母宅に用事があったので出向くと、歯の手術後の痛みが酷く、寝込んでいたので介抱することに。頭がボサボサで体調の悪い母は、とんでもなく嫌味っぽくなることを知っていたので、少し警戒をすると、来てくれたことを喜び、少しずつ元気を取り戻してくれました。母の様子に安堵し、食器を洗って帰ろうとすると寂しいからもう少しいて～と弱気な所は相変わらずで半笑いしながら付き合うことに。対面すると、改めて伝えてくれました。「今回の引っ越し、春休みぐらいだと思っていたのに、思いがけず早くてびっくりしていたの。土日で一気にやるって言っていて、本当にやれるのかしらって心配していたら、本気でやってのけちゃうんだもん。あなたの決断力と行動力を尊敬するわ。女性として、母親として立派だなって思う。Rと二人でいる姿を見ても、何か自信のようなものを感じたの。」そんないいもんじゃないよ、お母さん。ハラハラの連続で、綱の上を歩いているような状態だった。それでも、沢山の人がネットを持って支えてくれていたんだ、そんなことを思いながら伝えました。「今の物件を絶対に逃したらいけないと思ったの。Rが喜んでくれてほっとしているよ。」毎日宿題をやった後、公園でお団子を作って帰ってくる。ひび割れちゃった～と騒ぐ息子を思い出し、こみ上げるものがありました。ここまで来たんだ。
引っ越し前、猛烈に忙しくしている妹を心配し、姉がメッセージを送ってくれていました。『引っ越し前日、箱詰め隊に行こうか？』と。自分でなんとかするからとお礼の返信をすると、数日後に、『引っ越し先の水拭き隊に行こうか？』と連絡をくれました。どうしても“隊”を付けたかったらしい。そんな姉の言葉や気持ちに和ませてもらい、彼女は私が行間を読むことを誰よりも知ってくれている人であることを思い出しました。“今のSに多くの言葉はいらないでしょう。でも、いつでも助けに行く準備はできていることは伝えておく。だって、あなたのお姉ちゃんだから。”もっともっと沢山の気持ちがそこにはあって、S頑張れ！というエールがいつも込められていたことが大きな活力になりました。箱詰め隊も、水拭き隊も一緒にいたよ。
そんな姉と会った時、去年ふと私に質問を投げかけてきました。「どうしてSちんは、お父さんに対して怒っていないの？面倒くさくなるといなくなる人でしょ。それだから余計にお母さんはのっかかってきて大変な思いをするのに。」「お父さんって言葉数が少ないんだよ。でも、そのひと言に救われる時があって、風来坊なのに押さえるところは押さえてくれているから、何とも言えない信頼もあったりしてね。間の取り方とかテンポとか、お父さんといる時の無言の時間っていやじゃないの。なんか楽なんだよ。」「ちょっとわかった。お母さんって言葉数が多すぎて、わーっと一気に自分の話をするから、それがSちんにとってかなりのストレスだったんだろうね。」「そうなんだと思う。After you. あなたからどうぞっていう気持ちって、相手に対する配慮だと思うんだ。」「Sはいつもそのスタンスでいるから、相手が楽になるのが分かるよ。聞き上手って大切なことだね。」ネネちゃん、あなたもそうだよ。私の負の感情を何度も引き受けようとしてくれた。
母親、娘、妹、色んな役割がある中で、ふと女性としての自分が最近少し薄れているのかもしれないなと思っていたら、随分前の記憶が蘇ってきました。それは、８歳上の男性と付き合っていた１９歳の頃のこと。遠恋の末、振られてしまった後、少し経ってから彼の友人が電話をかけてきてくれて、夕飯を一緒に食べることに。初対面ではなかったので、リラックスしてお会いすると色んな話をしてくれました。「Sちゃんと彼は、結婚すると思っていたから、なんだか俺もショックでさ。」「甘えるのが下手だし、まだまだ私は子供にしか見えなかったんだろうなって。」「最初にSちゃんを紹介された時、この子はこの先どんな女性になっていくんだろうって楽しみで仕方がなかったよ。そんな姿を友達として見せてもらえることが嬉しかった。傷ってさ、磨いた分だけ原石よりも輝いていくよ。自分の手で磨くことに意味があるって思う。アイツは、Sちゃんに色んな経験をしてほしいから別れを告げたんだと思っているよ。転がった分だけ傷は増えるよ。でも、それをそのままにするんじゃなくて、向き合って自分でどうにかしたいって思う人は、魅力のある人になっていくんだと思う。だからSちゃん、沢山経験して、いっぱい磨け。もっともっと輝くから。そんなあなたを想像しているよ。会えて良かった。」失恋に打ちひしがれて会わないのではなく、立ち上がり始めていた私を応援してくれました。その友達は、今の私を見て何を思ってくれるだろう。まだまだ。今こそ、磨く絶好のチャンスだと笑ってくれるかな。雇われ店長だった元恋人、自分のお店を持ちたいと語ってくれた彼は、美味しい洋食屋さんの夢を叶えられただろうか。コロナ禍でも、腕を磨き、お客様に寄り添い、賑わってくれていたなら。「S、耳の不自由なお客さんが今日来たんだよ。俺、挨拶ぐらいでも手話を学びたいって思った。」せっかく来てくれたお客様とうまくコミュニケーションが取れなかったことを残念がっていた彼、そんな後ろ姿をいつも見ていました。いい女の条件って何？まだ分からないから、簡単に答えを見つけたくないから、これから先も探し続けることにする。歩みを止めるな、彼や彼の友達の声が聞こえてくる。