いきなりの朗報

夏休みのある日、『明日は何してる?』と母からメッセージが入り、何も予定がなかったのでそのまま伝えました。すると、思いがけない返信が。ヤクルト対横浜戦のチケットがあるから、明日二人で行く?というもので驚きました。少し前、花火大会が中止になり、がっかりしていた息子を知っていたので、なんだか嬉しくて、喜んで受け取ることにしました。母は、どうやら何かの会員になっているルートから、時々野球のチケットが送られてくるよう。中日戦は、父と二人で行っているので私の所に回ってくることはないだろうと思っていて。前にヤクルト対中日戦を両親が観に行った時、一塁側の内野席で、中日がタイムリーを打つと膝に手を叩き、「よしっ!」と周りはみんなヤクルトファンなのに父が一人で歓喜し、ちょっと恥ずかしかったと母が話してくれて、爆笑してしまいました。ドラキチは健在だな。そんなことを思い出しながら、息子にヤクルトの試合を誘うと喜んでくれて、当日の朝を迎えました。いつものようにヤクルトグッズを詰め込み、早めに出ようと思っていた矢先に、スコールのような雨。え?今日は雨で中止?と慌ててスマホから検索をかけると、神宮の周辺は降っていなかった模様。心配なので、レインコートをバッグに詰め、あっさり止んでくれた後、ほっとして息子と家を出ました。長い一日の始まり。

その後、気圧の変動でぐらぐらの状態だったので、電車の中で寝かせてもらい、ふと隣を見ると、私にしか聞こえない音量で息子が鼻歌を歌っていて微笑ましくなりました。本当に楽しみにしているんだなと。前回は、コロナの影響で急に試合が中止になってしまったからね。そんな純粋な気持ちが真っ直ぐ届き、心地よく揺られながら表参道の駅に到着。途中のファミマで食材を買い、ファミチキも二つゲットし、ヤクルトショップへ。私はピンクのバチを買い、前にはいたはずのコリラックマのマスコットが無くなっていて、息子が本気で凹んでしまい、宥めながら神宮球場まで向かいました。すると、すでにショップには行列のお客さんがいて、祈りながら並んでいると、ユニフォームを着たキイロイトリのマスコットを発見し、二人で歓喜。「コリラックマじゃないけどいた!!」とそこだけ3度ぐらい気温が上昇してしまい、大盛り上がり。「ボク、この子もほしかったんだよ~。」「良かったね!早く来て正解だった!」とご満悦で購入し、久しぶりの神宮のスタンドに入りました。何度来ても気持ちのいい空間、心が優しく凪いでいく。それから、練習風景を見ていると、村上選手がとってもいい表情をされていて、嬉しくなりました。いい手応えが体に染みついているんだろうな。その後も、つば九郎とつばみちゃん、レアキャラのトルクーヤが出てきてくれて二人で大喜び。つば九郎が画用紙を使って説明してくれた中に、5回の裏が終わると花火が上がることが分かり、泣きそうになりました。頑張っていると、思いがけない所からこんなプレゼントがもらえるのかな、この気持ちを持ってまた日々歩き出せるのかな、そんな喜びを幸せと呼んだりするのかな、いろんなことを思いました。夏の思い出が、神宮球場に残ってくれるなんて。大きな花が夜空に広がることを想像しただけで胸がいっぱいでした。

さてさて、プレイボール。その日は、小川投手で、早い段階で村上選手がホームランを打ってくれて、ヤクルトの応援傘が一気に開き、感激の時間でした。空中に大きく上がったボールが、スタンドインした時の大歓声は何度聞いても痺れて。「ママ、今日はヤクルトの傘が使えて良かったね。」そう言って隣で満足げな息子。大好きな選手が目の前でホームランを打ってくれたら、そりゃ嬉しいよね。今日も来て良かったな。そんなことを思っていると、随分前に母が話してくれた内容が急に思い出されました。「お父さんね、結婚式当日、高熱を出してしまったの。でも、遠方の方や銀行関係の方も来てくださることになっていたから、延期する訳にはいかなくて強行で式を行ってね。終始むすっとしていたんだけど、披露宴でお父さんがマイクを持って歌うことになって、『燃えよドラゴンズ!』を熱唱した時だけはご機嫌だったの。ひな壇でちょっと呆れてしまったわ。」と笑いながら話してくれたので、容易に想像ができてしまい、一緒に笑ってしまいました。さぞかし母もドン引きしただろうなと。それが、今となってはいい思い出。紆余曲折ありまくりの両親が、結婚式の話題で人を笑わせられるって、この人達の未来は明るいものであってくれたんじゃないかと、その『燃えよドラゴンズ!』は父と私をいつも繋げ、そして、プロ野球の観戦は息子にも繋がっていった。そのチケットを渡してくれたのは母。ね、ぐるっと一周したよ。直接返ってこないこともあるかもしれない、でもねお母さん、誰かに届けたら別の誰かが返してくれることもあってね、だから私達ずっと家族でいられたんじゃない?母に届けたい気持ちが浮かび、一塁側スタンドで胸が熱くなりました。試合はというと、途中から雨が降り出し、レインコートを着て観戦。1対2で負けている中、オスナ選手がソロホームランを打ってくれて、雨も吹き飛ぶほどの大歓声。応援傘が雨も凌いでくれて、ヤクルトファンのみんなで大盛り上がり。そして、5回が終わり、ライト側上空に綺麗な花火が何発も上がり、感極まりそうになりました。息子の目もキラキラしていて、最高の時間でした。「ママ、ボクね今年一番目の花火を神宮で見られると思っていなくて本当に嬉しい!」「お母さんも嬉しいよ~。Rと見られて感動した!!」そう言って余韻に浸りました。が、雨足が強くなり、切りのいいところで撤収。慌ててトイレに行くと、モニターから2ランを打たれてしまったことが分かったのですが、出たのが同点のタイミングだったので今日は同点ということにしておこうと都合のいい解釈をし、帰宅の途につきました。結果は3対4で惜敗。でも、元気なつば九郎に会えたこと、村上選手のアーチ、そして何より神宮の夜空に見えた花火で大満足の一日でした。

キイロイトリとくみちゃんを枕元に置き、眠りについた息子。いいお母さんでいられているかな、自問自答する毎日。スタンドに座っているとお姉さんがアイスを売っていることを息子が発見。サーティワンアイスのストロベリー味を買うと嬉しそうに食べ始め、「ママにもあげる!あーん。」と言って食べさせてくれました。「今日はママが赤ちゃんだね!」そう言って満面の笑みを見せてくれた彼の表情が、底なしの力をくれた日。すべての時間が、心の中に溢れていく。だから、書くことが無くなるなんてことはないのかもしれない。小さなストーリーがこうしてまた続いていく。