好きな色

夏休みの中盤、台風がずっと停滞していることもあり、すっかり調子を崩してしまいました。息子と買い物に出たものの、気分が悪くなり、薬を飲んでなんとかミッション終了。自宅で30分寝かせてもらうと少し良くなり、これ以上悪化しませんようにと祈りました。そう、明日はヤクルト観戦の日だったから。神宮球場で縁日もあり、息子がとても楽しみにしていたイベントでした。絶対にいい一日にしてみせる。

当日、相変わらず体が重かったものの、体温を計っても熱はなかったので、更年期症状からくる不調なのは明確で、いつものようにエンジェルス戦を観ながらヤクルトグッズを詰め込みました。そして、縁日の為に早めに家を出て、乗り継ぎをし、外苑前の駅まで到着。天気は持ってくれそうだけどとにかく蒸し暑い!と思いながらも、ファミマに立ち寄り夕飯を購入。その後、球場まで辿り着くとお祭りムードでどんどんテンションが上がっていきました。息子に小銭を渡し、クジを引くと6等で、手首に付けて光る商品をゲット。そして、輪投げに参戦すると、ホームランと書いてある所を当て、大喜び。つば九郎のフィギュアを選び、テンション爆上がりの10歳児を見て、頑張って連れてきて良かったと思いました。それからも、射的で当て、村上選手のボブルヘッドをもらい、そのまま勢いに乗ってもう一度輪投げをすると、また大当たり。「ママにピンクのユニフォームをあげるよ!」と言ってくれたものの、それでは私しか着られないと思い、まさかの燕パワーユニフォームをゲットして、二人で弾けました。「せっかくだから着るよ!」と伝えると、本気で嬉しそうな息子。「ママ、黄緑似合うよ!!」とわいわい。この色を着るのは人生で二回目でした。オーストラリアに短期留学をした20代、黄緑色のカーディガンを着たものの全然似合わなくて、でも海外だからまあいいかと開き直って身に付けていました。その頃の気持ちが胸を掠め、パワーをもらえたような気がして。さあ、長い一日の始まり。
その後も、綿菓子を食べ、キッズ会員特典のくじを引くために事務局へ。知らない選手のピンバッチが出ても、その選手を応援しようと二人で決めていました。そして、息子が手を入れガサゴソ。すると取り出したのはトロフィーを持った高津監督のバッチで一緒に歓喜。今日、当て過ぎでしょ!と笑えてきて、喜んでまたキッズ会員のリュックに付けました。それからも、少しうろうろしていると、ファンの方が誰かに気づき名前を呼んでいたので、そちらに目線を移すと、「嶋さん!!」。楽天で正捕手として活躍し、日本一に導き、その後ヤクルトに来て去年引退され、今はコーチとして球団にいてくれる嶋さんが目の前を通過していき、私の声に気づいて、微笑みながら「はいっ!」と返事をしながらクラブハウスに入っていった姿を見て感極まりそうでした。なんて優しい色を持った方なのだろうと。『見せましょう、野球の底力を』3.11の後、楽天の復興支援の試合で届けてくれたその言葉は、沢山の人の心に届きました。その後、星野監督の元、日本一へ。嶋さんが伝えてくれたその想いは、忘れることはありません。嶋さん、もう少ししたら楽天戦を息子と観てきますね、仙台の街に行ってきます。その背中に心の中でそっと届けました。どんな気持ちで、その言葉を発してくれたのか感じてきます。

ふと我に返ると、息子が誰だったの?の聞いてくれたので、去年引退をされた嶋選手だよと伝えると、引退試合を見ていた彼も、ああ!と頭の中で繋がったよう。それから、ヤクルト飲料がかかったかき氷を見つけ、二人で堪能し、開場前の列に並び、ようやくライトスタンドへ。雨の心配どころか陽射しは強く、あまりの暑さに二人で大騒ぎ。今回はライトスタンドの後ろから二番目の上段、右側を見るとツバメ軍団の方達が良く見えて、いい席でした。ふと、1人の団員の方が振っている旗が目に飛び込み、よく見ると、名古屋ツバメ軍団と書いてありぐっときて。そして、その下に『どえりゃ~燕が好きだがや』と書かれていて、まさか神宮で名古屋弁を見かけるとは思わず、笑ってしまいました。名古屋の風、私が生まれ育った街、運んで来てくれてありがとう。その後、ヤクルトの応援歌が流れ、なんだか自分の方が励まされたようでした。大分、弱っていたんだな、またここから頑張ろうと思いました。試合は、広島が3点を先制、それでもヤクルトが同点に追いつき、ものすごい熱気の中で村上選手の打席が回ってきました。祈るような気持ちで息子と応援歌を歌っていると、カキン!打球がどんどん伸び、ファンが待っているライトスタンドへ。入った!!20号のホームランに絶叫してしまい、喉が潰れるかと思いました。暑いわ、喉乾くは嬉しいわで、すごい熱気に包まれたライトスタンド。その後、同点に追いつかれたものの、山田哲人選手のタイムリーツーベースが決勝点となり、ゲームセット。5回裏後に上がった花火は、ライトの上空でものすごい至近距離から見ることができ、感激のひとときでした。接戦を勝った喜びを選手達と味わい、ずっと応援歌もメドレーのように流れていて、最後まで大盛り上がり。そして、一番最後、今度は観客のみんなが応援団に向けて。「応援団ありがとう!!」息子と二人で叫び、気持ちのいい一日は終わりました。また表参道で仕事をしていたプログラマーのMさんがライトの裏側で待っていてくれて、ヤクルトカラーのユニフォームを着ている私に大笑い。「Rが輪投げで当ててくれたの。」と伝えると納得の様子。その後、千駄ヶ谷の駅まで歩くと、東京ドームで観戦を終えた巨人ファンの方とすれ違いました。そして、新宿駅では対戦相手だった阪神ファンの姿も。へとへとになり、エレベータに乗りながらぐったりするつば九郎のユニフォームを着た息子に微笑んでくれたのは、ご年配の阪神ファンの男性でした。気力で一日乗り切った私を知っているMさんはてんこ盛りの薬を渡してくれて、バイバイ。その配慮に助けられながら、ようやく乗り継いだ電車に乗せると、満員。息子を座らせることはできたものの、自分は限界を超えていて、さすがに途中で気分が悪くなってしまい、ここで判断を間違えてはいけないと半分まで来たところで、普通電車に乗り換えました。ようやく座れてほっ。黄緑のユニフォームを脱ぎ、息子と戦利品を喜び、試合の歓喜に酔いしれ、最寄り駅に到着。すると、最後に見かけたのはDeNAの女性ファンの方で、なんだか胸がいっぱいでした。会えなかったのはセ・リーグで中日ファンだけ、でも知ってるよ、みんなそれぞれがその球団のファンであることに誇りを持っていることを。ライトスタンドにいて、点数を入れてくれた選手が守備に就くと、応援団の方達が改めてその選手の名前を呼び、ファンが拍手を送ると、選手は帽子を取って会釈をしてくれました。その光景は、小学生の時にナゴヤ球場で感動したその時のままです。WBCで初めて日系の選手として出場してくれたたっちゃん。活躍した後に、センターのポジションに就くと、ファンの方達がヌートバー選手の名前を呼び、帽子を取って深々と頭を下げるたっちゃんの姿がそこにはありました。日本人の心を、お母さんの久美子さんは伝えたのだろうと。日本の文化を、その想いを沢山届けてくれたのが、彼の姿を見て分かり、堪らない気持ちになったことを思い出しました。

へとへとになって、深夜の12時に帰宅。ヤクルトの応援歌『今ここから』の曲が頭の中で流れてきて、もう一度泣きそうになった。どんな時も、自分の中にある色を好きでいよう。