一敗一勝

逆のタイトルはありました、結構前に。今回は負けが先、それもいい。
またやってきた旗振り当番の日、予報では曇り後晴れだったのに、なぜか朝から雨。仕方がないのでレインコートを着て、現地に向かいました。1年生の間は、一緒に組んでもらうことになっていたお母さんが引っ越しをされた為、今回はどなただろうと思っていたら、やってきたのは優しそうなお父さん。挨拶と共にさりげなく名前を聞いてみると、地区長さんの旦那さんだということが判明しました。その地区のスケジュールを組んでくれた地区長さんが、穴埋めをしてくれたらしく、助っ人で旦那さん登場という訳です。こじんまりとした居酒屋さんで、常連さんとオヤジさんが話しているのをカウンター奥の席でひっそりとお猪口を片手に聞いて、そっと微笑んでいる、そんな味のある感じのお父さんでした。終わりがけに呆気なく晴れ間が出て、あと30分前に止んでくれたらとタイミングの悪さを痛感しながら会釈と共に退散すると、エレベーターホールで遭遇したのは、通学前の雪だるま君。何気にいいことあったなと嬉しくなり、「行ってらっしゃい!」と伝えると、この人とどこかで会ったことあるなという顔をいつもされながら、「行ってきま~す。」と照れた声で返してくれました。今度エレベーターで相乗りした時にでも伝えようか。「バルコニーで雪だるまは作れたの?小さい頃から知ってるよ。悪いこと言わないから、ジュノンボーイに応募した方がいい。」と。何なんだ、このおばはんは!と思われるのも想定内です。

“誰と組むかは分からない”で思い出したのが、高校時代のフォークダンスでのひとコマ。男子が外側、女子が内側で円を作り、一人ずつ交代しながら踊っていく体育の授業の中で、K君が笑ってしまうぐらい女子に冷たく、彼の順番になると踊りづらくて仕方がないというクレームが私の所に集まってきました。仲がいいことは周知されているので、面倒くさいと思いながらも本人に報告。「もう少しダンスの時ぐらい女子に気を使ってよ。私に言われても困る!」と文句を言うと、「お前に言わずに俺に直接言いに来いよ!」という始末。そういう雰囲気が言い出しづらいんじゃ!!
そんなやや問題児の彼が、本当に問題を起こしたのは、高校2年の時。校内で隠れてタバコを吸ったのが先生にバレて、無期停学になってしまいました。その話を聞きつけてから、慌てて彼の自宅へ。「いろんなことに対して不満があるのは分かる。でも、学校でそれをしたら一番辛い思いをするのはおばさんなんだよ。おばさんが学校へ呼び出されるという話も聞いた。こう言ったらなんだけど、あんなにできたお母さんはなかなかいないよ。悲しませたらダメだよ!」頭の血管が切れそうなぐらい怒ったら、いつも強気な彼もさすがにしおらしく聞いてくれました。「もっと考えるべきだったと思っているよ。」と。
その後、おとなしくなったかと思いきや、髪の毛は茶髪というか金髪に近かったことも。髪の毛の黒い私と彼が仲いいのは、人によってはでこぼこの関係だと思ったかもしれない。でも、中身を知ってくれている周りの友達はみんなその深さに気づいてくれていました。「K君とSの友情は羨ましい。絶対的な信頼関係を感じるよ。それは誰も入ることのできないものだと思う。」

「俺さ、前世とか後世とかそういうのよく分からないけど、Sとはどこかで家族だったんじゃないかと思う時があるよ。理屈じゃなくて、なんだかもっと心の奥底で感じる。もしかしたら人間じゃない友達の関係だったかもしれないな。お前、相当不思議なヤツだぞ。」お前もだよ!!
魂レベルの話をされても困る。でも、ありがとう。フォークダンスでクレームが来ても、タバコを吸って説教しに行っても、やっぱりこんな時間は大切な一勝。
黒星よりもはるかに大きな意味を持つ、勝ち星の余韻。