思い出の場所を渡す日

仙台二日目の夜、ホテルに帰り、寝る前になって急に息子の調子が悪くなってしまいました。「ママ、体が辛い・・・。」そう言ってベッドにぐったり。出る前、本当に何があるか分からないと思い、体温計を持参していました。「疲れがどっと出てしまったかもしれないね。ちょっと体温を測ってみるね。」そう伝え、ピピッと音がしたので見てみると36.5度の数値が。体温計を持ってきたのはもしかしたら一番のファインプレーだったかもしれないなと安堵しながら報告することに。「熱はなかったよ。環境も変わったし、今日は一日中外にいたから、ゆっくり休んで回復できるといいね。明日はRの調子次第で予定を決めるから、何も気にしないで寝てね。」起き上がったら吐き気に襲われる辛さ分かるよ、そう思いながら早めに就寝。ラスト仙台は優しさと共に。

翌朝、私も疲れていたのか深く眠れて、二晩連続旅先での爆睡はミラクルだなと思いながら、息子を起こしました。「起き上がれる?」「うん、寝たら良くなった。でも、バスに乗ったら酔ってしまうのが分かるから歩きなら大丈夫。」と言われ、ほっとしながらその日のスケジュールを考えることに。そして、最後のブッフェを楽しみ、お部屋のお片づけへ。たった三日間、でもやっぱり名残惜しいねと二人で写真を撮り、スーツケースを持ってフロントへ向かいました。男性のスタッフさんにせんだいメディアテークの場所まで、歩ける距離かを聞くとプリントアウトをして道を教えてくれて。そして、帰りは疲れてしまっても、途中の勾当台公園駅から仙台駅へ地下鉄が走っていることも教えてもらいとても有難くて。本当は、仙台駅から『るーぷる仙台』というレトロな循環バスに乗り、観光地を眺める予定でした。仙台の本を買った時、せんだいメディアテークの前にあるケヤキ並木がとても綺麗で、旭川の街を思い出し、息子と行こうと決めていました。でも、調子が崩れたのなら無理をさせる訳にはいかない、だったら行ける範囲まで歩こう、そう思い、スタッフさんにお礼を言ってスーツケースだけ預かってもらうことに。そして、息子と二人で目的地へ向かって歩き始めました。その日も暑い日、汗をかきながらゆっくり歩いていると息子がぽつり。「この街、旭川の雰囲気にも似ているよね。」その言葉を聞けて十分でした。彼はきっと気に入るだろう、その時前の旅行も思い出してくれるのではないか、最初に仙台の本を見た時漠然とそう感じました。木の匂い、覚えておいて。またどこかの瞬間に思い出すから。なんだかぐっときていると、一軒のホテルを通過しました。そこは数年前、母に息子を預け思い切って一人で行こうかと考えていたホテルでした。どうしても、復興した仙台に行ってみたかった、それでも本当に色々なことがあり、今年の夏も体調はいまいちでした。そんな中で来られたのは、息子がいてくれたから。本当にもしかしたら、彼が私をここまで連れてきてくれたのかもしれないなと。一緒に見たいと思った、その景色の中に二人こうして街に溶け込んでいることに胸がいっぱいでした。

そして、途中にあった勾当台公園、ここで一旦休憩しようと中に入るとお店を見つけ、かき氷を買って沢山の木に囲まれながら堪能しました。「目的地まで500mぐらい。歩ける?」「もう無理~。」「そうか。帰りのこともあるし、地下鉄で戻ろう。」そう伝え、勾当台公園駅からうっすら見えた並木道をカメラでカシャリ。いつかまた一人で来て『るーぷる仙台』に乗ろうか。涙が溢れてしまうかもしれない、その前に読者さん達が先に乗ってくれるかもしれない。それを思うと、自然と笑顔がこぼれ、並木道に背を向けました。この気持ちを誰かへとつなぐ。
その後、地下鉄に乗ると、仙台で乗り物を大分制覇したなと笑えてきて、あっさり仙台駅へ到着。食欲の出てきた息子と海鮮丼の美味しそうなお店の前まで行くと、すでに30分待ち。あ~今日は土曜日だった!と今さらカレンダーを思い出し、店員さんに名前を伝え、三軒目のスタバの旅へ付き合ってもらいました。とても綺麗な店内、いつかイートインできるといいなと思いながらまたバウムクーヘンをテイクアウトし、ミッション終了。そこでトイレに行きたくなったので、近くのベンチに息子を待たせ、急いで戻ると、楽天の球場でゲットした宝石と化石を嬉しそうに眺めていました。仙台のスタバをバックになんだかいい画だなとぐっときて。形に残る思い出が沢山できたね。そんな気持ちで声をかけ、早歩きで並んでいたお店に戻ると、新幹線の時間が迫っていて慌てました。ここにいられるのもあと2時間。すると、店員さんに名前を呼ばれ、明るい店内に入ることができました。自分が崩れる訳にはいかないとずっと気を張っていたからか、疲れがピークを超えていて、食欲が湧かず私はお子様ランチを頼むことに。息子は海鮮丼を嬉しそうに頬張り、こちらの食事も手伝ってくれて、なんだか急にわっとこみ上げて目が潤み始めてしまいました。ずっと来たかったんだよ、この街に。そこであなたとこうして一緒に歩き、仙台の方達と触れ合い、最後のご飯を食べられていることが幸せで。何か少しでも言葉を発したら涙がこぼれていまいそうで、何も言えませんでした。どうか、東北の方達が歩いてきた強さを忘れないでいて。心の中で息子に届けました。最後に堪能したのは海の幸、どれを取ってもいい時間でした。

さてさて、時計を見ると大慌て。急いでホテルまで戻り、スーツケースを受け取り、また仙台駅まで戻る途中で、駅舎をカシャリ。そんな余裕ないのにどうしても今の気持ちを撮っておきたくて。そして、慌ただしく『喜久福』の冷たいお餅と牛たん風味のかきの種を買い、新幹線乗り場までやってきました。すると、少し早く着くことができ、ベンチで深呼吸。最後に神様からのプレゼントなのか時が一瞬止まってくれたようで、目を閉じ街の空気をゆっくり吸い込みました。そして、やまびこが到着。息子と乗り込み、新幹線が動き出して。「仙台にバイバイしよう。」「仙台、バイバ~イ!」息子の声を聞き、また溢れそうでした。テーブルの上には、お買いものパンダと秋田犬のクリームとクラッチ、旅の仲間が増えたね。
仙台のみなさん、沢山の場面で優しさをありがとう。その気持ちを受け取り、また自分なりのやり方でこの想いを届けようと思います。がんばろう東北、こちらが応援しているようで私の方が励まされた三日間でした。そんな風に人は感じ合い、生きているのかもしれません。底力を教えてもらいました、その強さと勇気にありがとう。