息子が友達と遊びに行くと言った週末、夜は雨が降るからウィンドブレーカーを持っていってねと声をかけました。すると、面倒くさそうにいらないよという返事があったものの、新学期に風邪を引かせてもいけないと思い半強制的に持っていってもらうことに。そして、玄関でバイバイしました。雨が降る前だから頭も痛くて、そりゃ機嫌も悪いよねと妙に納得。その後、いい2年生のスタートが切れるようにと雨の中コメダまでテイクアウトをし、息子の好物をダイニングテーブルに並べることに。が、6時を過ぎても帰宅せず、少しずつ心配になってきました。すると、本人から電話がかかってきて。着信音を聞いた瞬間、良くない内容だと察知することに。理由は、第六感が働いたのと、息子の電話嫌いは私が一番よく知っていたから。それでもかかってきたということは、何かあったのだろうと思いました。「もしもし。」「ママ?あのね、ボクの自転車がないの。」「え?どういうこと?!いつもの場所に停めていたよね。」「うん。○○の駐輪場に停めていたんだけど、帰ろうとしたら無くなっていたの。」「で、今はどこにいるの?」「いつもの道を歩きながら帰ってる。」「土砂降りでしょ。傘を持ってお母さんも迎えに行くから。」そう言って慌てて電話を切り、カギを締めてダッシュしました。すると、ずぶ濡れになってとぼとぼ歩いている彼を発見。タオルと傘を渡し、状況を聞いてみると、ちょっとぐらいいいやと思いカギをそのままにして公共施設で友達と遊んでいたよう。そりゃ盗られるわとさすがに怒り、どれだけこちらがうるさく言っても、スルーされる年齢でもあり、こんなことの繰り返しだなと思い、とりあえず自宅に帰って落ち着くことにしました。なんだか悔しいけど、これも全て学びだ。
息子に着替えを渡し、もう少し大人の言うことを聞こうと伝えました。経験値が違う、その経験を元に伝えられることもある、それをもう少し信じてもらえないかと。本人も凹んでいるのが分かったので、できるだけ言葉を選んで、トーンを落として話しました。シングル家庭なんだよ、そんなバックグラウンドなんて犯人が分かるはずもないよねとあれこれ心の中で思って。その自転車、性能の良いものを選んだから結構したんだよな。小学校の卒業式前に学校で高熱を出してしまい、息子が帰宅しやすいようにと私が乗って小学校へ向かった、一緒にいろんな所へサイクリングに行ったなといろんな出来事が思い出され、こちらも少し凹んでしまいました。それでも、しっかりしなければ。「まず、自分だけは大丈夫という気持ちでいるとこういうことになるのはさすがに分かったと思う。お母さんとしては、モノが無くなっただけでまだ良かったと思ったよ。Rがけがをした訳でもなく、誰かをけがさせた訳でもなかったから。」そう話すと彼の目に涙が溜まっていくのが分かりました。その気持ちを持って大人になれ、今感じているものがいつかまたあなたを助けるから。そう思いながら、話を続けました。「Rの自転車が盗まれたということは、警察に届けなければいけないの。お母さん、電話するね。」そう言って地元の警察署に電話を入れることに。「お忙しい中すみません。」と最初に伝えると、「いえいえ。」という温厚な返事があり、その温度に包まれ張り詰めていた気持ちが少し和らいだのが分かりました。そして状況を伝えると、担当部署から再度折り返してもらえるとのこと。そしてすぐに電話が入り、自宅まで警察官の方に来て頂くことに。ピンポンと鳴り、玄関に出ると、署まで来てもらえないかと言われたものの、ずぶ濡れで帰ってきて行けそうにもなくてすみませんと正直に話し、よく分かってもらえて部屋に入って頂きました。ん?二人?!と慌ててダイニングテーブルを片付け、若い警察官の方と息子が対面で座り、詳細を書いてもらいました。上司の方もとても穏やかで場を和ませてくれて。そして、自転車関連の書類を出し、防犯登録の用紙を渡した後、自転車の種類が分かりそうなものを探していると見つけた小さな冊子。表紙に何か書いてあり、上司の方とあれこれ話していると、『MANUAL』だ!と二人でずっこけそうになって。自転車名じゃないんかい!とわいわい盛り上がってしまい、いつもの自分が戻ってきたようでした。そして、こういう盗難ってよくあるんですか?等々聞いてみると返事が。「カギがついたままのケースが多いですね。今日は雨だったし、そういうのもあって軽い気持ちでパクったんじゃないですか?」警察官の方から“パクった”というワードが出てくるとは思わず、それがツボにはまってしまい爆笑してしまいました。息子も大事になってしまったと反省しきりの中、警察官の方達の雰囲気で幾分和んだよう。街を守ってくれるお巡りさん、素敵だね。その後、お礼を何度も伝え、お別れしました。
それから、自転車保険のことも思い出して。息子の自転車を購入したのは2年ほど前、男の子だからどんな事があるか分からないと思い、3年の保険に入りました。カギを付けたままだったので、適用されるかはかなり怪しいのだけど、だめ元で週明けに電話を入れると、保証される可能性が高く、必要な情報を集めることに。再度警察署に電話を入れ、受理番号を入手。車体金額も調べ、全ての情報を伝えた上で精査してもらうことになりました。自分の自転車を買う時に、何かあった時に息子も乗れるようにと水色にしておいて良かったなと本気で思って。先手先手を打つから、悩みがいつも膨れ上がり、考えなくていいことまで頭がフル回転してそんな自分に疲れてしまうことが多々あるのだけど、今回に限っては吉と出たなと。これは、過去の経験も役に立っていました。それは、自分が自転車に乗っていた時に、一時停止無視の車に跳ね飛ばされた20代前半の話。無意識の間に左肩で受け身が取れたので、頭に異常はなかったという一件は何度も書かせてもらったこと。それから、姉が別居している父に連絡し、人身事故で相手側が来るから、示談にしてもらえないかと言われたらお父さんの力が必要だと説得し、本当にそういった話になりかけて助けてもらいました。母とはまだまだ冷戦状態だった父、ぶっきらぼうに帰っていった中で、数日後に電話がかかってきて。「保険会社から連絡がそっちに行くから、運ばれた病院名など答えろ。振込先も聞かれる。大した額ではないけど、家族に何かあった時に保険金が下りる保険に入ってた。じゃあな。」こんな感じのあっさりした電話で。そして、本当に5万円程振り込まれることになって。父からの見舞金だなと有難く受け取ることにしました。とてもじゃないけど、何か買う気にはなれなくて。左半分は青あざと打撲と傷だらけ、お風呂に入るのもきつい毎日で、事故の恐怖が後から襲ってくるので気持ちの悪さは続いた。でもね、命が助かった、顔は無傷だ。これ以上今は何もいらないと思いました。そういえば、あの時の5万円はずっと通帳の中だな、そして保険の大切さを心に残してくれた父には感謝することにしよう。
さてさて、最後の大仕事が待っていました。2年生の始業式、午後には入学式があり、縁起のいい日に新しい担任の先生に事件を報告しなくては。できるだけ明るい声で挨拶をし、30代後半の心地いい声の女の先生に詳細を話しました。すると、「あら。」という返事に笑ってしまって。新年度早々本当にすみません、こんな電話でと何度も謝り、穏やかに状況を理解してもらいました。いい春、そう思って。優しく電話を終えた一連の珍事件でした。そして、友達と遊んで帰ってきた息子に報告。「保険会社にも連絡を入れて、もしかしたら少しだけお金が戻ってくるかもしれない。警察の方達二人も来て頂いて、現場にも行ってもらった。施設の方にも盗難のことは伝えられた。お母さんも見に行ったら、施錠はきちんとするように新しく張り紙がされていたよ。担任の先生にも電話を入れた。Rが一人で抱えず正直にお母さんに話してくれた、だから社会のみんなが周知し、Rのことを助けようとしてくれたよ。そのことは忘れないでね。」「うん。」その返事は、ごめんなさいもありがとうも含まれていること知っているよ。社会科の教員を目指した時期もあった、息子がやらかしたから感じられた社会にありがとうと伝えたい。