慌ただしい毎日、少しでも気を抜くと後ろを振り返ってしまいそうで、ただ前を見ていました。そんな最中、ようやくシェアオフィスに顔を出すと、満面の笑みで迎えてくれたのは、絵の上手な女性スタッフさん。「お久しぶりです~。最近見かけないので、どうしているかなって思っていたんです。」「ちょっと色々と忙しくて。ようやく来られて嬉しいです。」そう言ってガールズトークが始まりました。ネネちゃんと同い年の彼女、オフィスにも素敵なお姉ちゃんができたよ。
その後、中に入ると不動産関係のお仕事をされていたHさんを見かけ、ご挨拶。するとランチに誘われ、近況を一気に聞いてもらいました。驚かれながらも、要所要所で一緒に笑ってくれて。○○さん、未来を見ていますね、僕嬉しいですよ。俯いてしまいそうなこと沢山あったと思うのに、諦めないで前を向いていたことを知っているから。そんな気持ちが届き、胸がいっぱいでした。夫にこの仕事を辞めてほしいと言われた翌日、彼が話を聞いてくれた後、伝えてくれました。「僕ね、宝くじをたまに買っているんですよ。もしですよ、○○さんが10億当たったらどうします?」「別れます。」間髪入れずに答えると、笑いながら言われて。「もう答えは出ていますね。」と。彼らしい話の持っていき方に嬉しくなり、一緒に笑ってしまいました。夢だけではご飯は食べていけない、それでもやり遂げたいことがある、どうしようもなく行き詰まったら司書の道がある。それは武器にするのではなく、心のお守りなのだとHさんは感じてくれていました。何とかなりますよ、彼の言葉の裏側にはいつもこんな励ましがあり、本当に物件が見つかり引っ越しが決まったことを伝えると、一緒に喜んでくれました。「楽しいことが待っていますね。」このひと言が彼なんだな。大変なことを乗り越えたら、きっと明るいことが待っている、そのことを知っている人のエールに気持ちが軽くなった午後。
いよいよマンションの契約の日、住民票と印鑑を持って予定時間よりも早く不動産屋さんに着くと、営業のMさんがハンバーガーを頬張っていて、恐縮してしまいました。謝りながら出直しますと伝えるよりも先に、椅子を勧められ、「他の者が先に説明をした後、僕から改めてお話をしますね。」とやんわり言われ退散。どこまでも気を使わせない気遣いに嬉しくなりながら、宅建の資格を持った社員さんと対面しました。分譲マンションを買った時のような細かい説明が待っていて、「寝る前に読んだら眠たくなっていいかもしれないですね~。」なんて冗談を盛り込んでくれながら、楽しい時間が流れました。その後、Mさんに変わり、さらにフランクな説明が待っていて、こちらを不安がらせないように目一杯話してくださり、周りのスタッフさん達も穏和に聞いてくれているのが分かり、感激の時間でした。「一つ伝えておきたいことなんですけど、この物件更新料がかからないですね。」「え?本当ですか?」「更新料はかからないけど、事務手数料はかかるかもしれないから管理会社に聞いてみますね。」と目の前で連絡を取ってくださり、あっさり通話は終了しました。「更新料も事務手数料も一切かからないみたい。珍しいね。」一回りぐらいしか年の差はないのにお父さんのような存在になってくれているので、一緒に喜んでくれて。「ちょっと考えられないです。更新料って払うのが当然だと思っていたんです。」「9割はそうなんだけど、たまにそのような物件もあるんだよ。残りの1割も家賃の半分は更新料でもらいますとか、事務手数料だけもらいますとかあるんだけど、一切かからないのは本当に珍しいよ。」「とっても有難いです。これは長く住まないといけませんね。」そう伝えると、何とも言えない優しい表情で微笑んでくれました。「全然違うところから返ってくるかもしれないな。」と言っていたK君。ご縁や人の心だけでなく、“お金”という形で返ってきたよ。お金は天下の回りもの、大きな流れに乗って、先行投資したことがこんな形で返ってきてくれたことに溢れそうでした。
どうして独身時代、お金を貯めることができたのか改めて思い出してみました。休みの日、公共図書館に行き、本を借りて読んでいたから、プライスレスだったなと。カフェでモーニングを食べ、ブックオフで買った100円の本を読んでも、600円ぐらい。自然を感じたくてサイクリングをし、見上げた空に感動しました。姉が譲ってくれたブランドのバッグは、力となり心の財産に。そして、そんな私を応援してくれる人達のあたたかさにいつも包まれ、満たされていました。そういった生活から自然に貯まっていたお金、みんなの気持ちが入っていたから大切にしたかったのだと。大学図書館勤務時代、村上春樹さんの『1Q84』が大ヒット。他の職員からのリクエストで購入が決まり、私も読みたかったんです~と女性の上司に言うと伝えてくれました。「書誌作成もして、装備まで終わったら、一番初めに借りていいから。図書館で働いている人の特権!」「でも待っている利用者の方が沢山いるから、私は最後でいいです。」「だったら、オンライン目録に載せるのを○○さんが読み終わってからにしよう。」そう言われ、恐縮していると先輩も微笑んでくれました。それぐらい甘えちゃいなよ、そんな気持ちを込めながら。その週末、カフェにこもり、ひたすら『1Q84』の世界へ。翌月曜日、「全部読み終わりました。面白かったです!」と女性の上司に伝えると、「もう読み終わったの~。」と笑われてしまって。そんな時間は私にとってかけがえのないものでした。村上春樹さんを背表紙で見る度、思い出される温かい記憶。
「契約無事に済んで良かったね。」ふと現実に戻ると、営業のMさんが最後に伝えてくれました。年末に転がり込んだ後、どんどん話は進み、それをお店のみなさんが応援してくれていることを感じていました。プレゼントされたのは、ご成約キャンペーンのお掃除セットとクオカード。「ありがとうございます。大切に使わせて頂きます。これまで本当にありがとうございました。」深くお辞儀をして挨拶すると、スタッフさん全員が立ち、お礼を伝えられお店の温度が一気に上がりました。あなたが心から笑える物件を提供できたこと、本当に嬉しく思っています、これからですよこれから。そう伝えてくれているようでした。いくつも見つかるサービスエリア、これから先何があっても今の気持ちを忘れることはないだろう。幾重にも重なった人の深い優しさを知る。