大事なタイムラグ

段々と暖かくなり、新宿までの通院も少し楽になってきました。実は、主治医の病院へ行ったのは秩父宮の三日前。先生と交わした会話を、ゆっくりと自分の中で整理する時間が必要だと思い、ずっとぐるぐる思考を巡らせていました。最近一緒に取り組んだ、息子の宿題。答えを出すのに、二通りのやり方を伝えました。どちらのやり方を選んでも、最終的に答えは同じになるから、自分が解きやすい方にすればいい、でも両方の解き方を知っておくことでこの先も柔軟に考えられるようになったりするからと。この時のやりとりが、自分に返ってくるなんてね。そんな不思議な、小さな小さなお話。

いつものように電車に揺られ、漢方内科へ。検温をし、待合室まで行くと前には何人もいて、今日は時間がかかるだろうとのんびり構えました。すると、40分程待ち、名前を呼ばれたので先生にご挨拶。なんだろう、先生今日は余裕ないな、珍しいなと直感で思いました。そして、最近の様子を聞かれたので、婦人科で別の漢方を薦められ、今飲んでいる漢方の一つと差し替えてみたらちょっと効いてくれましたと素直に話すと、思いっきり驚かれて。先生は、一般論で話をしない方、どんな時も私の様子や体質、変化を診て、それこそ患者さん一人一人のカスタマイズをしてくれていました。そんなこちらのことをよく知る先生が、今までにない程驚いていて、具体的な漢方名などを聞き、さらに質問が待っていてそれに答えることに。「随分前に先生に出して頂いた漢方で、その時はむくみが出てしまったから止めたものだったんです。でも、今回また婦人科の先生に出してもらい、とりあえず飲んでみたら少し楽になりました。」「・・・。あのね、差し替えた漢方と今飲んでいる漢方、全然違うものなんだよ。ちょっと漢方の専門医として色々聞きたいのだけど、具体的にどう効いたの?」「メンタルに効いた気がします。」「その漢方ね、体には効くけど、メンタルには全く効かないはずなんだよ。」と完全に意表を突かれた表情で、目を丸くされていて。とりあえず、いつものように触診をしてもらうことになり横になると、先生がぼそっと呟いてきました。「風が吹けば桶屋が儲かる・・・か。」意外なところに影響が及ぶことという意味で言ったのだろうけど、その表現が先生らしくて笑ってしまいそうに。「まあいいや。結果オーライだ。それでもやっぱり前の漢方が必要だと感じたら、次回伝えてね。両方飲んでも問題ないんだよ。なんで効いたんだろうね。」いつもより忙しそうにされていて、それでも抑えるところはきっちり抑えてくれて、どこまでも先生らしいなと嬉しくなった帰り道。どうやら主治医の頭の中にあるスーパーコンピュータの方程式に、私は当てはまらないらしい。メンタルに全く効かない漢方がなぜ心を軽くした?!それがとても謎だったようなので、もう一度落ち着いて、来た道を辿ってみました。年末、冷えと共に更年期症状が悪化し、婦人科の先生に伝えると、女性ホルモンの数値も低いことからホルモン補充の提案があり、3つの選択肢を用意されることに。消去法で、いろんな薬の兼ね合いで薬は削除、皮膚が弱いので貼付剤もなし、先生も注射が楽だと伝えてくれたのでそちらを選びました。すると翌日から吐き気とメンタル不調が一気に出て困惑。イベントの多いこの時期にまずいなと、なんとか自分を支え乗り切りました。一番引いてはいけないものをきっと引いてしまった、でもそれにより過去の辛さが一気に開くことに。そして、婦人科の先生に話すと、今度は前とは違う漢方を薦められ、伝えてくれました。「その漢方ね、婦人科系の手術をした人に効いたりするんだよ。○○さんにはこれがいいんじゃないかな。」先生、魔法の言葉を最後にかけてくれていたな、プラセボ効果?!二つある漢方のうち、一つはメンタルにもフィジカルにも効くけど、胃腸に副作用が出て撃沈した数年前。もう一つは漢方内科の主治医によるとフィジカルにしか効かないらしい。でも、婦人科の先生が伝えてくれた言葉が自分の中に残り、巡り巡って押し上げてくれた気がしました。なぜ?その答えは、信頼しているから。何か人の持つ力が、化学反応を起こしてくれたのかなとそう感じています。

勇気を出して母と距離を取った30代半ば、ネネちゃんに言われたことがありました。「Sちんさ、一回催眠療法でも受けてきなよ。きっと強引に消した過去も沢山眠っていると思うんだ。でもそれは完全に消えた訳じゃないから、一度全部出してあげた方がもっと楽に生きられるんじゃないかと思うんだよ。ずっとお母さんを支えてきて、沢山辛い思いをして、上がってきている記憶が全てじゃないと思っているよ。そんなもんじゃない、Sが受けてきたものは。私には分かるから。」何度もDelateボタンを押した、それはSちんが生きていくためには必要なボタンであったこと知ってるよ。ネネちゃんが伝えてくれようとしていたのは、こういった気持ちだったのだろうと。ホルモン注射で一気に出た、とても苦しい時間だったけど、思い出してもいい時機に出たんだろうなとも思う。そして、アフターケアの漢方がなぜかこのタイミングで効き始めた。そうしたら、これまでの過去を全肯定したくなった、自分を助けてくれた人、一体どれだけいただろうと思う。削除した前後の記憶までごっそり抜け落ちていることもあって、そこにあった原石を拾いに行かなくては。自分だけのブレイブストーリー、完成させよう。