小さな小さな試練

旭山動物園で買ってきたゆめくんと肉くん(しろくまとホワイトタイガーのぬいぐるみ)は、大の仲良し。その二匹を握りしめ、息子が伝えてきました。「ゆめくんと肉くんね、同じ動物幼稚園に通っているんだけど、クラスは別々なんだよ。1m離れると泣いちゃうんだけど、隣のクラスで頑張っているんだ。」「それは偉いね~。」「休み時間になるとすぐに会いに行くんだよ。旭山動物園で、ぺたーっと別々の所にマグネットで貼り付いていたから、R君見つけてくれてありがとう!って言ってた。ずっと一緒に遊びたかったんだよ。」「連れて帰ってこられて良かったね。二匹はお友達だったの?」「違うよ、双子。肉くんが少し先に生まれたの。」ん?動物違わないか?!どんな設定やねん!!「お母ちゃんは誰?」「ママ。」・・・産んだ覚えないし!!息子の世界観はどうなっているのか、日のよって若干のストーリー展開が違うらしい。しろくまとホワイトタイガーを私が産んでいたら、今頃有名人じゃ!

今日は珍しく雪。息子を朝送り届ける途中、風も強く、お気に入りの傘がボキッと折れてしまいました。そのショックが息子に伝わったのか、「ママ大丈夫?」と聞いてくれて。「愛着のある傘だったから残念だけど仕方がない。Rも風の強い日は気を付けてね!」そう言ってお別れ。それは、長年そばにいてくれたカンゴールの傘で、調停最後の日にも使っていたものでした。このタイミングでお別れか、そんな淡い切なさと共に帰宅。そして、降りやまない雪を横目にパソコンを開けると、時間指定をしていた荷物が届きました。中身はずっと愛用しているサプリメント。心身とも陰ながら支えてくれる商品を、毎回運んでくれる宅配業者さんにお礼を言って受け取りました。時間指定をしたのに不在だった時も、嫌な顔を一つせず再配達してくれた感じのいい男性。今日も雪を被りながらいつもと変わらない明るさで届けてくれたので、板チョコを渡すとめちゃくちゃ喜んでくれました。「え?ありがとうございます!」「いつも寒い中ありがとうございます。」ほんの数秒のやりとり。それでも、彼の笑顔を見て私も元気をもらい、お互いの温度が上がったいい時間でした。その板チョコは、母が二枚渡してくれて、やたら厚いので一枚で十分だと思い、もう一枚を届けたものでした。母の気持ちも入っているから、体を温めて一日乗り切ってくれたらいいな。

チョコ好きと言えば、4歳上のネネちゃん。4年半ぶりに再会した時、大粒の涙を流して、全部を吐き出してくれました。「Sちんを沢山傷つけてしまった家族会議の後、カウンセリングに通ったの。初回からもう大泣き。“親と過去は変えられないけど、自分と未来は変えられる”なんて、いろんな本にも書いてあるし、そんなこと頭では分かっているんだよ。でもどうにもならない苦しさがあって、そんな簡単じゃないんだよって自分が嫌になるの。ごめんね。Sちんにする話じゃないね。Sの方がもっと辛い思いをしてきたのに。」そう言って、大粒の涙をポロポロ流す姉を見て、心がぎゅっと大きく締め付けられました。小さい時に両親の愛情を得られず、沢山母から怒鳴られたネネちゃん。弱い母を守ろうと訳の分からない状態を支え続けた妹。その辛さは、天秤で計れるものではなく、どちらもがそれぞれの苦しさを抱えて生きてきたんだ。少し前に、最近の心理状態をやんわり聞いてみると伝えてくれました。『どうなんだろうね。闇から抜け出せたというより忙しすぎて考える余裕がなくて、逆にそれがいいのかも。』と。そんな簡単じゃないよね、それでも前より抜け出せている、それは一番近くにいる私だからこそ感じられることだと思いました。そして、母に会った時伝えてくれて。「あのね、お姉ちゃんから電話があって、野球チームの役員のことで悩んでいてね。お母さん達がみんな仲良くしている中で試合の応援に行くんだけど、私は輪の中に入れなくて、子供もそんな姿を見ていてどんな気持ちになるだろうなって。Sは人と深く仲良くなれる。でも私にはそれができないって。そう言えばKちゃん、Sだけでなく母親の私にもよくしてくれて、あなたはそういう友達に恵まれているなって思った。」姉の痛み、母に頼れた気持ち、そして仲良しのKちゃんが私が苦しい時に寄り添ってくれた数々の言葉を思い出し、色々な思いがこみ上げました。ネネちゃんと手を繋げていても、彼女はやはりどこかで孤独なのかもしれないなと。11月の誕生月は相変わらずずっと辛かったと話してくれました。今年の11月は、何をしよう。思い切ってどこかへ連れ出そうか。

時は1997年、姉が大阪に行った年。その勇気と挑戦を心から応援したいと思いました。そして、高校3年の夏休み、初めて向かった難波。近鉄電車に揺られ、姉に会えるのが楽しみで仕方がなくて。南海電車に乗り換え、最寄り駅に降車。街並みをゆっくり歩き、女子寮の管理人さんに生徒手帳を見せ、自宅のカギを受け取りました。さっぱりとした家の中で待っているとネネちゃんが帰宅。お互い、胸がいっぱいでした。よく来たね、本当にもう言葉にならなくて。彼女の歴史、私達の歴史が大好きで。姉が、こんな自分は嫌だと言っても私が覚えておく。たった一人の姉だけでなく、親友でもあることも伝えなければ。お互いの子供が1か月違いの同級生なのは、おばあちゃんがそうさせてくれたのかも。ずっとママ友だ。そうだ、祖父の名前にも祖母の名前にも“とも”が付いていた。姉妹でありベストフレンド、いいじゃない。