母に以前会った時、お誕生日特典で和食のお店からクーポンが届いているから、一緒に行ってくれないかと頼まれたことがありました。場所を聞くと自転車で行ける距離だったので、短時間だけならまあいいかと引き受けることに。待ち合わせの数日前、息子におばあちゃんからメッセージは来ていないかと2回程聞いたものの、ないよと言われたので若干の違和感の中で直接向かうことにしました。LINEは、母からの連絡を敢えて読めないように設定していて。理由は2つ、間口を広げてしまうとまたどどっと土石流のように1日10回など連絡がきて、こちらの負担が増える可能性を考えて。そしてもう1つは、母の精神的自立を応援しているから。父と3人のグループLINEは開けてあるので、そこまでの不都合はなく、母との最小限のやりとりは息子にお願いしていました。それが彼の負担になってもいけないので、今は期間限定で様子を見ている状態。そんなこんなで、約束していた時間にお店へ向かいました。接待ランチだなと思いながら、雰囲気の良い店内の待ち合わせ用の椅子に座っていると、時間になっても母は来ず。やはり何かあったのだろうとグループLINEに連絡を入れると、彼女から電話がかかってきました。「Rから聞いていない?数日前に帯状疱疹になっちゃって今日は行けないと伝言をお願いしておいたの。」「え~、大丈夫?聞いていないからお店にいて、今から様子を見に行くよ。」そう伝えると、案の定マシンガントークが始まったので、とりあえず行ってから話を聞くねと電話を切り、カツサンドを途中で二つ買いマンションへ向かいました。全てが予想通りの答え合わせの一日。人の心理って奥が深くて、やっぱり興味深いな。
玄関からリビングに入ると、パジャマ姿の母と大してコミュニケーションを取っていないであろうと思われる父がソファに座っていました。「お邪魔します。お母さん大丈夫?昼ごはん食べた?」「食欲ないの。朝ごはんが遅かったのもあるんだけど。」「お父さんは食べた?」「おう。」なんだかこの人達って相変わらずだなと笑いを堪えながら、手を洗い、仏壇に手を合わせ、話を聞きながら買ってきたカツサンドを食べることに。なぜ二つだったかというと、二人が食べていないなら一つずつ渡そうと思って、そして、母が食欲ないと言っても私が食べていたら食欲が湧くような気がして。一つを食べ終え、ごちそうさまをすると伝えてきました。「もし食べないなら、もらってもいい?」ビンゴ!と思いつつ、喜んで譲ることに。そして、息子に何度かおばあちゃんから連絡なかったか聞いてもなかったという返事で、花粉症で辛い時期だから仕方がないねと伝えると、母が若干驚いていて。「どうしてSは私から連絡したかもしれないと分かっていたの?」と。待ち合わせの時などウキウキで何かしらの事前連絡があるのが母のパターンなんだよ、それがないことに逆に違和感だったから、病気だと聞いて納得ということは言葉にせず。「いやあ、なんとなく。」と答えると、あなたって鋭いわね等々言われ、父に頼まれていたパソコン関係の設定を始めました。どうやら、新しくパソコンを買ったものの、うまくプリンタに繋げられないらしい。苦戦しながら、こちらも試している中で、なんだか父がうずうずしているようだったので聞いてみました。「お父さん、出かける用事だった?」「動かないと太るからなあ。」と父。「いつもの日課よ。」と母。ああ、パチンコ&ポケモンGOねと半分呆れながら伝えることに。「設定はやっておくから出かけていいよ!」そう言うと、「すんまへん。」と言いながらささっと出るので吹き出しそうになりました。その時姉の声が聞こえて。「Sちんはお父さんに甘い!Sがお父さんの代わりに引き受けたこと、山程あるよ。お母さんのこともおじいちゃんのことも。お父さんさえしっかりしていたら、Sちんはここまで傷つかなくて済んだ。盾になってほしかったって思うこと、沢山あったんじゃない?でもSはそんなお父さんのこともいっぱい許してきた。なんでだろうね。」母と距離を取った10年近く前、勇気を出してカウンセリングのドアを叩くと、若い男の先生がこちらの話を聞いた上で何度か尋ねてくれました。その時どう思いましたか?と。「辛かった、何か自分に非が1%でもあるなら教えてほしかったです。」そうやってマイナスの感情を伝えた後、最後に、でもみんなの気持ちも分かるからと話すと臨床心理士の先生は言ってくれました。「ここはあなたと私二人だけの空間です。ご家族の気持ちではなく、あなただけの気持ちを聞かせてください。」私だけの気持ち・・・そう言われた時、一旦思考が停止し、いろんな思いがこみ上げ、そして気づきました。自分だけの気持ちなんて、考えてきたことなかったと。そのことに気づかせてもらえたこと、それは本当に大きなことでした。きっと私は、優先順位も割合も間違えていた。英語で言ったら一人称から学ぶ。Iからのスタートだ。本当の自分の気持ちを真ん中に持ってこよう、そう思いました。去年学んだのは心理関係のちょっとした資格、いろんな角度から知識を繋ぎ合わせたので、それが母とのコミュニケーションを円滑にしてくれたよう。何より自分のために、そして周りにいてくれる人達のために。
プリンタの設定はなんとか上手くいき、母が検診のweb問診をやってほしいと言うので引き受けることに。「お父さんには頼みづらくて。」その言葉を聞き、心の中で分かるよと呟きました。父は鬱陶しそうにする、そんなことも分からないのかとばかにする、そんな思いをするぐらいならなんとかSに会えた時にとチャンスを待っていたのが分かって。厳格な祖父に育てられ、上から目線の父と結婚生活を送り、母の心は壊れていった。父は父で銀行に揉まれ、養子という立場でほっとできる場所はなかった。そんな彼らをずっと見て、応援してきて、どいつもこいつもしょうがねえなと思いながら、シンプルに二人のことが好きなんだろうなと。父は前立腺がんを患い、おそらく男性ホルモンに影響してしまい、そのイライラを母にぶつけている可能性も。これも、私自身が卵巣を摘出し、女性ホルモンに振り回されてきたから分かったこと。両親の洗濯物を畳み、アイロンがけをして、母に笑顔が戻り、忙しい中でも来られて良かったと思いました。その後、慌てて買い物へ行き、夕飯を準備した後に息子が帰宅。「おばあちゃんから連絡来ていた?」「うん。来ていたよ。」涼しい顔で言う彼にずっこけた時間。大切なものが沢山ある。そのことに気づかせてもらえただけで十分なのかもしれない。