今このとき

このタイミングでパソコンが開きたい、そう思ってもなかなか開けないここ一か月程。時間が経ち、自分の中で気持ちが薄れる前に、そう願いながら書き出した今日、伝わるかな、伝わるといいな。

息子が元気に学校へ行った先月の貴重な登校日。ランドセルには、クリアファイルに入れた伝言板の返事と、息子の手紙が入っていました。「いい?これは、どんなことがあっても絶対に先生に渡してね。忘れてきたらダメだよ。Rがもう先生に会えないかもしれないと思いながら書いた手紙だから。その気持ちを届けてね。」「うん。ボクきちんと渡すよ。」そう約束し、見送った日。まだ学校に残っていたピアニカやお道具箱を抱えて帰ってきた息子は、皆に会えた喜びよりも、荷物の多さにへとへとになっていて。「ただいま~、めっちゃ疲れた。」そのひと言に大笑い。正直でよろしい。ミッション成功を聞き、この日に合わせて息子を風邪ひかせないようにと万全の態勢でいたので、なんだかどっと疲れてしまいました。良かった。これで、終了式を待つばかり。

そして、終了式当日、ランドセルを背負った息子に伝えました。「本当ならね、Rが学校を初めて休んだ日が1年1組の最後の日だったんだよ。でも先生達が登校日と終了式を短時間だけやってくれることになったの。今日という日を大切にしてね。2年生もクラスがまた同じ子もいるけど、離れてしまう子もいる。このクラスでは本当に最後だよ。だから仲のいいお友達とは話しておいで。そして、先生にはありがとうございましたと伝えてくるんだよ。さあ、いってらっしゃい。」「うん。いってきます。ママ、おうちにいてね。絶対だよ。」「はいはい。」いつもの日常が、こんなにも愛おしい。バルコニーに出て、息子が振り向くそのタイミングで手を振ってみる。母親の役割は、果てしないけどいつか終わりが来るんだよね。手を振った笑顔も見えたよ、いい一日にしておいで。

そんな余韻に浸っている暇はなく、洗濯をし、掃除をし、パソコンを開け、編集作業をしていたらあっさり、ピンポン。終了式は体育館ではなく、各教室で放送を聞くという配慮を学校側がしてくれていたので、11時過ぎには帰宅。「先生にありがとうございましたって伝えられたよ。」「良かったね。」そう微笑みながら、一緒にランドセルを開けると、伝言板を見つけました。そっと開けると、息子に宛てたお手紙がひらり。感極まりながら、「先生からのお手紙だよ。」そう言って渡すと、嬉しそうに受け取り、自分の部屋に持って行ってしまいました。それがどれだけの優しさと愛情に包まれた手紙だったのか、息子が気づいていた証拠。一人で噛み締めたかったんだよね。先生と二人の時間を感じたかったんだよね。そんなことを思っていたら、照れながら出てきて、ママ読んでと渡してきました。これは、今までで一番難しい朗読だな。先生のトーンで、どれだけの温もりを乗せられるかな。『お手がみありがとう。Rくんは、いつもおはなしをちゃんときいて、おべんきょうもさいごまでいっしょうけんめいがんばっていましたね。うんどうがとくいだね。これから、とくいなことをますますのばしていってね。やきゅうもがんばってね。先生もRくんのことが大すきです。これからもおうえんしています。』溢れそうになる涙を堪えて読んだ先生からの手紙。「ボク、この手紙ずっと取っておくよ。死ぬまで取っておく。」そう言って大切に自分の机にしまった姿を見て、息子の1年生が終わったのだと思いました。忘れられない1日だったはず。ありがとうが、こんなにも愛を持って返ってきた日。

そして、そっと開けた伝言板にはもう最後だと思っていた先生からのメッセージが添えられていました。『こちらこそ、お母様の温かいお言葉にいつも励まされていました。Rくんが優しく穏やかなのは、お母様のおかげですね。私の方こそ、一年間本当にありがとうございました。』この言葉があれば頑張れる。自分が挫けそうな時、こんな言葉に助けられるのだと、沢山の想いが押し寄せた時、息子のお腹空いたという声が。まだまだ夜まで長いね、そう苦笑したひととき。

そして、何日も経ち、在宅勤務にはなっていない夫が、週末家にいてくれたタイミングで、息子の部屋で開いたパソコン。先生の気持ちがこみ上げ、一人になって大泣きした時間。誰が大変、そういうことではなくて、皆が大変なのだと、それでもそれぞれの想いを抱え、乗り切ろうとしているのだと、だから書くことを止めたらいけない。たった一人でも、今このときのご自身にそっと微笑んでくれたなら。