気持ちの流れのままに

もし自分が読み手の立場だったら、どんな文章を読みたいか。それはやっぱり、“リアル”であり、その時どんな思いに包まれたのか、その人の正直な気持ちを感じたいなと。だから、自分の弱さも格好悪さもひっくるめて、届けられることを素直に書いていこうと思っています。着地点が書いている本人も分からない、その中で迷い、どんな言葉に励まされ、顔を上げることができるのか。どうしようもなく辛くなっても、『さくらdeカフェ』は営業中です。

シェアオフィスで一緒の、不動産関係のお仕事をされていたHさんの部活の後輩に、弁護士さんがいらっしゃることが分かり、紹介をして頂きました。アポを取り、勇気を出して事務所まで伺うと、感じのいい女性スタッフさんが席を勧めてくださり、気持ちが和らいでいくようで。そして、名刺を持ってご挨拶に来てくれたのは、ほんわかとした雰囲気の男性弁護士さんでした。詳細をざっくりと話し、夫との円満別居は可能なのかどうかを聞くと、こちらの痛みを感じ、色々なアドバイスをして頂いた後で伝えてくれました。「一度、お子さんをご両親に預けるなどして、真剣に旦那さんと話し合った方がいいです。何がどう辛く、自分はどうしたいのか。きっと反論してくると思うんです。でもそれも聞かなくていいです。話がかみ合わないなら、財産半分をもらってお子さんと家を出る、それぐらいの気持ちで話し合ってください。そうじゃないと、どんどん悪化していきそうな気がするんです。」と本気で心配してくれた先生。あなた、これまでも沢山の我慢をしてきましたよね、でももう怯まなくていいんです。自分の人生なんだから、もっとご自身を大切にしてください、僕はあなたの味方です。負けないで!そんな気持ちが痛い程伝わり、目がうるっとなりそうになるのをぐっと堪えました。きっと私のように沢山迷い、悩み、方向が見えなくて、途方に暮れそうな毎日を過ごしていたクライアントさん、いっぱいいたんだろうなと。人生で初めてお会いした弁護士さんが彼で良かった。こんな短時間で、長年の辛さを感じ取ってくれた、それはね、ご自身も沢山のご苦労をされてきた証拠。苦しさを乗り越えた人の言葉には、立場を超える深さを届けてくれること、知っているよ。

その後、一日空けた土曜日、三人で広い公園へ出かけることに。夫と息子が遊んでいる姿を見て、涙が溢れそうになりました。色んな気持ちが渦巻き始め、顔を上げるとそこには雲一つない空が広がっていました。あまりにも透き通っているので余計に胸がはち切れそうになっていると、視界に入ってきたのは一機の飛行機。姉の心の象徴である飛行機が、「迷うな!」と伝えてくれているようでした。
その夜、息子を寝かしつけた後、夫と向き合いました。かみ合わない会話を続けた後、角度を変えて伝えさせてほしいとひと呼吸置き、言葉を紡いでいく。「ここまで10年、一緒に歩いてきた感謝をここで伝えさせてください。そして、母と距離を取っていた時に、間に入ってくれたことにもお礼が言いたい、それは母も同じ気持ちです。今回、手術をしてから、薬物療法の影響もあって心や体が前のようにいかない毎日と戦っている。色々な家族の形があるから、別居するのもひとつなのかなと思うようになった。」「…いつからそう思っていたの?」「休校中、あなたの態度が酷くて、私の仕事をどこかでばかにされているようで、その時に左側の卵巣が悲鳴を上げたの。もう無理だなって思った。でも、Rのことを思い、ここまで来たのだと思う。」そう話すと、色々な気持ちを逡巡させ戸惑っているようでした。夫は、これまで私が受けてきた傷が分からない、それはもう仕方がないことなのだと。それを思った時、姉の言葉が過ってきて。「足を踏んだ方は覚えていない、でも足を踏まれた方はずっと覚えているよね。もう人の顔色を見て生活するの、お腹いっぱいじゃない?」これは、両親の間に入り、ずっと辛い思いをしてきた妹を知っている姉だからこそ伝えてくれた言葉なのだと思いました。それと同時に、忘れてはいけないもの、私の中にはやはり感謝が残り、息子の顔も思い出し、ばかだと分かっていて伝えた言葉。「私達の10年という歴史があるから、ここで簡単に結論が出る話ではないと思っているよ。別居したいと思ったのは、離れることであなたと心から笑い合えるような気がしたから。アパートで一人暮らしをしていた時、会いに来てくれて嬉しかった。Rのことを一番に考えよう。だから、これはお互いの宿題にしてゆっくり時間をかけて話し合おう。」そう言うと、納得してくれました。ホルモン治療中にする会話じゃないぞ、もう心の中がパンパンだよ。それでも、余裕がなかったからこそ自分の本音と向き合えた気がしました。物理的な距離を取った方がかえってうまくいく、そう信じて踏み出した一歩です。結論は出ている、でもタイミングは三人ができるだけハッピーになれる形に持っていけたらと願わずにはいられなくて。昨晩ふと思いました。この先、別居しようが離婚しようが、私はこの人と結婚したことに後悔はないんだなと。

弁護士の先生が別れ際に聞いてくれました。「web上で書いているんですか?」と。そうですよ、先生。この記事が、夫婦関係で悩む沢山の方達に届き、一歩踏み出す勇気に変わってくれたらと願い、送り出そうと思います。簡単じゃないから、沢山悩むから苦しい、でも必ず手を取り助けてくれる人はいる。私の悲しみに触れ、未来を照らしてくれた先生、出会えて良かった。