息子と車で出かけた雨の日の帰り、自宅の駐車場に入れると、少し曲がってしまいました。「お母さんさ、どうも駐車は本当に苦手みたい。これはもう努力でどうにかなる問題じゃなくてね~。」と笑いながら話すと伝えてくれました。「少し曲がっているけどいいよ。」「ナイスフォロー。苦手なことをばかにするんじゃなくて、できることを褒められる人でありたいよね。きっと相手も嬉しいと思うんだ。そうやってお互いを大切にしていきたいね。」「うん。ボクもそうしたい。苦手なことあってもいいよね。」うんうん、彼のこんな優しさに何度励まされ、自分を見失わずに済んだだろう。息子の心がいっぱいになり、溢れ出した時が離れるタイミングなのかも。チョコファウンテンができたら、もうそこに私はいらない。沢山の愛を届けられる人になれ。
最近の主要登場人物であるうちの姉が、意外な視点から妹の困難さを心配してくれていることを思い出しました。「最近行った美容院の美容師さんがね、Sと同じように隠れ左利きだったの。右も左も使うからか、右脳と左脳がごちゃごちゃになって、だから映像は見られるけど本が苦手みたい。そういったことってある?」「私の場合、映像の方が情報量も多くて展開も早いから疲れることが多いの。本だと自分のペースで読めるし、想像を働かせることができるから。」「なるほどね。今日改札を通る時、右手で自然にカードを出してスムーズにタッチして出られたけど、左利きの人はこういったこと全てクロスされるなって改めて思ったの。日常生活、そんな事ばかりだよね。」「そう、言い出したらきりがないんだけど、図書館カウンターでみんな右利きだから返却期限のスタンプも右前に置かれていて、それをクロスして左手で取っていたら、左利きの女子学生さんが一緒~って言ってくれたの。左利きは左利きが分かるんだよ。そもそも私の筆跡鑑定って矯正された右手で書いて、鑑定になるのかなって思う時があるよ。」「でもSちんの筆跡ってやっぱり繊細さが出てるよ。」「ただの下手くそだよ。だから、両手が使えて想いを表現できるタイピングが嬉しくて仕方がないの。完全な左利きだったら、本当にもしかしたら何か才能が開花していたかも。その子の持っている個性をそのまま大事にするってめちゃくちゃ大切なことだと身をもって思うよ。」「本当だね。でも、そういったことも含めてSちんなのかもしれないね。R君の個性はどう伸ばしたい?」「あの子の持っている優しさは、いつか人を癒してくれると思っているよ。おじいちゃんがリハビリしていた病院の理学療法士さん達も、本当に温かい人達でね。同じ空間にいて優しい気持ちになった。Rが自分で選んで向いている道に進んでいくのだと思う。」そう伝えると、深く頷き微笑んでくれました。右利き用のはさみで工作しても、全然うまくできなくていじけて幼稚園から帰ると、そこにはいつも姉がいました。守られているという安心感、蓄積されたものを今度は息子へ。
二年生の時の担任T先生。休校中のオンライン教材で、息子の頭痛の相談をさせて頂くと、ご自身もそうだと伝えてくれました。行間からこちらのセンサーが働き、繊細な先生であることがすぐに分かりました。そして、今でも色んな困難と戦っていることも。何か私にできることはないだろうか、でも、保護者が動くのはただの迷惑になるかもしれない、そんなことをぐるぐる考えている間に、息子の悩みに気づき先生と電話で話すことに。その時、自分の直感は当たっていたと確信しました。少し前の自分と重なったから。その後、面談をさせて頂くことになり、イチかバチかの大勝負に出ました。どの角度から切り崩そうか、考えに考えて教室の中へ。息子の相談をさせて頂いた後、少しだけ別の話をさせてくださいとひと言断り、ひと呼吸置いて伝えさせてもらいました。「私も一応なんですけど教員免許を持っていて、司書の道に進み、小学校の図書室で働いたことがあるんです。だから、ものすごく広い意味で言わせてもらえるならば、私も先生の仲間です。先生とメッセージ画面や電話でお話をさせて頂いて、色んなことを感じました。色々な立場の中で、精一杯頑張っていらっしゃるんだろうなって。今回、息子と私に向けてくれた気持ちもそうです。でも、先生は人に向けるばかりで、ご自身に向けることってあるのかなって。少し前の私がそうだったんです。だから、先生の苦しさが伝わってきました。先生、一本だけでいい、たった一本自分の為に向けてあげてください。」そう言うと、きょとんとされ、今目の前で何が起こっているのだろうという表情をされ、ちょっと笑ってしまいそうになりました。どうやら、こちらの言っていることがドストライクだったようで、そんなことをまさか保護者の方から言われるとは思わず、とても驚きましたと言われて。「前の私も自分に優しくなることが分からなくて、ずっと苦しいままでした。先生が苦しくなる時、そういえばそんなことを言っていた保護者もいたなって思い出してほしいんです。自分を大切にしてほしい、そうじゃないと先生はずっとこの先も辛いままだから。」T先生の心が動くのを感じました。畳みかけろ。「今日、かなり勇気を出してきたんです。担任の先生だし一歩間違えたら気まずくなるだろうなって。でも、コロナで休校になって、世の中が大きく変わって、出会い方は先生と保護者だけど、今は人と人が協力し助け合っていくことが大切だと思ったんです。だから、先生にお礼の意味も込めて今日きました。もらった気持ちを返したかったんです。」そう伝えると、今までにない優しい表情で微笑んでくれました。「鋭いですね。そして当たっています。こんなことを言われたのは初めてです。なんだかもう言葉にならなくて・・・。」ビンゴ!!実は私の3歳下だった先生。自分が通ってきた道だから分かったこと。あの時見せてくれた柔らかい笑顔は、ご自身に向けてくれたと今でも信じています。
姉に狙えと言われた三冠王。打率は結構高いぞ。相手の痛みが自分の痛みとどこかで重なるからかな。胸に手を当てて目を閉じる、太陽マークの一本だけ自分に向けることができたら、射し込んだ光がきっと心を照らしてくれる。