大事なことを残す

広報委員で同じクラスの友達から個別に連絡が入り、広報誌の運動会の冒頭文を考えてくれないかと言われました。彼女と仲良くなった頃、こちらの仕事を聞いてくれたので、前は司書をしていて今はライターとして活動していると正直に伝えると、パッと顔が明るくなりすごいテンションでひと言。「今度の広報誌、文章書きなよ!」「いやいや、私が書いているものはエッセイだから、ちょっとジャンルが違うんだよ~。」と言っても、すっかり喜んでくれて、その会話がずっと頭に残ってくれていたのか、後期の広報誌で依頼されたので書いてみることにしました。が、最後の一文で思いっきりさくらいろモードになってしまい、気が付くと先生達への感謝を綴っていました。Wordで友達のメールに添付し、素敵素敵~と言ってもらったものの、彼女も広報誌として若干の違和感を抱いてくれたので、視点を少し変えてみました。先生達と子供達との深いつながり、言葉に心を吹き込むことをどうしても忘れたくなくて届けた想いです。これで、校長先生チェックの時に赤で直されていたら、メンバーのみんなに慰めてもらうことにしよう。広報誌全体が暖房の流れの中で、たった一行がこたつだったらほっこりしてくれるかな。

そんなことを思っていたら、ふと思い出したのはある映像クリエイターさんとの出会いでした。プログラマーのMさんとも出会うことになった楽団の方達の中に、元トロンボーン奏者の方がいて、楽団をやめた後も映像を撮るために団員の方達と仲良くされていました。久しぶりに彼らと再会する前、クリエイターさんともSNSで繋がり、練習風景から撮影に入るので会えるのを楽しみにしていますという連絡が。当日、公共施設へ向かうと、みんなが温かく迎えてくれて、そんな場面から撮り始めるとは思わず驚きました。その後、指揮者の男性に、少しだけお時間を頂けないかとお願いし、皆さんの前で話し始めました。一年ぶりに再会できた喜び、その間、待機児童になり沢山悩んだこと、声をかけてもらった仕事は断念し、色んな思いの中にいたのでこうしてまた会えて嬉しかったと素直な気持ちを伝え、お礼に朗読をさせて頂きました。左斜め横から、彼がじっと私の映像を撮っている姿を感じ、楽器を持った皆さんが固唾をのんで聞いてくれている静けさで、胸がいっぱいに。読み終わり、大歓声に包まれた後、指揮者の方が伝えてくれました。「楽団をやっていて良かった!」と。それは、そこにいた皆さんの総意を言葉にしてくれたのだと思うと堪らない気持ちに包まれました。その後、クリエイターの方がドキュメンタリーのようなDVDにする為、演奏会までの尺の中で私の朗読などを編集するのに苦戦していることをSNS上で発見。『心を取るか、全体の編成を取るか』そんな中で、奥様に編集した映像を見せると、変な切り方をしているから内容がよく分からないとダメ出しをされたよう。素敵なご夫婦だなと思っていた数週間後、演奏会はやってきました。ものすごく広いホールに驚きながら、真ん中あたりの席に着こうとすると、クリエイターの彼がすでにスタンバイ。その後ろに女性が座っていたので、前を通らせてもらい、ひとつ席を空けて座りました。すると、横から視線が。もしかしてと思い、「○○さんの奥様ですか?」とご挨拶をするとにこやかに伝えてくれました。「はい。いつも主人がお世話になっております。○○さんですよね。映像で何度も見せてもらったので、初めて会った気がしなくて。」そう言って品のある奥様は笑ってくれました。映像が先だなんて、なんだか嬉しいな。演奏会は大盛況の末に終わり、後日クリエーターの彼からメッセージが。『○○さんが届けてくれた気持ちは、団員のみんなの励みになったと思います。自分達の演奏がどう感じてもらえているのか、それを言葉にしてもらえることは有難いことです。僕も編集する中で勉強になりました。ありがとう。』こちらの方こそありがとう。司書教諭の試験真っ只中の時、映像に関する問題も出てきました。彼に出会い、その仕事を間近で見せてもらい、どんな思いで撮影し、編集、保存をしていくのか。本当に伝えたいことは何なのか。テキストから飛び出した、生きた学びがそこにはありました。「皆さんが音楽の力を信じているように、私も言葉の力を信じています。」編集でばっさり切られたかもしれないけど、団員のみんなの心に残ってくれていたらいいなと思いました。それは今度、プログラマーのMさんに聞いてみることにしよう。まだ30代半ばの私の映像を彼が持っているなんて、本当に不思議なご縁。

さくらいろモードで書いたために、お蔵入りになった広報誌の一行。そのまま仮印刷に流していても、広報担当のT先生には気持ちが届いただろうなと思うと、それだけで十分だと嬉しくなりました。『こういった時期に届けてくれた先生達の心のこもった想いが、この先も沢山の人の胸に残りますように。』精一杯書いたから、ここに残しておく。