便利さに慣れなくていい

いつも見たいものがあった時は、DVDを借りに行っていたのですが、動画配信サービスの方が便利だと思い、初めて利用してみました。お店に行くまでの往復の時間もなく、パソコンに向かいクリックをするだけで、映像が出てきてちょっと驚きです。
ただ、この便利さに慣れすぎることのないように、息子が見たい時などは、現地で喧嘩をしながらレンタルをしたり、帰り道にアイスクリームを食べたり、そんな往復も楽しまないと。

我が家のDVDデッキは、恥ずかしながら再生専用。私が一人暮らしをしていた時に買ったもので、相当年季が入っているのですが、壊れるまで使う!の精神が未だに直らず、実際壊れないのでまだ使っています。その影響で、息子が見たい番組は録画できず、リアルタイムのみでの視聴なので、他の家庭よりも喧嘩率が高い訳です。そんなわがままな息子が、なぜか私が気に入っていた教育番組のオンマイウェイだけは、しっかり覚えてくれていて、午前の時間に変わってしまった今も、水曜日の3時半になると、「ママが好きな番組もうすぐだね!」と教えてくれます。何かを感じ取ってくれていたのかもしれないなと、はっとなる時があって。隣に座って、私の感動が伝わっていたのね。

小学校での勤務を終え、退職する日のこと。何か他の先生とは違うなと、少し壁を作っているような、一歩引いているような、多くを語らない30代の男の先生がわざわざ図書室まで入ってきて、私に挨拶をしに来てくれました。「何かを調べる時って、子供達はすぐにスマホやパソコンを使うようになっていくのかもしれないけど、先生が本を使って調べることを教えてくれて、本当に助かったよ。調べ学習、結構苦戦する時があるのだけど、ひと言のアドバイスで子供達は助かるんだなってよく分かった。僕ね、教員免許を通信教育で取得したんだよ。」
この先生が、どこかで虚勢を張っているように見えたのは、これかもしれないなと思いました。これはあくまでも私感でしかありませんが、私にはそう思えて、最後に腹を割って話してくれたことが堪らなく嬉しかった。

そして、その先生が図書室を出る時、振り向きざまに伝えてくれました。「先生さ、結婚するんだね。もしかしたら、子供も授かるかもしれないね。僕、あなたの未来が楽しみで仕方がないよ。」なんだか本当にこみ上げるものがあって、言葉にならずただ、半泣きしながらにっこり笑い、会釈をするだけで精一杯でした。私の感性が鋭いことを、その先生は気づいてくれていました。それは、言葉にしなくても分かるものでした。なぜなら、私とクールに接しながらも、授業で何度も子供達を連れて来てくれたから。そして、さりげなくこちらの様子を見ていることも知っていました。そんな暗黙のやりとりの中で、最後の最後で本心を話してくれたような気がして、僕ずっと見ていましたよと伝えてくれたような気がして、溢れそうでした。

司書教諭の資格を通信教育で取得しようと思わせてくれた、きっかけの一つだったのかもしれません。誰も何も教えてくれない中で、自分だけを信じて進もうとするのだけど、相当強い意志がないと難しいなと思う度に、その先生の努力はかなりのものだったのだと痛感させられました。よく分からないけど、勝手な仲間意識。そういった力が、ものすごい後押しになることを教えてくれた人です。
結婚し、子供を持ち、こうして伝え続ける私を先生はどう見てくれるだろう。
便利な中にいるけど、内面はもっと不器用でいい。そんな言葉をかけてくれるかもしれない。