだから慌ててしまったら、ジャージをまくり上げてそのまま履いていて歩道で大爆笑。成績優秀、そしてエース、みんなにも一目置かれていた友達は、私の前ではリラックスしてくれて、ばか話で盛り上がり、彼女なりに期待に応えたいという気持ちがいつもどこかにあるのだと感じました。
3年生最後の試合でも活躍をし、引退。別れ際の交差点でも、話し足りなくて暗くなるまでずっと話していた中学時代。上野投手の背中から、懐かしいグラウンドの土の匂いと、弾ける笑い声と汗や涙でもみくちゃになったそんな青春時代が思い出され、泣きそうになりました。
共に選んだ、臨時で招集される陸上部への道。3年生の秋の長距離大会を前に、両足肉離れになって補欠にも選ばれなかった私に対し、友達はアンカーに抜擢。苦しそうにラストスパートをかけた彼女の姿を見た時、一緒に走ってくれているような気がして、涙が溢れました。そして、ゴールをした後まだ息が辛そうな状態で寄ってきて、タスキを渡してくれました。みんなの汗が沁み込んだタスキを手にしたら、余計に泣けてきて。「私はたまたまレギュラーに選ばれたけど、ずっと一緒に練習してきた仲間だから。これまで本当にありがとう。Sちゃんがいてくれたから頑張れた。」どこまでも格好いい友達、嬉しかったよ、あなたがエースになる理由が分かった。「こちらこそありがとう。3年間、陸上部で合流できて楽しかった。みんな引退して、受験勉強に専念しているのに、私達秋になっても走っていてさ、大丈夫かなって不安も沢山あったんだ。でも、この期間にしかできない経験、私達きっと手に入れたんだよね。ずっと忘れないでいようね。」そう言って、お互いがお互いを労い、エール交換の握手。苦しい時こそ走った時のことを思い出そう、周りのことは気にしないで信念を貫こう、彼女と交わした約束。その時得られたものの大きさを大人になって実感したよ。ふくらはぎのマッサージをしたら、友達にもこの気持ち届くだろうか。