いざ新宿へ

ようやく主治医のいる新宿の通院日がやってきました。以前、プログラマーのMさんにも先生を紹介すると、記事で感じる以上の医師だったと話してくれたことがあり、彼もすでに通っている病院でした。私の執筆力もまだまだだなと思いつつ、主治医の何とも言えないオーラは、会うことで感じられるものもあるんだなと嬉しくなって。そして、当日の朝、10時頃の電車に乗ったものの、立っている方も多く時差出勤が増えていることに驚きました。それでも、途中で座ることができ、新宿駅南口の改札で待ち合わせ。すでに診察を終えた彼が道案内をしてくれて、病院へ辿り着くことができました。長いこと待合室で待っていると、ようやく呼ばれ診察室へ。「お久しぶりです。」とこちらが言うと、微笑みながら先生が同じように返してくれました。優しいひととき、じんわりしました。その後、ちょっとした異変に気づいて。個室なのだけど、看護士さんが先生の後ろに座り、ずっと話を聞いていて。そう言えば、前の病院は完全に先生と二人で、音も消えるような不思議な空間の中にいて、まるでカウンセリングルームのようだったな、その部屋で自分の感情を吐露し、沢山の気持ちを先生が受け皿になってくれていたのだと改めて思いました。私が得意とするのは一対一。聞く方であっても、話す方であっても、目の前にいる人と向き合う時間が好きなのだと。誰かがいるだけで、自分はどこかで言葉を選んでいるのだと思いました。でも、婦人科では先生の後ろで看護士さん達が行ったり来たりされていたな。最初からその雰囲気に慣れていたから、先生とおばかな話ができていたのかと頭の中で繋がって。ということは、新しい病院でもその環境に慣れてしまって、看護士さんも時に巻き込んで話を聞いてもらおうと開き直ることにしました。そして、こちらが少し構えてしまったもう一つの要因は先生がネクタイを締めて、白衣を着ていたということ。前は、手術着のような青の半袖の病院服を真冬でも着ていたので、そのラフさに距離が縮まっていました。息子の小児科の先生は、いつもポロシャツ。パソコンの周辺には、アンパンマンの仲間達も沢山いて、いつも二人で和ませてもらっていて。心を開ける雰囲気を作ってもらえるって有難いことなのだと、なんだか嬉しくなりました。さてさて、診察は本当に久しぶりに腹部の触診があり、先生のゴッドハンドに泣きそうになって。手が冷たいのに、心がびっくりする程あたたかい先生のぬくもりが痛いはずの癒着部分に届き、不思議な力をもらったようでした。そして、6週に一度の診察が決まり、また電車に揺られて新宿のプチ旅の始まり。時間ができたら、都庁の展望台にでも行ってこようか。一人暮らしの時によく訪れた街、また20代の自分が持っていたエネルギーを思い出すかもしれない。

待ち合わせと言えば、整備士の男友達と東京駅で会おうということになった若かりし頃。八重洲口と八重洲北口を間違え、一向に会えず、ようやく自分の間違いに気づき彼と合流。散々笑われ、こちらも謝り、出口がやたらと多くて迷子になるといった私の話に二人でわいわいしながらお店の中へ入ったことが昨日のことのよう。彼は、中学からのマブダチK君の友達で、高校1年のクラスで合流。担任の先生がサッカー部顧問で、その先生の元でサッカー部に所属していました。同じクラスのもう一人の友達と彼が帰っている途中、すれ違ったので、話したこともないのに「さようなら」とこちらが声をかけると驚かれ、「あの子、同じクラスじゃね?」と男子二人の声が聞こえ、笑えてきて。その後、彼はひたむきに部活を続け、理系クラスに入り、航空専門学校へ。飛行機が好きなのは、ネネちゃんと同じだと思いました。高校の時から、自分というものを持っている人で、周りがどうこうではなく、こうありたいというのが明確で、その背中はどこか大人びていて、見習うことも多くて。そんな彼が、川崎で一人暮らしをし、整備士として頑張っていることを知り、まだ大学生だった私とたまに連絡を取り合うように。名古屋に帰省していることが分かった時、車で名古屋駅まで送るよという話になり、自宅までお迎えに行きました。すると、玄関の前までお母さんと妹さんが出てきていて、ものすごい笑顔で挨拶してくれるものだから、慌てながらもにっこりご挨拶。二人で車に乗り込んだ後、事情を聞くとすっかり彼女だと勘違いされてしまったよう。「二人が勝手に盛り上がっていたから、訂正するのも面倒になってそのまま。そうしたら玄関にまで出てきてしまったんだよ。」「え~!!ちゃんと訂正しておいてね。高校時代からの年季の入った女友達だって。それにしても妹さん、しっかりしているね。」「ああ、アイツ消防士を目指してる。」格好いい兄妹だな。お兄ちゃんの背中を見てきたからかもしれないよ、ちらっと助手席を向き、心の中で届けてみる。そして、名古屋駅に着きました。駐車し、そこでバイバイしようと思ったものの、なぜかその日は新幹線のドアが閉まるまで見送った方がいい気がして、入場券を買うことに。「そこまでしてもらっていいの?」と彼。「いいのいいの。時間があるから。」そう言って新幹線の前まで行きました。東京行きの新幹線が到着し、握手。「川崎で、一人で頑張るMを応援してる。」そう伝えると、その日一番の笑顔を見せてくれました。「ここまで見送ってくれてありがとな。こんな風にしてもらったの初めてだよ。Sも頑張れ!」そして、手を離し、新幹線に乗り込むとドアが閉まりました。透明のガラスから見えなくなるまで手を振ってくれた彼。その時、一瞬彼の寂しさと言うか脆さが垣間見えた気がしました。本当に気を張っていたんだろうなと。今思えば、あの時すでに人間関係で悩んでいたのかもしれない、もしそうだったとしたら新幹線乗り場まで見送ったのは正解だったのかも。ちっぽけなエネルギーだったかもしれないけど、彼に渡せて良かったと思いました。

駅、本当に色々なことがあるな。新宿からの帰りの電車の中で懐かしい時間の旅も待っていて。整備士を目指し、夢が叶い、そして悩んだ彼。航空会社で働いていた姉に話したら、整備士の資格を持っていたら、きっとまた活かされるって言っていたよ。ネネちゃんから、広い意味で同じ仲間だったのだとそんな気持ちを感じた。一緒に夢を見せてくれてありがとう。いつかまたこのおみやげを持って、どこかの駅で会おう。あなたの翼に私も助けられたのだと。