息子と迎えた週末、いつものようにメジャーリーグがやる時間までに雑用を済ませ、テレビの前へ。すると自由の女神がバットを振るというお馴染みの映像がNHKBSで流れ、二人で大盛り上がり。その日は、大谷選手の古巣エンジェルス対ドジャース戦で、久しぶりに見た赤のユニフォームの選手達に感極まりそうになりました。「なんだか懐かしいね。」「うん。オホッピー!!」とオホッピー捕手推しの息子も大感激の様子。「リーグが違うから対戦することはとても珍しいの。今回は2連戦で、次回は9月上旬・・・あ、修学旅行と日程が重なっていた!」と話すと、思いっきりずっこけた息子。「ボク、今日と明日しか観られない。」と本気で凹むので伝えました。「録画しておこうか?」「野球は生でしょ!」ごもっともな意見をどうもありがとうと笑うしかなくて。エンジェルスの赤、息子の中で消えることはないだろう。そして、私の中でも。
そんな息子とわいわい過ごす中で、何気なく教えてくれた内容に大爆笑をしてしまったことがありました。別居をしてまだ間もない頃、母が預かってくれるというのでお願いをすることに。すると、冷蔵庫の中にあったカップのヨーグルトが随分と賞味期限切れだったので、息子が母に捨てたら?と伝えたそう。それでも、まだ新しいヨーグルトと混ぜて、これなら大丈夫と言って食べ出したのだと。「2週間も切れていたんだよ。新しいヨーグルトと混ぜたら賞味期限が1週間切れになるとか、そういうことじゃないって!ボク、目の前で引いた。」その様子が目に浮かび、一緒に笑い転げてしまいました。母のそういう所が、可愛らしくもあるんだよなと。そして、孫が潔癖症なことを全然気づいていなくて、その温度差が余計にツボにはまってしまいました。実家の冷蔵庫を開ける度に、ぎゅうぎゅう詰めにされた中身を見て、司書講習中の大惨事を何度思い出したことか。しっかり冷やされていなかった上に、賞味期限切れの魚を食べた一家は、夏の真っ只中に食中毒。早朝に姉が嘔吐し、母は煮物がいけなかったかもしれないと言って、まだ残っていたものを捨てました。その様子を見て、お弁当に煮物は入れなかったよなと思い、安心して大学へ。その後、お昼に食べたお弁当の魚を一口食べて、嫌な予感がしたのですぐに閉め食べるのを止めました。その勘が的中してしまい、講義が始まってすぐに急な吐き気に襲われて。保健センターのトイレで散々な目に遭いながら、煮物じゃなくて魚だったか~と一人反省会。試験は多く、連日頭の中に知識を詰め込むので睡眠不足。通常の状態であれば、危機管理のスイッチが押され、他の食材も疑って今日はコンビニのパンにしようという判断もできたのに、なんせ毎日ふらふらだったのですっかり思考が鈍り、はまってしまいました。それでも、不幸中の幸いは翌日の試験を乗り切れば週末だったこと。この一日だけは振り絞ろうと決めました。そう、何年経っても後悔しないために。なんであの時もっと頑張れなかったんだろうって思うぐらいなら、今頑張る。図書館で、ルーズリーフを持っている学生さんを見かける度に、試験当日の朝に渡してくれた仲間達の気持ちを思い出します。だから、今ここにいる。
実家と言えば、ネネちゃんがカナダ留学から帰国し、4人暮らしが始まった頃、波乱の連続でした。まだまだいろんな気持ちを抱えていた姉は、母や祖父に少し冷たく、洗濯物も自分の分だけかごから取り出し、洗濯機を回し、年季の入った昭和感満載の乾燥機で乾かしていました。それを見た母や祖父は、私に激怒。「なんで自分の分だけ洗濯するんだ。外にも干さないで電気代ばかりかかる乾燥機を使ってどういうことだ。お姉ちゃんに怒っておいて。」と。姉は、頭がキレる分、怒ると切れ味が抜群なので、反撃を恐れていた二人は、その怒りを私にぶつけました。ネネちゃんにこの話をしても嫌な気持ちにさせるだけだろうと思い、何も言わず3人分の洗濯をしていて。それでも、父に用事で会いに行った時は、笑い話で伝えていました。「お姉ちゃんね、自分の分だけ取り出して洗濯機や乾燥機を使うから、お母さんもおじいちゃんも私に激怒。お姉ちゃんらしいから端から見たら笑えるんだけど、こちらはとんだとばっちりだよ~。」と話すと、様子がありありと分かるだけに父も一緒に笑ってくれました。あんたの尻ぬぐいもこっちがしてきたんじゃ!と思いながら、こんな風に笑える日がくるなんてね。父の目尻の皺が、ぐっときた。
そんなドタバタの中で、祖父が嬉しそうに伝えてくれた日。「ネエちゃんからな、ボーナスが出たからって、おじいちゃんに少しお金を渡してくれたんだよ。嬉しかったな~。」そのやり方が、ネネちゃんらしくて私もほっこりしました。それが、祖父に対するありがとうの伝え方なのだろうと。以前話してくれたことがあって。「おじいちゃんね、大正生まれで、戦争から帰ってきて、昭和を生きてきた人だから、おばあちゃんやうちの両親も大変な所はあったと思うけど、孫の私に言ってくれたの。男がどうだとかもうそういう時代じゃない。女性も沢山勉強して、社会で活躍していくそんな世の中になってほしいって。だから、キャリアを重ねる私を応援してくれているようで嬉しかった。」と。お互い素直じゃないから、姉はぶっきらぼうにボーナスを渡したかもしれないし、祖父もなんとなく受け取っただけだったかもしれない。でも、それぞれそこには相手に対する敬意も優しさも込められていて、それを感じることができ胸がいっぱいでした。おじいちゃんがとっても喜んでいたこと、そのお金は金額以上の価値があるとおじいちゃんは気づいていたこと、ネエちゃん頑張っているんだなとしみじみ言っていたこと、姉に伝えていないことがまだまだ沢山あって。お墓まで持って行く話も、届けたい気持ちも山程あって、仕分けるのが大変。一分一秒が愛で、悲しみも喜びもあって、そんな時間を目一杯過ごしてきた。そういった想い全部、書ききれるだろうか。