それぞれの連休

11月の3連休、母が息子と旅行に出かけたいと言ってくれたので、その気持ちに甘えることにしました。そして、夫もせっかくなので一人旅を経験しようかと伝えてくれました。いいんじゃない、それぞれがそれぞれの場所で楽しむことも時に必要な気がして、二人の冒険を後押しすることに。

行き先や手段を迷っていた夫に、アドバイス。「私ね、特急電車って結構好きなんだよ。指定席で快適だよ。」そう、それはね、名古屋から難波まで何度も往復した近鉄アーバンライナーに乗っていたから。頭を掠めた沢山の思い出が蘇り、キッチンの中でこみ上げるものがありました。文庫を片手に、行きも帰りも少し切ない気持ちになっていたな。どちらも都会なんだけど、街の雰囲気がぐっと変わるその感じが好きでした。難波の駅で、何度トラ焼きを買って帰っただろう。そんな感慨にふけりながら、夫に勧めてみました。「あれなんていいんじゃない?なんだっけ?8時ちょうどの~♪」「あずさ2号!!Sから狩人が出てくると思わなかったよ。」と二人で大笑い。そんなことをあれやこれやと話していたら、本当に夫はスーパーあずさの特急券を予約することになり、旅の始まりってもうここからスタートしているんだよねって、私まで一緒に同行しているかのような嬉しい気持ちに。

そして、学校から配布された息子の予定表を見てみると、母が予約してくれた土曜日は、半日学校があることが分かり、慌ててしまいました。コロナの影響で土曜日も不定期で授業があることをすっかり忘れていて、読みが甘かったと本気で凹んでしまった訳で。今さら予約変更をしても空いているとは思えず、頭をフル回転させ考え付いた一つの答え。ダブルヘッダーがあるじゃないか!半日の授業なら、昼過ぎの電車に乗ることができ半日は遊べる、強行スケジュールでも、こんなバタバタの旅行が思い出に残るんだよ。武勇伝をまた一つ増やせばいい。社会人になって、満員電車に揺られた時、そう言えばあの時学校から慌てて帰って、おばあちゃんと電車の旅に出たな、母さんに予定変更という選択肢はなかったんか!とふふっと笑ってくれたらいいなと思いました。

当日の朝、学校が終わったら走って帰って来てね!という無茶ぶりを渋々受け入れた息子。学校が終わってから旅行に行くのやだ~という文句もスルーした者勝ち?!いつものようにバルコニーからもバイバイして、ダブルヘッダーの成功を祈りました。さらに夫のお見送り。一人になり、家事をこなし、本を読みながら、そわそわしながら息子の帰宅を待ちました。そろそろかなと道路を覗いてみると、本当に走っている7歳児を発見。素直だなと笑いながら、お出迎え。電車の予約時間があるから、急ぐよとせわしなく準備をしていても、望遠鏡で遊んでいて激怒。ジュースを入れて、みかんを入れて、一泊分の用意を確認して母宅へ向かいました。会った時の母の表情がとてもよく安堵。この日に備えて、彼女の心のコンディションをゆっくり整えてきてくれていたことを察し、強くなったなとなんとも言えない気持ちがこみ上げました。入場券を買い、二人が乗り込んだ電車の窓ガラス越しに手を振ると、この瞬間を忘れたくないのは私の方なのだと思いました。そして、発車の時。一生懸命三人が手を振った時間もあっという間に過ぎ、見えなくなった後、涙がこぼれそうで、嬉しさと寂しさと、二人の逞しさを垣間見せてもらったようで、喜びをもらったんだなと、いつまでも心配しなくていいから、あなたの道を行きなさいと母にも言われている気がして、いつもとは違う気持ちで改札口を出ました。心配性を卒業する時がきた?もっと自分に目を向ける時が意外な形でやってきたのかも。不自由の中にある自由なのではなく、自由の中にある不自由なのかもと、母から良くも悪くもいろんなことを学んでいたのかもしれないなと、優しさの入り混じった気持ちで空を見上げました。くすんでいない快晴、今の内面の象徴であるかのような澄みきった青空。

その後、のんびりと時を過ごし、夜がやってきました。静かだな、たまにはいいけどたまにでいいな。でも一人暮らしの時はいつもこの静寂の中にいたんだな、そんなことを思いながらベッドに向かおうとすると、玄関にいたくみちゃんを発見。一緒に寝ようと声をかけ、枕元に起きました。その時、野球チームで一緒のSくんのお母さんに言われたことが思い出されて。「R君がもういらないって言っても、Sちゃんは大事に取っておくでしょ。」と。ある意味、息子と苦楽を共にしている相棒だからな。このぬいぐるみ、そう言えば私と同じ誕生日なんだよね、今夜は一緒に眠ろう。
翌日、シェアオフィスに行くと、思っていたよりも多くの方がいて驚きました。ホームグラウンドでパソコンを広げていると、夕暮れ時になり、オフィスの窓に飾られたイルミネーションが光り、綺麗なんだけど切なくなって本日の業務終了。自宅に帰り、夫が帰宅し、息子は母宅にもう一泊し、翌日の午後帰ってきました。ようやくそろった三人での夕食。二人が乗った特急電車の話で盛り上がり、現地で食べたお料理で盛り上がり、私もそこにいるかのような嬉しい旅のみやげ話でした。

そして、必ず行こうと思っている仙台。特別な思いのある場所です。その土地に足を踏み入れたら何を思うのだろう、想像するだけで泣きそうになります。もう少し色々なことが落ち着いたら、スーツケースを買って、そこに荷物を詰め込んで、現地でもらった沢山の気持ちはきっとトランクに詰め込められそうにもなくて。がんばろう東北、3.11の震災後に、楽天イーグルスだった嶋捕手が開幕戦のグラウンドで伝えた言葉が忘れられないでいます。「見せましょう、野球の底力を。ともに頑張ろう東北!」彼が届けてくれた気持ちを、吸い込みにいけたなら。関東の大学進学を諦め、地元に残った学生さんの思いを忘れない為にも。笑っていてほしい、大学図書館で出会うことはできなかったけど、その選択に心から笑っていてくれたらいいなと。
私の旅は、まだまだこれから。長いよ、沢山の優しさを肌で感じるために。