毎日、担任の先生から丸つけをして戻される宿題プリント。その中にはいつもコメントがあって、毎回楽しみにしていました。『こちょこちょ券、いつつかおかな~』と書かれた日には大爆笑。「R、先生にこちょこちょ券を渡したの?!」「うん、D君と一緒に作ったの。」楽しそうやな。そしてまた別の日、先生に渡さなければいけない書類があったので、息子に宅配をお願いするとこれまた宿題プリントに書かれていました。『お母ちゃんに受け取りましたって伝えておいてな~』広島出身の明るい先生、“お母ちゃん”と呼ばれるのは担任の中でも彼女が最初で最後だろうと思うと、何とも言えない親近感がこみ上げ、嬉しくなりました。そして、息子の誕生日後にはメッセージが。『Happy Birthday!R君。ブッフェ沢山食べてうらやましい~』どんな誕生日を過ごしているのか気にしてくれていたのね。1学期の面談後、先生に沢山励まされたお礼の手紙を宿題プリントに挟み、届けてもらうと、その手紙をみんなの前で読み上げたことを息子が教えてくれて大慌て。先生やってくれるなと、笑わずにはいられなくて。大好きな広島お好み焼きを食べる度、先生がかけてくれたひとつひとつの言葉を思い出し、胸が熱くなるだろう。最後はどんな言葉を贈ろうか。
息子が寝る1時間前ぐらいから一緒に遊ぶ時間。その中で、ぬり絵を見ながら同じように絵を描いてどちらが上手いか競い合ったことがありました。すると、意外にも上手く描けて自分でもびっくり。なぜだろうと思考を巡らせてみると、ひとつの答えが見つかりました。平面の絵を見た状態で、平面に描いたから。立体的な景色を白いキャンバスに描けと言われるとどうしたらいいのか分からなくなり、逆にレタリングが得意だった自分にも納得しました。情報量が少なくなるのもいいのかな。絵が下手と言えば、父も同じ。そんな父は相変わらずパチンコ三昧で、母がうちに遊びに来た時は朝からお風呂掃除をして、鬼のいぬまに喜んでパチンコへ出かけたんだそう。「お父さんてね、本当に分かりやすい人なの。駅近くのパチンコだと、ガラス越しに背中が見えてしまうかもしれないから、もっと中に入らないとダメだなあと笑ってた!」と母が教えてくれて、息子も交えて大笑い。その単純さに救われる時もあって、なんだかんだ言って父は人生を楽しんでいるよなとふと思いました。そんな父の心が大きく揺れるのは、大切な人を亡くした時。人の死を悼む姿は、いつも声をかけられない程、しんと静まり返る父の世界がありました。いつも好き勝手やっているようで、人を想い、真っ直ぐ生きている人なんだなと。一人暮らしをしていた父のマンションは、散らかっていたものの、物は少なく、なんだかシンプルで、心の中を垣間見せてもらったようで。祖父の法事で、母の親族が集まる中、20年近くも別居している父が家長として挨拶をしてくれた時、謙虚さと人に対する敬意を感じ、だから私はどうしようもないなと思いつつ信頼を寄せているんだなと思いました。ぎりぎりまで、だらしのない格好をしていたのに、いざ時間になると礼服を着て顔つきが変わる。仏壇の前で数珠を持ち、手を合わせる父の姿をおじいちゃんは誇らしく見ているだろうなと思うと、嬉しくなりました。我が家の長い歴史は、父が引き継いでくれた。
去年のお盆、私と息子がお参りに行く前、お供え物を買いに行ったついでにゲーセンに寄ると、思いがけずフィーバーしてしまい、慌ててメダルを店員さんに預け、両親宅へ向かいました。すると、相変わらずラフな格好で甲子園を観ていた父。2時から3時の間に住職さんがいらっしゃるという母の話を3時だと勘違いしていた父は、2時過ぎにピンポンが鳴って大慌て。この人達のミスコミュニケーションには慣れていると思いつつ、超早着替えの父に笑ってしまい、8階で良かったなと安堵しながら一緒にお迎えしました。お経を聞きながら父と母の背中を見ていたら、20年という別居生活がなかったかのような不思議な錯覚に陥りました。父が家を出て、法事の席で母が泣き、みんなに慰められていた時間。祖父は小さくなり、毅然としようとする私をみんなが応援してくれました。その後も、母方の親戚に会うと、お父さんは元気でやっているのかと気にかけてくれて。そこにざらざらしたものはなく、あたたかい優しさを感じました。「お父さんとお母さんには長い時間が必要。その間、Sちゃんはずっと辛いと思うけど、そんな時はうちにいらっしゃい。みんなの間に入って、あなたが一番苦しいよね。」と声をかけてくれたおばさん。涙が一滴こぼれました。その気持ちだけで十分だと思いました。分かってくれる人が、一人いてくれるだけで十分。自分の弱さを見せられた時、そっとおばさんが背中をさすってくれました。祖母の義理の妹、血の繋がっていない方が向けてくれた愛情は、私の奥底でずっと温められています。だから、チョコファウンテンなのかな。溢れ出した気持ちが、Hotchocolateとなってくまちゃんが運んでくれている。いろんなことがあったな、両親の背中を見て、線香を嗅いで、20年を辿りました。
「Sちん、お盆にお参りに行ってくれてありがとう!」と後から会ったネネちゃん。そして続けてくれました。「お父さん、精密検査を受けてるって知ってる?Sちんが術後の治療中だし大変な時期だから、余計な心配はかけたくないから黙っとけって。私も具体的なことはよく分からないんだけど、前に心筋梗塞を患っているから、その関係かも。お父さんもお母さんも、本当に困った人達だけど、Sが頼らないことを知っているから、余計に心配してた。その気持ちだけは伝えておこうと思って。」これが私の家族。父もまた状態が悪くなるまで私には言わないだろう。でも、バックアップ体制でいる。そして、その時が来たら、思いっきりかめはめ波をぶつけてやろう。「お母さんの親戚みんなお父さんのことが好きなんだよ。勝手なことをやっているのに、いつも愛されている。なんか腹立つんだけど、その理由も分かる気がするんだ。お父さんって一本筋が通っているし、きっと人が好きなんだね。面倒くさがり屋だし、ひとりが大好きなんだけど、根っこにあるのはその気持ちなんだと思う。夢の中でいい、もう一度おじいちゃんとお酒を酌み交わしてあげて。きっといい時間になるから。お父さんからの優しさをずっと待っていたんだよ。」全然かめはめ波じゃないな。自分で考えろ!!と第三次反抗期をぶつけてこようか。どれを取っても愛になる。