プレゼントの大きさ

のんびりと夕飯準備をしていた先月の夕方、荷物が届きました。受取人は私の名前になっていて、誰からだろうと見てみると、名古屋で小料理屋を営むママからでした。開ける前から感激し、色んな気持ちがこみ上げる中で中身を覗いてみると、入っていたのは、てんこ盛りのさくらんぼ。そのプレゼントは、私のことを知ってくれているからこそ。前回やりとりした時に、名古屋名物で食べたいものを聞かれたものの、食欲がいまいちだったので、ママのご飯が食べたいと伝えておきました。お店に通っていた頃、あまり食欲なくてとお浸しだけ食べていたら、メニューにはない梨を剥いて出してくれたこともあって。そういう物なら入ることをわかってくれていたママは、その当時を思い出し、元気づける意味でも送ってくれたのだと思い、堪らない気持ちになりました。人を想うってこういうことなのだと。お礼電話をしようと思ったら、ちょうどお店が開いている時間だったので、メッセージを送ると返信が。『喜んでもらえてよかったわ。今は帰りの地下鉄内です。』時計を見ると9時半前。そうか、時短営業で8時までだった。開店は6時じゃなかったかな。2時間の営業に、ママはお客様を気遣い、お客様はママを労ってくれていたんだろうな。

学校の授業後に行われる放課後の遊び場所は、体育館。ボランティアの方達が見守ってくれて、非常に有難く、それでも息子はほとんど真っ直ぐ帰ってきていました。ただ、新年度になり一度だけ幼稚園時代から仲良しのD君と待ち合わせしたと話してくれて、ランドセルを置き、慌てて学校へ。母の日に、工作で綺麗なカーネーションを作ってお手紙を添えて渡してくれたので、てっきり自宅で作ったものだと勘違いしていたのですが、ずいぶん経ってから違うことに気づきました。「ボク、D君と約束して放課後に体育館に行ったでしょ。そこで作らせてもらえることが分かったから、ママに内緒で作りに行っていたの。帰ってから慌てて隠したんだよ。」泣けるじゃないか。男の子達と弾けて遊んでいるかと思っていたら、舞台の上に用意された工作グッズで準備してくれていたのね。そんな気持ちも、クラスが変わっても途切れない友情も、何もかも大切に受け取りたいと思いました。母の日と言っても、母からしたら私は娘な訳で、母をお祝いすることに気疲れが発生し、毎年母の日恐怖症だったことを思い出して。こんな風に、息子が上書きしてくれるんだな。
そこで、ボランティアをしてくれていた一人のお母さんは、乳児から通っていたお話し会のメンバーでした。抱っこ紐で息子を抱え、本人が寝ていても、毎月楽しみに公共施設に通い、紙芝居などを読み聞かせてくれていました。そのお母さんと、まさか息子の学校の体育館で再会できるとは思わず、個人面談の後にお迎えに行き、お会いできた時は感極まりそうになって。「お久しぶりです。もう全然お話し会に行けていなくて。」「いいのよ~、元気だった?お子さんこの学校だったのね!どの子?」「あそこで走り回っています。」「大きくなったわね~。」と喜んでくれて。街の人が、些細な出会いから子供の成長を喜んでくれる、大勢の人に見守られているのだと、時代が変わっても変わらない優しさを沢山吸い込みたいと思いました。お話し会で私と息子しかいなかった時は、終わった後にみんなで育児の悩みを聞いてくれたこともあったな。

遠距離通学をしていた岐阜の小学校。学校ではうまく馴染めず、疲弊して帰宅すると、母に言われました。「お父さんとお母さん、どっちにつく?」と。それが何を意味するかは分かっていた訳で、自宅でもこんななのかと思うと、自分の置かれている現実を受け入れました。さすがに母の言葉をスルーし、学校から真っ直ぐ帰りたくないと思い、通学路を逸れてふらふら歩いていたら見つけた公共図書館。ランドセルを背負ったまま入っても、誰にも怒られることなく、自分の居場所をようやく見つけられたのだと思いました。学校と自宅のちょうど真ん中あたりにあった私のオアシス。ここにいてもいいんだ、その時感じた思いを忘れることはありません。
その後、母が名古屋にいる祖父の様子を見る為に一時帰宅。そういう時に限って調子を崩してしまい、父が夜間の病院に連れて行ってくれました。診断は肩こり。は?父と二人で目が点になり、さすがにちょっと先生の前で笑ってしまいました。それでも、何とも言えないだるさや気持ちの悪さがあったので、自力で歩くこともできず、駐車場から自宅までおんぶをしてくれて。背中から伝わる、父のぬくもり。あの頃の私にとって、どうしようもなく温かくて。玄関を出たら、そこはもう職場の人達と顔を合わせる社宅な訳で、お父さんも頑張っているんだなと肌を通して色んなことを感じました。帰宅し、姉が心配し駆け寄ってきてくれて。「S、どうだった?」「ただの肩こりだ。」と父。“ただの”ってなんだ。「な~んだ!あんたまだ小学3年生でしょ。今から凝っていてどうすんのよ。」と相変わらず辛口の姉。・・・。その時に短時間だけ戻れるなら二人に言ってやりたい。「こっちは色んなことを敏感にキャッチしてるんじゃ!!」

父とバージンロードを歩いた時、組んだ腕から温もりが伝わり、一瞬、おんぶをされた時のことが蘇ってきました。ずっと心の奥底にしまっていた淡い記憶が、こんな時に思い出されるなんて。父にいつの日か、本当にいつの日か、どれだけ嬉しかったか伝える時はくるのだろうか。その時もらった温もりを精一杯の気持ちを込めて返すよ。