新しい風

また調停に行く日、朝から旗振り当番が待っていました。そんな大事な時ぐらい、代わってもらった方がいいのかなと思いつつ、時間的に余裕があったのでいつものように引き受けることに。すると前日、次の日が雨であることが分かり大慌て。「どうしよう。明日お母さんね、旗振りの日なの。その後大事な話し合いもあって、雨だと大変だから、てるてるぼうず作ろ~。」と息子を誘うと喜んで作ってくれました。「ボクが顔を描いたら、なんだか宇宙人みたいになってしまった~。」と二人で大笑い。いつもの時間、いつもの笑顔、この気持ちを胸に明日へ。

朝起きると、どんよりとした空で、それでもまだ降っていなかったことに安堵し、息子とお別れの場所まで歩きバイバイ。その後、校門前の信号で、旗振りのお仕事を開始すると、息子がひょこひょこやってきて小さく手を振り、私とハイタッチ。その光景を一緒に組んでいるお母さんが見て、微笑んでくれたのでなんだかほっこりしました。それからも、彼の友達みんながこちらに気づく度、にっこり手を振ってくれて、なんだか泣きそうに。校舎に入っていく先生達も、交通パトロールの方も助手席の窓を開けて会釈しながら挨拶をしてくれて、沢山の方達からエネルギーをもらっているのだと胸がいっぱいになりました。日常の光景から、非日常の場所へ。もう怖くない。
無事に旗振りを終え、次のお母さん宅へ届け、自宅に帰ってくると雨が降り出しました。てるてるぼうずの効果、すごいな。そんなことを思いながら、家事をこなし、深呼吸をひとつして家を出ました。すると、雨が降っているのに空が明るく感じられ、今日は何かがあるという嬉しい兆しが。その後、横浜駅で乗り換える途中、弁護士の先生と初めて会ったドトールが目に入りました。もうあれから一年か。この期間、沢山助けられてきたなと思うと色々な気持ちがこみ上げ、日本大通り駅へ到着。すると、天候不良で私の調子が悪いのではないかとこちらを気遣うメールが先生から入っていて、感激してしまいました。大丈夫であることの返信を送り、横浜スタジアムまで歩き、正面の噴水まで行って立ち止まりました。水の音、そして応援してくれる沢山の方達の気持ちが水の束になり、自分の中に溢れ出していく。一体どれだけの人達がエールを送ってくれただろう、それを思うとこの気持ちを持っていたら、どんなことでも頑張れるような気がしました。いざ、4回目の裁判所へ。

いつものように待合室で待っていると、なんだか少し調子の悪そうな先生が入ってきてくれました。ご自身が辛い時に、こちらを気遣ってくれた先生のメールを思い出し、ぐっときました。その後も、また似たような感じかなと暗雲が漂いそうになっていると、調停の中で風向きが変わったことを感じ、先生がすぐに反応。好機を逃すな。絶対的に信頼している彼女からのメッセージが届き、これまでとは違う流れの中で合意に至り、拍子抜けしてしまいました。決まる時ってこんなにあっさり決着が着くんだなと。その後、最後の意思確認が行われ、裁判官の方が調書を読み上げてくれた後、調停委員のお二人にお礼を伝え、裁判所を出ました。「先生、これまで本当にありがとうございました。」「ああ、まだまだ残務処理があるから。またメールしますね!お疲れさまでした~。」とえらいあっさり別れてくれるので、どこまでも彼女らしいなと笑えてきて。感慨にふけっている場合ではないですよ、別の道に進んだのだからあなたの道を歩かなきゃ。いい選択だと思います、だからもう立ち止まらなくていい。前に進め。そんな心の声が聞こえてきました。格好いい女性の象徴のような人、出会えてよかった。

腕時計を見るとまだ時間があったので、中華街を颯爽と歩き、両親にパンダの箸置きを買って、ベローチェに入りました。ショーケースに並んでいるケーキを見て「全部ください!」と言ってしまいたい衝動に駆られて。そんな時、なぜか子供の時に見ていた『クイズダービー』(TBS系)の「はらたいらさんに全部!」という名ゼリフを思い出し、自分に笑ってしまって。こんなおばかな話で笑ってくれるのは同世代の方だけだろうなと、本気でどうでもいいことを考えていたらふっと力が抜けてくれました。そこで食べたツナサンドと紅茶の味を忘れることはないと思います。離婚成立、横浜家庭裁判所に30kgの荷物でも置いてきたかのような軽やかさにほっとして。そして、ふと思いました。彼に出会えたこと、別れたこと、全てのことに大きな意味があるんだろうなと。後々振り返った時、そういうことだったのかとどこかでいろんなことが繋がっていて、大きな円を感じることがあって。今どうしてこんなに苦しいのだろう、なぜこのタイミングで誰かが助けてくれるのだろう、この一行がここまで自分を励ましてくれるなんて。そんなことの繰り返しで、プラスもマイナスも何もかもが自分の糧になっているような気がしています。ここに集まってくださる方は、私が日常の中で出会っている方達とどこかで似ているのではないか、人の引力ってそういうものではないかと思いました。だから、そんなみなさんに伝えたい。あなたの命、心、全て大切にしてください。自分のかけがえのない人生だから。悔しいこと悲しいことの方が多いかもしれない。それでも、真摯に生きていたらどこかで笑える時がくる、長く辛い時間かもしれないけどその光を一緒に探してくれる人が周りにきっといると思うから。ここにいてくれてありがとう。沢山助けられました。だから、私も光を届けられるように頑張ります。

ベローチェでほっと一息ついた後、中華街の駅から自宅へ帰ると、息子が若干ぐずってしまいました。「今日は天気も悪くて頭も痛かったよね。お留守番頑張ってくれてありがとう。」そう伝えてもまだぐずぐず。メンタルもきっと辛かったんだろうなと思い、何気なくエアコンのリモコンを見てみると付いていたのは『除湿』で理由が分かり、笑ってしまいました。「暖房ではなくて除湿のボタンを間違えて押してしまっていたから、部屋がカラカラになっていて余計に頭が痛かったんだよ~。すぐにお風呂に入ったら楽になるから。」そう言って促すと、随分落ち着いた半笑いの表情で出てきてくれました。「ボク、間違えてボタン押したから頭痛が酷かったんだね。」と反省会が始まったので、一緒に笑ってしまって。「大丈夫よ。失敗から学べばいい。また同じことをやったら、また笑おう。」そう言っていつものように優しい時間が流れ、安心して寝てくれました。一人になり、前日に掲示した図工の絵を見て、わっとこみ上げて。山が幾重にも連なった上にフラッグがあり、途中に『ツチノコ』が沢山ある自由過ぎる息子の絵には、雨が降っていました。でもそこには太陽も三日月も虹もあって、今日という日が息子の心とシンクロしてくれたようで、堪らない時間でした。一番上のフラッグ、手にできたよ。そこから見えた景色は明るい空が広がっていました。重たい雲から抜け出せない日もきっとあるだろう。でも、また突き抜けてみせる。新しい風が吹き始めた。今日は1月17日、阪神大震災から28年、祈りと共に新しい道を歩き出すことにする。