夢を持ち続ける

天気があまり良くない日、メリメリとした頭痛がずっと続いていたので、自宅でパソコンを開けると、プログラマーのMさんが伝えてくれました。『お父さんにばったり会いました!マスクもしていて最初は分からなかったのですが、スマホ持ってポケモンされていましたよ。』はあ?父の会社はMさんちのご近所さんで、人口の多い都内で偶然会ったことも驚いたのですが、出勤前にポケモンしてるってどうよ。父の世界観に苦笑しながらも、あのマイペースぶりに助けられることもあるんだよなと和ませてもらった朝の時間でした。ポケモンのお菓子を見つけると、「これ、おじいちゃん喜びそうだよね!」と孫にも言われる67歳、入院したらピカチュウのぬいぐるみでもお見舞いに持っていくことにしよう。しかも特大サイズ!!

夫に仕事を辞めてほしいと言われた去年の夏、とても辛い気持ちを抱えながら、それでも諦める訳にはいかないといろんな思いの中で図書館の3階に向かいました。そこは学習室にもなっていて、周りに書架もあるのでなんとなくほっとしていくようで。それでも複雑な気持ちは拭いきれず、ぼーっとしながら背表紙を眺めていると、目に留まったのは一冊の本でした。『夢を叶える夢を見た』(幻冬舎)そのタイトルを見て泣きそうに。上手く言えない、それでもその時の私にとってどうしようもなく嬉しくて。そして、著者を見ると内館牧子さんが書いたものだと分かり、胸がいっぱいになりました。随分前にも触れたのですが、20代の頃、内館さんのエッセイを読むようになり憧れの作家さんに。私がこうして書いている原点にもなったような方の本が、このような形で自分を助けてくれることになるとは思わず、堪らない気持ちになりました。諦めない、そう強く自分に誓った後、ネットで文庫を購入。そこに書かれていたのは、夢を追って飛んだ人、そうじゃなかった人、飛ばないで積極的に現状維持をした人、飛んでも飛ばなくても後悔した人等々、沢山の取材を通し描かれたノンフィクションに、色々なものが流れ込んできました。一行から、一ページから、人間の生き様を見せてもらっているようで、自分を持つって大切なことなのだと痛感させられました。背表紙を見た日から半年以上経過して、味わいながらようやく読めた一冊の本。その途中で私自身が飛んだからこそ、この本を読んだ後、感無量でした。自分にとって仕事って何を意味するのだろう、何か迷いが生じた時、立ち止まって考えたくなった時、お勧めの本です。『夢を叶える夢を見た』このタイトルでぐっときた方に、読んでもらえたなら。そして、夢の途中である私をあたたかく見守ってくださっている読者さんに改めて感謝しています。皆さんの夢も、応援させてください。

まだ、小学6年生の頃、内館さんが脚本を書いた『あしたがあるから』(TBS系)というドラマを姉と見ていました。今井美樹さん主演で、何もよく分からない一人のOLが部長に抜擢され、女性ならではの視点でひとつの企画を大成功させ仲間と大喜びする感動的な場面がいくつもあり、毎回楽しみにしていて。そのドラマの主題歌は、今井美樹さんの『PIECE OF MY WISH』(作詞:岩里祐穂、作曲:上田知華)でした。中3になり、陸上部で練習し過ぎて肉離れ、長距離ランナーの補欠にも選ばれず、成績もガタ落ち。せめて冬期講習でも受けようと、自分のお年玉で冬休みだけ予備校に通いたいと母に言いました。今さらあがいたところで成績は大して上がらないだろう、それでも何か自分のけじめをつけたくて名古屋駅まで通うことに。広い講義室で、頭の良さそうな生徒達と肩を並べ、頭の切れる講師の方が講義スタイルでどんどん授業は進み、何やってるんだろうと自分で思いました。そんな中、一人の若い女の先生がマイクを持ち伝えてくれました。「みんな受験を控えていて、毎日詰め込んで本当に大変だと思う。だから私から歌のプレゼント。今井美樹さんの『PIECE OF MY WISH』がとても好きなので二番を歌います。」急なことに静まり返った講義室。そこにいるみんなが息を飲んだその時、ゆっくり歌い出された二番の歌詞と先生の優しい歌声で泣きそうになりました。寝ている生徒なんて一人もいなくて、みんなが顔を上げ、その空間をその時間を噛み締めているようで、あまりにも優しかった。歌い終わると、一瞬の間があり、その後大歓声に包まれました。前に座っていた三人の男の子達は頭の上で大きな拍手を送っていて、その姿に満面の笑みで喜ぶ先生がいて、目に映る全てが美しく感動的でした。自分を見失いそうな時、こんな瞬間が、こんな出会いが、生きていることを思い出させてくれるのだと感じたあまりにも大きな出来事でした。お年玉を握りしめて、受験勉強に行ったんだよ。そこで待っていたのは、チョークでもテキストでもなく、先生の心のこもった歌声だった。こんな喜びってある?その曲は、姉と感動したドラマの主題歌で、その脚本は内館さんが書いたもの、その人のことをもっと知りたいと思いエッセイを読み始め、書くという勇気をもらった。それでも夫に理解されず、壁にぶつかった時、そんな自分を助けてくれたのは内館さんの一行でした。『夢を叶える夢を見た』、彼女が強く優しい人であることを読者として知っているからこそ、そこに沢山のメッセージが込められている気がして、そんな巡り合わせに必然の奇跡を感じました。生きることって、どうしてこんなに苦しく、あたたかいのだろう。

夢を持つ全ての方へ、この記事を贈ります。あなたが大切にしているものを大切にしてください。芽が出ても出なくても、夢を持てたあなたの心が豊かになりますように。