楽しいを紡ぐ

今日は待ちに待った遠足。2年連続コロナの影響でバス移動はなく、市内の散策だったので、息子はずっと楽しみにしていました。「ママ、天気は大丈夫?」「晴れそうだよ。良かったね!」そんな会話を何度繰り返したことか。そして、前日に持ち物の確認をして、日本シリーズ第3戦を観ることに。すると、画面の右上を見てひと言。「ヤクルトいっしょういっぷんって何?」「一勝一分(いっしょういちわけ)だよ。この間の試合引き分けに終わったでしょ。5時間3分の熱戦、最後まで観ていた試合のことだよ。」「ああ、そういうことか。ボク、いっぷんってなんだろうなって不思議に思っていたんだよ。」ちょっと天然な所まで似てしまったのか?!と思いながら二人でわいわい。明日は遠足だから最後まで観ていたらだめだよと強制的に寝る準備へ。つば九郎とつばみちゃんのマスコットを握りしめ、お約束のハイタッチ。寝かしつけたものの、試合が気になり何度も起きてきてしまい、10時過ぎにようやく寝てくれました。翌日、大きなリュックにお弁当を詰めて、満面の笑みで学校へ。バスに乗ってクラスのお友達と遠方へ行くということが、こんなにも大きなことだったのだと息子から改めて教えてもらったようでした。いい一日にしておいで。

遠足といえば、岐阜の小学校にいた時、親子遠足があり、どういう話の流れなのか父が行ってくれることになり本気で驚きました。ラフな格好をして、クラスのみんなでバスに乗り、いざ出発。とても気持ちのいい山の上に着き、パラグライダーの方達が飛ぶところだったので、大勢のギャラリーに囲まれ、緊張しながら飛んでいく姿に大歓声。見える景色も、広がるあたたかさも、本当に気持ちのいいものでした。そして、お弁当の時間が。その日は、お父さん率も高く、和気あいあいとした雰囲気の中、みんなでなんとなく円になり、賑やかにランチタイムが始まりました。その中には、銀行の社宅で一緒の父の上司もいて、天敵のはずが今日はいい感じでほっ。すると、一人のお父さんが、魔法瓶にお酒をこっそり入れてきたらしく、それを知った父も大笑い。そして、どさくさに紛れて父も少しもらい、他のお父さん達とまさかの酒盛りが始まってしまいました。それを見て、父の上司の子供であるY君とも目を合わせ、笑ってしまって。先生達も気づかないふりをしてくれ、今では考えられない週末の遠足の珍事件でした。その後、顔が赤くなり、すっかり高揚した父とみんなで山の美味しいお水を汲みにお散歩。水飲んでも簡単には酔いが醒めないし!と心の中で思いながらも、冷たい水の美味しさに二人で感動。それからも終始和やかな雰囲気でバスに乗り、ほろ酔い気分の父と帰宅。家で待っていた母に状況をぶちまけると大爆笑。「誰のお父さんか分からないんだけど、水筒にお酒を入れて持ってきている人がいて、うちのお父さんやY君のお父さんももらって、酒盛りが始まっちゃったの。恥ずかしかった!」「いやあ、楽しかったな。あのお酒、結構強くってさ~。」と父。アルコール度数の問題ではない。冷ややかに見ている娘と陽気な父との温度差が余計に面白かったのか、意外な展開の遠足に母もずっと笑っていました。
翌週、学校へ行くと、「Sのお父さん面白いな!」とクラスの男子に茶化される始末。茹でだこみたいになって他のお父さん達と盛り上がっていたら、そりゃ目立つでしょうよ。その後、Y君と一緒に帰宅。「お父さんと遠足だから、どうなるかなって思っていたんだけど、お弁当の時間に誰かのお父さんにお酒をもらって、まさかの酒盛りだったよね。あり得ないでしょ!」と呆れながら私が言うので、隣で大爆笑。「僕もびっくりしたんだけど、楽しかったね!」彼のこんなポジティブな所にいつも助けられていました。もうしょうがないなあと笑いながら帰った時間。岐阜の小学校へ転校になることが決まり、同じ社宅で同級生の男の子がいることが分かりました。その後、父の上司の子供だと気づいても偉そうな所は微塵もなく、いつも隣でにこにこしてくれていて。学校指定のランドセルがあることを知っても、彼は黒のランドセルを使っていたので、私も安心して赤のランドセルを使うことに。銀行員は3年で転勤、彼も私もまた愛知に戻ることになるだろうと思い、岐阜での生活を楽しもうとどこかで決めていました。そんなY君は一足先に転校。寂しさとありがとうが詰まった優しい別れでした。
何年も経ち、愛知の大学に進学。最寄り駅の駐輪場で彼の自転車を見つけ、父に進学先は知っているかをダメ元で聞くと、同じ大学に通っていることが分かりました。「そう言えば、バスでたまたま○○さんに会って、Y君もSと同じ大学だと分かったよ。学部は違うみたいだけど。」その話を聞き、本当に嬉しくて。緑の多いキャンパス、木の匂いを嗅ぐ度、岐阜での生活を思い出してくれているのではないか、学校指定ではないランドセルを二人で背負い、弱音を吐く私をいつも穏やかな表情で聞いてくれていた彼。同じキャンパスを歩いているのだと思うと、感無量でした。今は、どこかでパパをやっているだろうか。魔法瓶を見て、酒盛りの遠足を思い出してくれていたらいい。本当にいつの日か、名古屋市内で偶然会えたなら。

今年の夏休みの宿題は、都道府県の日本地図を覚えるというものがありました。行ったことのある地域には色を塗ってもいいということ。喜んで北海道に色を塗る息子の姿を見て嬉しくなりました。関東は大分制覇。そして、静岡を塗り、愛知を塗る時に伝えてくれて。「ここは、おじいちゃんが住んでいた所だね。」「お母さんもおばあちゃんも住んでいたよ。だからみんな中日ファン。」「ああ、そうか。」そう言って大盛り上がり。いつか、日本地図全部塗れたらいいね。色々な所に旅をして、いろんな空気を感じに行こう。楽しさで満たされたら、地図はきっとカラフルになる。いい人生を送ろう。きっと沢山の人達が応援してくれているから。