前へ進むための一歩

今日は久しぶりに旗振り当番へ行ってきました。気持ちよく晴れた雲一つない空を見上げながら、交差点まで息子と歩く道。一直線のこの道が未来を感じさせてくれているようで、彼の成長に時々胸が熱くなって。「ママ、今日もボク走ろうか?」「時間がまだあるからいいよ。」「え~、走りたかったのに。たまに走って学校に行く時もあるんだよ。」「鉛筆がボキボキに折れるからやめようよ~。」と一緒に笑った時間。交差点に着き、手を振ると相変わらず見えなくなるまで手を振ってくれるものだから、なんだか吹き出しそうになりました。この光景はいつまで続くのやら。ランドセルが斜めがけのバッグに変わった時なのかな。そんなことを思っていると、次から次へ子供達がやってきたので旗を持ちながらご挨拶。今年度の旗振りは一人体制となり、気楽さと寂しさが入り混じった朝の時間となりました。すると、近くの高校生君達が気持ちのいい挨拶をしてくれて感激。いつも颯爽と自転車に乗りながら挨拶をしてくださるお父さんも、今回は徒歩通勤でさりげなくおはようございますと言って頂き、変わらない日常に嬉しくなりました。左折の車を旗で停止してもらい、子供達を誘導、そして女性の運転手さんに会釈をすると、微笑みながら会釈を返してくれて。一瞬だよ、ほんの一瞬。そこに人とのあたたかい交流があるんだ。

その後も子供達に挨拶をしていると、野球チームで一緒のS君のお母さんの言葉が蘇ってきました。「うちの学校ね、コロナの影響で鬼ごっこも禁止なの。だから、本当につまらなさそうに帰ってくるよ。」と。児童数がかなり多い学校なので、止むを得ないのだろうと思ったものの、子供達にかかる負担は大人が思うよりもずっと大きいのだと痛感させられました。息子が学期の最後に持ち帰ったプリントの中にあった、一学期何を一番頑張りましたかという内容で、『おにごっこでさいごまでいきのこった』と書いてあり笑ってしまったのですが、彼はある意味大切なことを伝えてくれたのかもしれないなと。みんなとキャーキャー言いながら、鬼ごっこができる喜び。当たり前にできた事が、当たり前じゃなくなっていろんな制限がかかり、そんな中でいつも通りにできることが、子供達にとって大きなハッピーに繋がっているんだろうな。俯きながら、なんとなく気持ちが重そうな子達を交差点で何人も見ました。マスクを外し、またみんなで白い歯を思いっきり見せて笑い合える日が、一日でも早く来てくれますように。

そんな息子は、母に週末ヤクルト戦に誘われ、優勝争いの真っ只中、仲良く観戦へ。あまり気の乗らなかった孫の為に大好物のマグロ丼を買うからと、おばあちゃんにマグロでつられてしまった訳で。ヤクルトグッズをリュックに詰め、待ち合わせ場所に向かうと、とても明るい母がそこにはいました。姉との再会以来、色んな気持ちが錯綜してしまいもう少し自分の中で整理がついた後でと思っていたのですが、会ってみるともやもやしていたものが少し晴れていくようで。
祖父の葬儀の日、焼かれているまさにその時、母は私を呼び出し、罵声を浴びせました。冷静さのなくなった母の連絡に参っていた私は、思い切って返信の回数をぐっと減らしていたことを許せなかったよう。数日が経ち、勘のいい姉があの時何かお母さんに言われていなかったか、電話で聞いてきました。事情を知ると、電話の向こう側で凍り付いていて。「あり得ない・・・。おじいちゃんが焼かれている時に、罵声を浴びせる親がどこにいるの。人として許せない。Sはおじいちゃんと過ごした時間も長かったし、父親のような存在の所もあったと思うんだ。その時のSの気持ちを思うと、胸が痛いよ。」ありがとうね、お姉ちゃん。その会話から、長い時を経て、姉と再会。すると、その話を持ち出されて本気で驚きました。こっちは目まぐるしく色んなことがあり、すっかり忘れていたことだったから。「Sちんなら許してくれるって思われちゃってると思うんだよ。それが余計に許せない。」まだ怒ってくれていたの?と逆に笑ってしまいました。「そんなだからみんながSに甘えるんだよ。もう本当にいやだもん。」自分の怒りの感情を強引に閉じ込め、見えない所に封印。あまりにも奥に入れるものだから本人も忘れていたことを、姉は私の代わりにずっと怒ってくれていたことが分かりました。本当に沢山の痛みを感じてくれていたんだね。

姉の様々な感情を知った今、どうやってまた母と向き合おうかと考えていた時に誘われたヤクルト戦。とても楽しそうに帰ってきた二人を見て、私の中で一歩前に進んだのだと思いました。過去は過去。強がりも含めてようやくそこまで言えるようになったのかな。「ママ、始まりの時にちょっと雨が降っちゃったの。」「ヤクルトの傘ではだめだったの?」「ちっちゃいよ~。でね、前に座っていた女の人が、ビニールシートをくれて体に巻き付けていたから大丈夫だったの。」それは良かったね。同じヤクルトファンだ!もらった気持ち、どこかで返しなよ。その人には難しいけど、別の誰かに届けたら、きっとその人は別の誰かに返してくれる。「つば九郎とつばみだけじゃなくて、トルクーヤもいたんだよ!」とワイワイ。おばあちゃんとの思い出がまたこうして一つ増えていく。