意外な一面

幼稚園最後の参観日、担任のY先生が、ドッジボールで他のクラスと対決している最中、一人で声を上げて子供達を奮起させていた姿が印象的でした。隣で一緒に見ていた同じクラスのKちゃんが、「今まであのクラスに一度も勝ったことがないんだって。」と教えてくれて、先生の気持ちが跳ね返り、私の心にまっすぐ届きました。あんな姿、初めてみたよ。「早く逃げて!当たったらダメ!固まっていたら狙われちゃう!男の子達、頑張って取って!」そんな声に、こちらの方が泣きたくなりました。

その後、保育室に入って親子製作をした時、隣に座ったお母さんに言われました。「うちの子、○○君と同じ小学校に行きたかったととても残念がっていました。」ゆっくり話すのは初めてのお母さんに、嬉しい言葉をかけてもらい、驚きと喜びが押し寄せてきて。いつもの仲良しメンバーではないはずなのに、息子のことを気に入ってくれていた男の子。とても自然に、周りに仲間がいてくれる。それを当たり前だと思わずに、大事にするんだよ。

1年の最後ということで、懇談会で円になって一人一人ご挨拶。それを全て聞き終えた先生が、堪えられず泣きながら挨拶をしてくれた時は、私も一緒にこみ上げるものがありました。「本当は不安でいっぱいだったのに、優しいお母さん達が沢山いてくれて・・・。」そう伝えてくれた時、いつも冷静で安定感があって、子供達は皆先生が大好きで、見ていて微笑ましかったのですが、本当は不安と戦いながらここまで来てくれていたのだと思ったら、ぐっと距離が近くなったような気がしました。親近感を抱いた先生とあとほんのわずかだと思うと、堪らない気持ちに。人間関係が築けた時、その人の意外な一面が見えて嬉しくなった時に、別れが近づいてくる。切ないけど、最後にそんな姿を見せてくれてありがとうと思っています。

コメダのスタッフさんだと発覚したY君のお母さんが、懇談会の後に声をかけてくれました。「一人ずつの挨拶、緊張しちゃったね。Sさんの言葉、その気持ち全部受け止めた!!」と、まだ皆が周りにいる保育室で、勝手に二人で激励会。コメダにいる時の雰囲気そのままで、この友達はいつもこんな感じなんだろうなと嬉しくなりました。いっぱいいっぱいだったけど、沢山の友達に助けられたから、挨拶でお礼を伝えたかった。大きな仕事を終えた気分。

姉がカナダからの留学を終え、名古屋市内で勤務していた会社を退職する日、姉の会社用のアドレスにメールを送りました。『私が大学4年生の時、東山線に乗っていたら、お姉ちゃんが“受かった”という連絡をしてくれて、いつもは降りない中村公園の駅で合流した時、表情が本当に嬉しそうで、私も嬉しかった。その時のリクルートスーツは、大切に引き継いだよ。カナダでの経験を生かして働く姿が、とても格好良かったです。今までお疲れさまでした。』そのようなことを伝えたら、文面を仕事中に読んだ姉が泣いてしまい、大変だったと後から怒られました。「あんたね~。最終日に泣かせるな!!みんなに心配されたじゃない!でも、ありがとう。」と。いつもピーンと張っていた姉の緩んだ姿を、会社の人に見てもらいたかったんだよ。最後まで格好つけなくてもいい。妹の作戦は見事に成功でした。

参観日の後、園庭に迎えに行った時のY先生は、いつもよりふんわりしていました。泣いて、肩の力が抜けたんだろうな。
今日の先生、とっても素敵でした。その姿を目に焼き付けておこう。