小康状態

なんとか乗り切れそうだと終わりが見えた休校終盤。すっかり気が抜けて、自分の中で穏やかな時がやってきました。雨と雨の間なのかもしれない、それでもどこかで安堵していることを感じると共に書くことが無い。本当に無い。ついにこの時が来たかと思いつつも、とりあえずタイピングをしてみる。多分、頭も心もフル回転だったのだと思います。だからたまにはこうして休ませないと。

大阪の通天閣。これが、緑に変わった映像を見た時、大阪府民じゃないのに、感極まって泣きそうになりました。出口、もうすぐそこなんだ、ここまで来たのだと。姉と子供の頃に見たNHKの連続テレビ小説『ふたりっ子』。そこに通天閣が出てきて、一度見てみたいと思っていました。時は流れ、姉が大阪に就職。高校3年の時、初めて近鉄に乗り、難波で南海鉄道に乗り換え、電車に乗った時、通天閣が見えて大阪に来たのだと胸がいっぱいになりました。私にとって、大きなシンボルタワー。性格の違う姉妹が別の人生を歩み、時に葛藤と戦いながらも進んでいく“ふたりっ子”が姉と重なりました。別々に住むこととなり、お互いの良さや存在に改めて気づかされた時。わくわくしながら南海電車に乗ったことが懐かしいです。大阪から発信をしてくれた緑の通天閣、離れていても安心を届けようとしてくれたその場所に、自分の心も灯ったようでした。

高校の生徒手帳を持ち、女子寮の管理人さんに見せてから鍵を受け取り、姉の部屋に行くと、テレビの上に置いてあったと思われるミッフィーのぬいぐるみが頭から転げ落ちていました。行き倒れか?!と思いながら慌てて元の場所へ。それは、まだ実家にいた父とゲームセンターへ行き、UFOキャッチャーで見つけたものでした。「お姉ちゃんうさぎ年で、一人で頑張っているから何としてでもお父さん取って!!取るまで帰らないよ!」という私の無茶ぶりに半笑いしながらゲットしてくれた貴重なぬいぐるみでした。翌日梱包し郵送。ミッフィー、お姉ちゃんを頼んだよ。そう思いながら贈ったものだったので、大阪でまた会えたことが本当に嬉しくて。それにしても、頭からずっこけているってどうよ。そして、感激の再会。姉妹間コンプレックスなんて、どこへ行った?離れていた方がお互いを高め合える、そう思ったハグ。会いたかったよ。
早朝、バタバタと出勤していった姉を見送り、ゆっくり身支度をしていざ空港へ。そう、そこは姉の職場でした。仕事が終わる時間まで、文庫を読み、空港内のテレビを見て、デッキで飛行機を見て売店をうろつき過ごしました。待ち合わせの場所に、やや小走りでやってきた姉。一緒に写真を撮りたいから、仕事が終わっても制服のまま来てねという私のわがままに付き合ってくれたよう。慌ててカメラを取り出すと、お客さんに道を聞かれている姉がいて、それを遠巻きに見ていました。働く姿、見せてもらったよ。そんな感動に包まれていると、「ちょっと~!制服のままでいると目立つんだよ!写真撮ったら着替えるよ!!」といういつもの彼女が。その慌てぶりを笑いながら、道行く人にお願いをしてパシャリ。この一枚があればね、どんなことだって頑張れる。
その後、私服に着替えた姉にぶつくさ文句を言われながら、帰った電車。いい社会見学だったよ。飛行機に乗れなくてもね、一緒に飛べた気がした、この気持ちを忘れないでいたいと思いました。
そして、別れの時。無口になった二人で乗った南海電車。何を話したらいいのかお互いが分からず、ただ外の景色を見ていました。そして、目に留まった通天閣。また来るよ。

そんな思い出の場所。緑に灯った時、駆け巡った沢山の気持ち。希望を見せてくれること、だからまた歩き出せる。小康状態なんて言っている場合ではない。大切なものを、自分で掴みに行かなくては。