桜、散ってしまったなと思いながら、2年生の終業式前夜のことを思い出しました。「先生に、とってもお世話になったからお手紙書こうよ。」「え~。」「それなら、明日先生にありがとうございましたって伝えてきて。」「それも恥ずかしいよ・・・。」そうか、男の子だから照れもあるよね。あまり強要してもいけないなと思い、そのままハグしてお休みしました。
そして、終業式から帰った息子と昼ご飯を食べていると、ぽつり。「ママ、先生にメールして。」ん?ああ、オンライン教材のメッセージ画面のことね。休校中と後にフル活用をさせもらって以来、息子もそのツールをしっかりと覚えていました。「ボクね、先生にやっぱりお礼が言いたい。」「今日、何かお話あったの?」「内容は忘れちゃったけど、ボクちょっと泣いちゃった。」最後に届けてくれたみんなへの言葉が息子の心に届いたのだと思いました。これはね、ラストメッセージを送るしかないでしょ。『先生、一年間ありがとうございました。いつも優しくしてくれてありがとう。ずっとずっと先生のこと、覚えてます。Rより』そして、そのお返事が。『あなたの毎日の中にいられて、先生は幸せでした。がんばりやのあなた、とてもきれいにノートを書くあなた、スポーツマンのあなた、想像を広げてたくさんの作品を作るあなた・・・忘れませんよ。あなたには、たくさんの人と心を通わせ、幸せを作る力がある。これからもどんどん、レベルアップしてください。あなたの新しい毎日を、今度は少し離れたところから、応援しています。』息子が寝る前に、返信に気づき、メッセージを読むと、目を潤ませて聞いていました。今のその気持ちをしまっておくんだよ。挫けそうな時、そっと引き出せるように。今感じているその気持ちに、賞味期限はないから。先生と息子にしかわからない温かい繋がり、それを垣間見せてもらえたようでじんわりしました。最後の文通、堪らないな。
そんな翌日、また息子は母と二人で一泊の旅行へ出かけました。お約束通り、私も入場券を買い、一緒に電車を待ちながら二人の写真を母のスマホで撮っていると、通りがかった50代の女性が声をかけてくれて三人の写真を撮ってくれました。「せっかくだから電車が来た直後も撮りますよ!」なんて言ってくれて。やっぱり自分が届けているものよりも、返ってくるものの方が多いな。そんなことを思いながらさすがに恐縮してしまい、みんなでお礼を言って二人が電車に乗り込むと、呆気なく発車してしまい遠ざかっていきました。何度経験しても、ちょっぴり切なくて優しい時間。
後日、嬉しそうに帰宅した息子が見せてくれたのは、前回買った時のものとは色違いの特急電車のおもちゃでした。「前はね、白を買って、今度は水色にしたの。くっつけられるんだよ!」と満面の笑みで見せてくれて嬉しくなりました。「あれ?お母さんね、小銭しか持たせなかったから悪いことしたなって思っていたの。お金足りなかったでしょ?」「ううん、ボクね、自分のお小遣いから持っていったから大丈夫。」みんなからもらったお年玉を、3分の1だけ息子に渡し、後は本人の通帳へ。その貯金箱は、幼稚園の時に絵を描いてコップに張り付け、参観日の時にプレゼントしてくれたものでした。せっかくだから貯金箱にしようよと提案すると、喜んでくれて。沢山の人達の気持ちが乗っているそのお金を、大事に握りしめ買ってきてくれた旅の思い出に、なんだか胸が熱くなりました。
その後、母に会う用事がありお礼を伝えると、こっそり教えてくれました。決してRには怒らないであげてと言われ、伝えてくれた一つの出来事。「とっても楽しくていい旅行だったの。でもね、帰りの電車に乗る前に自分用のおみやげを買う約束をすっかり忘れていて、電車が来たから慌てて乗ってしまったの。そうしたら、3駅目の手前あたりで、おみやげは?と聞かれて、しまった!って思って、次の大きい駅で買おうって言ったら、ポロポロ泣き出しちゃってね。どうしても、その駅にしかないものだったんだって思ったから、戻ろうって言ったらほっとしてくれたの。でも、その駅に戻るまでひと言も話してくれなくて、ちょっとだけ切なかったわ。」「なんだかごめんね。疲れている中で悪いことをさせてしまったね。でもね、それはわがままを言いやすいおばあちゃんだから言えたことだと思うんだ。」「そうね、私も約束していたことをすっかり忘れていたし、Rも我慢しないで駅に着いたらちゃんと言うのよって、最後は握手して仲直りしたから大丈夫よ。」母の気持ちも息子の気持ちも手に取るように分かり、なんだか泣きそうになりました。あれ?電車に乗っちゃうの?どうしよう。3駅まで我慢できた、でもそこでやっぱりほしかった気持ちが勝ち、信頼している母だからこそ、本心を伝えられたんだろうなと。戻る駅まで口を利けなかったのは、おばあちゃんごめんねという気持ちと、でもほしかったんだもん、それでも、これで良かったのかなという気持ちが混ざり、小さな頭でぐるぐる考えたんだなと思いました。その特急電車2両は、祖母と孫の心をいつまでも繋げてくれている。二人の秘密、悲しい思い出が優しさで塗り替られた時。
そして、息子のメッセージと共に先生に届けたラストメッセージ。『心のこもったたくさんの温かいお気遣いを、ありがとうございました。その真心に感謝しています。おなかいっぱい、笑ってください。私達も、そうします。』最後の約束。こんな時だからこそ笑おう。一年間、担任の先生と届け合った気持ちは、誰かを通して、また花開くのだと思いました。
おなかいっぱい笑おうよ。笑っていたら泣けてくるかもしれない。そんな自分を抱きしめられる自分でいよう。