真ん中に戻す

新年度が始まり、学校で書いた息子の自己紹介カードを改めて見てみると、面白い間違いに気づいてしまいました。がんばりたいことの欄には『いっぱいとも友も作ってみたいです。』、ん?とも友?!友だちの間違いじゃないか?ママ友?類友?いいとも!と訳の分からないことがぐるぐるしてしまい、笑ってしまいました。息子よ、大丈夫か。とも友作れるように頑張れ!

久しぶりに出向いた主治医の病院。めまいが酷かったので、車の運転を控えていたのですが、集中力を高めて行ってきました。相変わらずの不調を心配してくれた先生からの提案で、思い切って前の漢方に戻すことに。今飲んでいる薬の副作用である更年期症状を抑えるための漢方が、合わなくなっている可能性を教えてくれました。初診の時から処方されていたその漢方は、ずっと自分を支えてくれていた訳で、この選択が明るい方へ向かうことを願うばかり。“吉と出るか凶と出るか”ではなく、“吉と出るか大吉と出るか”だったらいいよね。術後から始まった薬物療法によりメンタルも落ち込み、主治医に相談しました。すると、「婦人科の先生に話したら、安定剤を出されるかもしれないな。」と穏和に言われて。僕としては、できるだけ漢方で整ってくれたらと願っているんだよ、そんな気持ちが届き胸がいっぱいに。無痛分娩という選択肢があっても、その道に進まなかったのは出産の痛みを経験したかったから。その時と同じように、この際なので今の辛さをナチュラルに経験してみようと思います。そこから見えてくるものもきっとあるなんて、強がりを言っちゃったりして。

数えられない程夢の中で見た、誰かに追いかけられるという怖い夢。相手が分からず、ただ黒い影だけが見えていました。はっと飛び起き、汗をかき、また見てしまったかと情けなくなったことが何度あったことか。母とぐっと距離を取り、自分の気持ちが落ち着いた頃、その夢は見なくなりました。そうか、黒い影は母の心の一部だったんだ。そのことに気づいた時、説明のできない何とも言えない気持ちが駆け巡りました。そして明確なのは、母そのものではなく、母の心の中にあった黒いものにずっと怯えていたんだろうなと。覚悟を持って再会した母の手術前、沢山の気持ちが交錯する中で介護をし、退院後に伝えました。「お母さんがどうしようもなく不安を抱いたりすると、訳の分からない状態で私にぶつけてきていたの。あまり覚えていないのなら仕方がないと思っているよ。ただね、私の中に辛さは残ってしまっていて、そのことを消化するのに時間がかかるんだ。そのことは分かってもらえたらと思うよ。」すると案の定泣かれてしまいました。そんなつもりはなかった、でもごめんなさい、何を言ったか覚えていないの。母の中で沢山の気持ちが渦巻き、それでも一生懸命こちらの投げた球を受け止めようとしてくれたのを感じました。許すこと、簡単じゃないけど、もしかしたらずっと前から母のことを許していたのかもしれないなとも思い、自分に笑ってしまいました。親子関係の難しさ、しなくてもいい苦労はいっぱいあったのだろうけど、ひとつだけ見えていたものがあった。そう、真っ黒に染まってしまいそうな母の心の一部分は、ずっと純粋だったということ。それを守る為に、頑張りたかったんだ。

姉と私、二人姉妹のはずが、本当は三人目がいました。祖父の葬儀の後、落ち着いた頃、家族会議でその事実をみんなに伝えると、本気でびっくりされて。「なんでSが知ってるの?めちゃくちゃ小さかったはず。私は両親の会話でそのことに気づいたけど、あんたには黙っていたんだよ。」と姉が驚きながら伝えてくれました。もっと驚いていたのはもちろんうちの両親だった訳で。「誰かから聞いた訳でもないの。でも知っていた。そして、その子はきっと男の子だったと思う。いろんな家庭の事情や夫婦のことだから、産まなかったことをどうこう言うつもりはないよ。ただ、うちに男の子が一人いてくれたら、お父さんはアウェイという気持ちが薄れ、我が家はもう少し違っていたんじゃないかと思ったの。お姉ちゃんも私の子供も男の子で、沢山のことを思ったよ。」そう話すと、みんなが絶句していました。小さい時から、この子はどれだけのことを感じてきたのだろう、誰もがそう思った瞬間でした。

祖母の乳がんが見つかったのは、私が生まれて間もなくのこと。その後の介護は大変なものでした。そんな中で授かった命。後日、姉が改めて伝えてくれました。「Sのすごさを今回目の当たりにした。言葉じゃないものからも、敏感に分かってしまっていたんだね。私はね、男の子がいたら、うちの両親の愛情はそっちに行っていたと思う。結果的に、これで良かったと思うんだ。Sがいてくれたからそれで十分。」姉のそんな言葉が堪らなくて。二人で沢山のことを乗り越えてきたね。「お姉ちゃん、私達どれだけ子供を産んでも、男の子だったかもよ。おそ松くんちみたいになっていたかも。」そう話すと一緒に笑ってくれました。出会うことのなかった、三人目。彼の分まで、精一杯生きるよ。