持って行かれる気分

今回は珍しく、接骨院の先生が意外なことを聞いてくれました。「原稿を書く時、今日はダメだなと感じる時はあるんですか?」と。いい質問です!とこれまた二人で大盛り上がり。聞いてくれる内容が、なんだか先生らしく嬉しくなりました。「体調が悪かったり、睡眠不足だった時はその時点で凹んでいます。コンディションが良くて、音楽があると一番いいパターンですね。気持ちを上げるって意外と大変で、マウスを握りしめたまま固まってしまうからどうしても凝るんですけど、少しでも動いたら今まさに書こうとしたことが表現できない気がして、微動だにしない時があります。」「なんだかよく分かりました~。色々な意味で、リラックスが必要ですね。」いい感じでまとめてくれた先生、その時間も大切な栄養の時間ですよ。お互いにね。

そんな週末、お風呂から上がると夫がテレビで観ていたのは、BOØWYのコンサートでした。氷室京介さんが歌う『cloudy heart(作詞作曲:氷室京介)』を聴いた時、じわっとこみ上げるものがあり、一気に惹きつけられました。まだ私が小学生の時に、姉が好きだったアーティスト。影響を受け、なんとなく耳にしていた懐かしい曲が流れた時、優しい記憶をやっぱり運んでくれて。その当時はまだカセットテープ。ダビングした曲を、聴きすぎてのびてしまったと騒いでいた姉。クールな人かと思いきや、熱くなる時は無邪気にはしゃぎ、そんな音楽を一緒に聴けた時間が嬉しくて。それは、姉が自分の世界に妹を連れて来てくれた証明のようで。「アンタにはまだ早いかもしれないけど、格好いいんだよ~。」姉にとっては何でもない妹とのやりとり。それでも私には特別な時間でした。一緒にBOØWYのコンサート、行きたかったな。

ある日のこと、息子が何気なく聞いてきました。「もし生まれたのが、僕じゃなかったらどうしてた?」ん?なかなか深いな。「そんなこと、考えたこともなかったよ。○○以外は考えられないよ。全然出て来てくれなかったから困った!早く会いたかったんだよ~。」そう伝えると、お決まりのにっこりスマイルで伝えてくれました。「ボクもママじゃなかったらいやだった。他の人だったらどうしようかと思ったよ。出ようと思ったんだけど、お腹の中が居心地よくなっちゃってもう少し遊んでいたくて、出るのを止めたの。長いぐるぐるしたので縄跳びみたいにしていたんだよ!」それは、へその緒じゃ!!陣痛というのは、ママ、もうすぐ出るからねの合図だと聞いたことがあるのですが、どうやら息子は指令を出しておいて、気が変わったらしく、中で遊んでしまっていたよう。挙句の果てに、体にぐるぐる巻きすぎて、脈拍がおかしくなってしまい、陣痛室で助産師さん達は大騒動。近くで待機の日だった主治医もホテルから駆け付け、状況が分かると、今日は日曜日でスタッフも少ないから、明日一気に出そうということ。首に巻き付けている可能性もあると言われ、強くなったり弱くなったりする陣痛に耐えながら、無事に生まれてくることだけを祈りました。生きた心地がしなかった二日間。陣痛がピークに達した時に、「帝王切開にしてください。」と振り絞るように伝えたら、ここまで頑張ったんだから、なんとしてでも自力で産もうと皆に説得され、色々な意味で泣きたくなりました。「ママとの初めての共同作業だよ。いい?二人で頑張るよ。」何度も何度も心の中で伝えたサイン。そんな最中に、縄跳びで遊んでいたってどうよ。今となっては笑い話だけど、あの時は笑えないどころか、命がけでした。

「生まれた時、お母さんと目が合ったの、覚えてる?」そう聞くと、答えてくれました。「いつも聞いていた声がする方を向いたらママがいた。お腹の中で見たママと同じで嬉しかった。ママが良かった。」こんなことをまた言われたら、誰だって持って行かれる。なかなか消えない息子の記憶。