優しい再会

また分散参観日がやってきました。前日、息子が書いてきた連絡帳を見てみると、教科は社会だと分かり、ガッツポーズ。「お母さん、この教科が一番見たかったんだよ~。」と言うと、意外な返事が。「ボク、あまり社会嬉しくないんだよ。」「なんで?」「持ち物が多くて重いから。」内容じゃなくて、重さの問題かい!とこれまた二人でワイワイ。地図帳や資料集、教科書だけじゃものから沢山の発見があるよ、その面白さに気づいてくれたらいいな、そんなことを思いながら必ず行くねと約束をして宿題タイムへ。どんな体調でも絶対に行くよ。

そして翌朝、「学校でね!」とお見送りをし、予定よりも早めに着いて廊下で待っていると、とことことやってきて挨拶をしてくれたのは、2年生の時の担任T先生でした。お忙しいかと思い、こちらも挨拶だけにしようと思ったら、立ち止まって話しかけて頂き、いろんな思いが一気に駆け巡ってきて。卵巣がんの疑いが出て入院することになり、卵巣を一個摘出する話を電話でした時は、絶句されてしまいました。こちらが毅然と話せば話す程、母親であろうとする強い気持ちを感じ取ってくれた先生は、逆に心配をしてくださっているようで。そして、退院後、鉛のように重たかった体がいうことをきいてくれず、数日経ってから電話をかけると、無事に退院したことを息子から聞いてくれていました。学校の様子を事細かに話してくれた時、入院中の空白が埋まっていくようで、こんな風に学校や社会に守られ育っていくのだと、堪らない気持ちに。「まだ薬物療法が続くのであれば、3年生になる担任にも僕から伝えておくのもひとつかなと思っているのですが、お母さんとしてはどうですか。」ちょっと考えさせてくださいと言い、結局T先生の中に留めてもらいました。手術をしたこと、それはもう私の中で過去のこと、だから未来を見たいと願ったその当時の思いが、先生と再会したことでわっと蘇り溢れそうでした。「先生、今度は広報委員としてよろしくお願いします。」そう言って、お互い改めてご挨拶。色々な方面からいろんな話をざっくりすると、こちらの意図に少しだけ気づいてくれたような気がして。クラス単位ではなく、学校単位で沢山の子供達を救ってください。変化球を投げたつもりでも、先生の心にふわっと届いてくれたようでした。担任を持たずに違うポジションに就いてくれた先生、司書として伝えた視点をきっと大切にしてくれている。

そんな気持ちのいいお別れの後、始まった社会の授業。待ってました!社会科の教員免許を取った時、自分の子供の社会の授業を見る時があるのかなとぼんやり思ったことがあり、こんなに早く実現できるとは思わず、後ろに立ちこっそり感激。そして、女の先生がパソコンを操作し、大きなテレビ画面に地図記号を映し出していて驚きました。欧米人の先生の英語の授業だけじゃなかったんだ。その後、どんどん出てくる地図記号を見ていたら、大学在学中に受けた地理のテストを思い出して。『○○について説明せよ』という問題がいくつかあった後、最後に出てきたのは地図記号4問ほど。明らかなサービス問題だったのですが、意外と苦戦してしまったことが懐かしくなりました。まさか、小学3年生の社会科で出てくる内容が、大学の試験にも出てくるなんてねと微笑ましくなって。工場の地図記号が、子供の頃、太陽マークだと思っていたと先生がみんなに伝えていて、あるあると思い一緒に大笑い。地図帳に太陽がいっぱいあったら面白いね。それから、新しい地図記号を考えてみよう!という時間の中で、みんなの見事な発想に胸が高鳴りました。正解がないっていいな。発表するいくつものチャンスも、息子は少し控えめな様子。周りが手を挙げていて、不安そうな表情が垣間見えながらも、彼のペースを大切にしてほしいと心から思いました。焦らなくていい、大丈夫。

その後、あっという間に授業は終わり、息子に手を振ると意外にも近づいてきてくれました。「ボクが作った写真立てだよ。」と廊下の作品を指し、「お母さんね、写真を撮っておいたよ。上手にできたね。」と伝えると、はにかんでくれて。あなたの個性を大事にするよ、そんなことを思いながらお別れ。今日もいい時間だったな、余韻に浸りながら下駄箱に行くとまたT先生と偶然合流。「授業どうでした?」「社会の授業でもパソコンを使うと思っていなくて、ハイテクで驚きました。」「授業内容にもよるんですけど、黒板とも組み合わせて利用するようにしているんです。」なるほど~と嬉しくなりながら、最後に伝えました。「もうすぐ先生の所に、広報誌の仮印刷が届くかもしれないので、チェックをお願いします。」「広報のお仕事、本当に大変だと思うんです。ありがとうございます。」と深々と頭を下げてくれて。「いえいえ。よろしくお願いします。」そう言ってお互いが敬意を払い、お別れ。先生、お会いできて良かった。またこのような形で一緒に一つの物を作り上げることができて良かった。休校中から進行していたであろう卵巣の異変、何かおかしいと思いながらもやり過ごし、学校が再開され、親子で不安を抱えながらも待っていてくれた先生の存在に助けられた数々の時間。お礼に届けた朗読、先生の心の中に残ってくれていたらいい。