どう思う?

まだ誰も来ていない、陽射しが気持ちよく差し込んだシェアオフィス。そこで、ダンディな施設長のスタッフさんが声をかけてくれました。「利用者の方のアンケートを取っているので、お時間のある時にExcelに記入して頂いてもいいですか?」と。喜んでメールを待っていると、なかなか面白い質問まで入っていました。好きなことという欄には、野球、ラグビー観戦、カフェ、音楽鑑賞、読書。他にもあるのだけど、枠からはみ出してしまうのでこれで集約。そう言えば、小学校図書室の面接の際、履歴書の特技にキャッチボールと書いたら、校長先生と教頭先生に笑われたことを思い出しました。「男の先生達、休み時間にたまにやっているよ。混ぜてもらったら?」なんて言われ、これが採用のサインだったのか、すっかり場が和んだことが懐かしいです。

できればオフィス利用のインタビューに応えてほしいという欄があったのですが、息子の夏休みと日程が丸被りだったので、そこはお断りをさせて頂きました。司書だった私がエッセイの執筆をしている、その活動拠点がシェアオフィスということでスタッフさん達も興味を抱いてくださっているよう。感想、今思うこと、利用してみてどうなのか、1時間と言わずにいくらでも語りますよ、そんな気持ちをExcelに載せて返信。一つの意見でいい循環が生まれること、それはどんな場面でも望んでいることです。
休校中に助けてくれた、不動産関係の資格取得勉強中のHさん。思いがけず試験の日程が早まっていたようで、慌てて勉強をしていると話してくれました。「もっと後ろにずれると思っていたので、モチベーションが下がっている中で急がないといけなくて、それがきついです。」と弱音を吐いてくれました。そして、昨日受付の前に置いてある椅子にちょこんと座っている彼を見かけたので、思わず、「面接ですか?」と声をかけると大爆笑。「違いますよ~。今スタッフさんを待っているだけです~。」と二人で大盛り上がり。こんな緩んだ時間が、休校中のお礼になるのかはわからないけど、ほんの一瞬でも和んでもらえたら。どこでエネルギーに変えられるかはその人次第、でも、頑張れっていう気持ちは届けたい。

父と行ったナゴヤ球場のナイター。沢山の紙吹雪を作ってライト側スタンドに座りました。あれは、小学校6年生ぐらいだっただろうか。まだ日が沈む前で、西日がきつく、うちわで陽射しをよけながら試合前の練習風景を見ていました。リラックスした選手達の表情がとても好きで、緩やかなウォーミングアップをライトのあたりでやってくれることが嬉しくて。そして、プレイボール。一気に緊張感高まる試合展開で、2点差で負けたまま9回の裏。ランナー2人。最終回にランナーが出てくれたことだけで、ボルテージは最高潮。バッターボックスに立った選手は妙に落ち着いていて、誰もが手を合わせ、息を呑みました。その時、ものすごい円を描きライト側スタンドに入っていくボールが見えて、それが夢なのか現実なのかよく分からなくなっていると、ものすごい歓声に包まれ、隣にいた父が、「S、紙吹雪無いのか!」と興奮状態。「え?もう全部使っちゃった!」と話すと、いつもは冷静な父が、下に落ちていた紙吹雪を集め、それを投げて大盛り上がり。お父さんそんなキャラだったっけ?と唖然としていると、ライト側スタンド皆で「ばんざ~い」の嵐。ああ、さよならホームラン、勝ったんだ!!前の方とも後ろの方ともハイタッチして、もみくちゃになりながら、喜びを分かち合いました。「最後の最後まで何があるか分からないな~、いや~痺れる試合だったな。」父が満面の笑みで喜びを伝えてくれたその感動は、子供心にも嬉しく、そんな時間を共有できたことは、この先も忘れることはないだろうと思いました。ホームランバッターの大豊選手、私の中では隠れたヒーローです。

試合前にグッズを買いに行くことが好きで、お店屋さんを物色。メガホンは持っていたので、どれにしようかと迷っていると目に留まったのは、選手名鑑。小さな冊子に12球団の選手の情報が載っていて、毎年買っていました。活躍した年とそうじゃなかった年、それで年俸に大きく影響してくる、そんなことまでも記録されているプロ野球の難しさを知りました。「お父さん、この選手他のチームに移籍したんだね。知らなかったよ。」冊子を片手に父に説明すると、それを聞いていた近くの酔っぱらったおじさんが私にひと言。「ねえちゃん、他の球団は関係ない!中日応援せないかん!」と叫ばれ、そこにいたみんなが大笑い。そんな近さと温かさが、なんだか恋しいです。

なんで野球が好きなの?この質問をされる度に返答に困る。だって、何を取っても一つ一つの思い出が優しすぎるから。その記憶が、苦しい時自分の助けになってくれたから。そして、さよならホームランの歓喜を肌で感じたから。一球の失投と、一球のアーチ。どう思う?