ご褒美がたくさん

学校で常任委員会があった日、息子がお留守番をしてくれていたので、午後は思い切って電車に乗って広い公園へ向かうことになりました。遊び道具と飲み物をリュックに詰め、いざ電車のプチ旅へ。すると、駅に着いて息子がぽつり。「ママと二人で電車に乗るの珍しいね!」「そうだね。前はいつだっけ?」「おばあちゃんと三人で乗ったよ。でもママと二人は思い出せないよ。」本当に思い出せないぐらい前だと思っていると、息子が小さなデートを楽しんでくれているようで嬉しくなりました。手術と薬物療法の影響で体力はまだ戻っていない、それでもとことん付き合うか!長い一日の始まり。

その後、目的の駅に着き、交番が見えて警察官の方が立っていたので、公園の場所を聞くと、ご丁寧に地図を渡してもらい息子と共にお礼を言ってバイバイ。徒歩15分程歩くと、広い公園に辿り着き嬉しくなりました。荷物を置き、長い滑り台を楽しみ、本気のサッカーが待っていて。「ママ、ボクね、一人でサッカーをしても蹴って取りに行って、また蹴ってだから全然楽しくなかったの。だから、今日一緒にやれて嬉しい。」「夕飯準備している時にサッカーやっていたのね。今日は二人で楽しもう!」そう言うと、1時間半へとへとになるまで付き合わされ、野球とサッカーができる自分を少しだけ褒めてあげたくなりました。そして、ボールを蹴りながら、父性ってなんだろうと考え始めていて。私が子供の頃、母の精神状態は良くなく、父は知らん顔でした。大学生の時は一番酷く、存在はあっても辛くなるばかりで、母性や父性というものは外の世界から教わったんだろうなと。それを思うと、一人で気負うことなく、中からも外からも、息子が色んなものを吸収し、もらった気持ちを大切にしていってくれたらいいなと、春風を感じながら少しだけ肩の力が抜けた気がしました。今の私が言えること、もしかしたらなんの説得力もないかもしれませんが、同じようにシングルになったお母さんやお父さんに届けたい気持ちは、どうかこれ以上自分を責めないで。色んな状況の中で、模索し、悩み、躓き、一歩を踏み出したのだと思います。本当にこれで良かったのだろうか、子供が犠牲になってはいないか、沢山我慢をさせているのではないか、どうしようもないぐらい自分を責めたこと、あったんじゃないかと思います。それでも、少し笑うと子供は笑ってくれて、いっぱい笑うと同じように笑ってくれて、少しの好循環がきっとご自身もお子さんも明るい方に導いてくれると願っています。愛の形って色々あって、真っ直ぐ届けたら、いろんな形で返ってきて、それにはもしかしたら時差があるかもしれないけど、注ぐ自分も大切にしてほしいと思っています。一緒に花が咲きますように。
この際なので、教職課程の恩師に論文でも提出した方がいいんじゃないかと半分冗談で思えてきました。タイトルは『シングルマザーが感じる父性のプレッシャーについて』固い!『女性だって父性を持っている』持っているのか?!『母性と父性を一緒くたにしてみた!』これで行こう。もう本当に意味が分からない。分からなくていいのかも。頭で考えるより、実践あるのみ。そんな結論に至ったサッカーの後、公園内を息子と散歩していると工作コーナーを見つけて、まさかののこぎりタイムが待っていました。鉄砲を作りたいと言われ、二人でギコギコ。金づちを使い、釘を打ち、中学の技術の授業以来だと思いながら、力作が完成し二人で大盛り上がり。サッカーをやって、木材で鉄砲を作った私はお父さん業もいけるんじゃないかとこっそり喜んだ帰り道でした。不器用なりに頑張った!!

その数日後、久しぶりに主治医のいる隣町まで電車とバスを使い、行ってきました。いつものように挨拶をし、面と向かうと変化に気づきました。「先生、痩せました?」「そうなんだよ~。実はね、秋の職員健診でBMIが思っていたよりも高くて、僕としてはありえない数値だったから、ダイエットしていたんだよ。6キロ痩せた!」「先生、前からそんなに太っていないし、めちゃくちゃストイックですね!」「そお?白ご飯をカリフラワーご飯にしたりしていて、楽しんでやっていたよ~。」体型の変化に気づいてもらえたことが余程嬉しかったのか、茶目っ気たっぷりにダイエット生活を話してくれるので、爆笑してしまいました。母のことで悩んだ時期、先生が見つけてくれた卵巣腫瘍、手術後の薬物療法、そして夫のこと。苦しい時を共に歩いてきてくれた医師。「僕の患者さん、あなたと同じように卵巣を摘出した後、癒着が酷くて腹膜炎になって大変だったから、予防として出している今の漢方は飲み続けてね。」手術後に起こる可能性のある病気は早めに対処したい。同じ思いはしてほしくないから。これが、主治医の医療であり、その優しさがメンタルケアに繋がっていることをいつも感じていました。他病院でもどんどん患者さんは増え、週7日働いているそう。「先生、たまには休んでくださいね。」「ありがとう。もう半分趣味みたいなものだから。」ははっ。患者さんが先生を必要としているからそこにいるんですよね。趣味ではなくそれが使命だから。先生が注いでくれるものを、さくらいろに変えて私も届けようと思います。父性は、主治医からももらったのかもしれないな。

そんな嬉しい気持ちを抱え帰宅すると、担任の先生から一年間を振り返るシートのコメント欄にメッセージがありました。『多くの友だちとえがおで気持ちよくすごせる心の広さとあたたかさ、だれも見ていなくてもすみまできちんとそうじをする誠実さは、Rさんの宝物です。自分の良さを大切に、4年生もがんばってね。』先生、息子のいい所を沢山見つけてくれてありがとう。何物にも代えられないご褒美をもらった優しさに溢れた一日。人はこうやって幹を育んでいくのかもしれない。