一足早いクリスマス

また寒さの厳しい季節がやってきたので、首にも巻けてひざ掛けにもなる大判ストールを買おうと思い、デパートへ。大きさも様々で散々迷っても、結局決めるのは一目惚れをした商品。邪魔にならない大きさで、柄も気に入り、レジへ行くとくじ引き券を6枚ももらったのですが、お迎えの時間が迫っていたので、そのままお財布に入れて帰宅しました。
たまたま幼稚園がお休みだった日、そのくじ引き券を思い出し、息子とデートも兼ねて駅周辺へ遊びに行くことに。なんだかよく分からずひょこひょこついてきたので、「くじが引けるから並んでいよう!」と待っていたら、通りすがりのおばさんがさりげなく私に、「これあげる。」と1枚の券を渡して行ってしまいました。とても急いでいた様子で、くじを引く時間もなかったようなのですが、親子で来ていた私達にわざわざ渡してくれて、その気持ちがとても有難くお礼を言ってお別れ。

随分昔、愛知県の小学校に戻ってから、名古屋市内でイベントがあり、岐阜県で仲良くなった友達とお母さんと、現地の入り口で待ち合わせをしたことがありました。一人で待っていたら、若い女性の方が、「これ使わないので良かったらもらってください。」と私にチケットを渡し、その時もお礼を言ってすぐにお別れをしました。友達のお母さんが来たので事情を話すと、「Sちゃんのチケットはもう前売り券で買ってあるから、それはもう一度来た時に使ったらいいよ!」と言われてお財布の中へ。久しぶりに友達に会えたことももちろん嬉しかったのですが、そのお姉さんの気持ちが私の中で膨らみ、胸がいっぱいでした。

大人になり、子供ができて、芝桜を見に行くことになった時、入場料100円割引のチケットを2枚ゲットし、1枚を家族で使ったのですが、1枚は余ってしまったので、入り口で周りを見渡しました。すると、車いすに乗った男性の方とその奥様と見られる方が。二人合わせてたった200円の割引なのだけど、私の中であの時のお姉さんの優しさがずっと残っていて、自分から駆け寄り、「この割引券、良かったら使ってください。」と伝えたら、二人に驚かれ、同時に温かい笑顔でお礼を言われ、勇気を出して良かったと思いました。ほんの少し。本当に小さなこと。それでも、頑張っている人の所に、ちょっとだけご褒美が届くといいなと思いました。そんなささやかなことで、介護は救われることを、祖父を看病する母の様子を見て知りました。たったひと言で、たった一つの行動で、一人じゃないのだと、周りが見てくれているのだと、そんなことに気づく時、ようやく緊張の糸が解れる。自分がやったことは微々たるものですが、二人の表情が和み、それだけで十分でした。

マブダチK君がいつも言っていました。「俺、人にご飯を奢っているからパチンコで勝てているんだと思う。だから、Sが投げた気持ち、回り回ってやっぱり返ってくるよ。世の中そういう風にできているような気がする。」そう言って笑っていたK君は、同窓会でドタキャンした友達の費用を全額出し、皆で負担しようと言っても聞きませんでした。「うるさい!今日パチンコで勝ったんだよ!」そう言って気を使わせなかったいいヤツです。

受け取った1枚の割引券が、K君の哲学を表してくれたようで、何よりの贈り物のような気がしました。ストールとは違う価値のあるクリスマスプレゼント。そして、7回挑戦した息子のくじ引きは、全て参加賞。7本のうまい棒をもらって大喜び。デパートのギフト券よりも醤油よりも、息子にとっては嬉しいプレゼント。
でもその1本はおばさんからの気持ち。そのことを、大人になって思い出して。