実現した対談

いつも受付で私の質問に答えてくださっていたシェアオフィスのラガーマンTさん。思い切って、ご本人に出てきてもらった内容を読んでもらった後、会議室でお話をさせて頂きました。「僕、明日保育園のご家族とディズニーランドの予定だったんですけど、雨で無理ですね~。」ははは。ウォーミングアップがいい感じの彼の話しぶりに、すっかりアイスブレイクです。「読ませて頂きました。ありがとうございます。僕、あんなに綺麗な文章は書けないです。」私がサイトを通してそっと投げたパスは、Tさんの心にすっと届いてくれたよう。優しい表情を見てそう思いました。ラグビーのことを書いてくれてありがとう、そんな気持ちを前面に感じた嬉しいひとときでした。

現役時代のことを改めて聞いてみると、肩の骨折、膝の靭帯断絶、1年間プレーができない時もあったそう。戻った後の試合がどれほど不安との戦いだったかは、それを経験した人にしか分からない想像を絶するものだっただろうと思います。けがをきっかけで引退する選手もいる、それでも彼が現役でいたのは、何よりもラグビーが好きでまだやれるという自信があったのだろうと思いました。体もハートも熱い。そんな彼が、今何を思うのか改めて聞いてみると、そこには堪らない気持ちがありました。「今、ワールドカップの影響でラグビー熱が上がってきています。今がチャンスです。」そう、今がチャンス。なかなか人気の出ないスポーツの中にいて、ここまでの熱気を肌で感じたこの時期がずっと続いていきますように。その気持ち、受け止めました。楕円形のボールが緩い弧を描いて、一人でも多くの方に伝わるように、私も頑張ります。

「スコットランド戦を観て、このスポーツがとても好きなのだと感じました。Tさんとのご縁も大切にさせてもらいながら、ラグビーについて書いていきたいです。」本当はもっともっとその場で伝えたいことがあったのですが、それを全部話したら、シェアオフィスの会議室で泣いてしまいそうだったので、心の中に留めました。東日本大震災の時、実は大学図書館の勤務日だったのに、たまたま母とオーストラリアに行っていて、ホテルで流れた家屋の津波の映像を観て愕然としたこと。その映像を忘れることはないこと。成田行きの飛行機が飛ばず、後日、関空を経由して戻った図書館は酷い状態、それでも大学の皆が助けてくれたこと。入試課で働く職員の先輩が、震災の影響で一人の学生さんが入学を断った話をしてくれたこと。大学図書館の片隅でその話を聞いた時、二人で泣いてしまいそうだったこと。いつか、その学生さんに自分が書いたものが届いてくれたらいいなと願っていること。そんな気持ちをいつも抱いていたら、Tさんのラグビーを通しての被災地への支援を知り、胸が熱くなったこと。全く違う所にいたはずなのに、何かが小さく交わったその時の気持ちを、忘れないでいようと思いました。

大学の学生さん達にコーチとしてラグビーを教えに行っているのは、監督の推薦もあったそう。そして、何より教員免許を持っているTさんは教えることが好きで、バイタリティ溢れる学生さんが好きだと言う。体育科と社会科、全く違う教科でも、根底にある気持ちは同じなのではないかと思いました。企業ラガーマンとしてプレーをしていた時、スポーツを通しての被災地支援を知り、手を挙げましたと話してくれた時の、穏やかな目を覚えておこう。足元にも及ばないような強い意志。彼から学ぶことは無限にありそうです。
時計を見たら、ぴったり1時間。本当に1時間語ってくれましたね。でもそんなものではないはず。家族を大切にしながら、ラグビーを愛する気持ちは、ずっと先を見ているから。ノーサイドには、なかなかさせない。若い方達へのロングパスを、この目で見届ける。